後編


 授業が終わってその帰り道。聡美と別れた後もただひたすら念力を使ってもてる方法を考えていた。……なんか考えれば考えるほどすごくむなしくなってくる。


 大体なんだよ念力使ってもてる方法ってなんだよ中学生の男子でもあるまいし……でも私の長所ってマジで超能力ぐらいだしな。後、他に長所と言ったら何だろう……好き嫌いせずなんでも食べられるところとか風を全くひかないこととか……


「きゃっ!!」


 考えごとをしながら歩いていたせいで人のぶつかってしまった。


「いたたた……」


「だ、大丈夫ですか!!」


 そう言われて慌てて顔を上げると身長は恐らく180cm以上。体格も引き締まっている。そして何よりも顔。人の顔の好みは千差万別で本来個人の物差しで測る物ではないが……敢えて私の物差しで彼の顔を語るとすれば……そう、イケメンだ。


「あ、あの、すみません。もてるほうh……いや、人生について深く考えていたもので……」


「ははは、面白い方ですね……そのお詫びと言っては何ですが近くの喫茶店でお茶なんてどうです?」


「は、はい!!もちろんです」


 まるで昭和の恋愛漫画ぐらいのベタな展開。だがそのベタさ加減が私の心を躍らせる。これだ、これを私は求めていたのだ。もう超能力なんてどうでもいい。私は幸せものだ……



 しばらく歩いていると私は段々と人気の無い場所に向かっていることに気がついた。そして私は思い出す。最近少女の失踪事件が相次いでいることを……そのことに思い出したときにはもう遅い。背後からハンカチで薬品のような物を嗅がされ意識が途切れr……



 目が覚めるとそこは廃ビルの一室。手首や足はロープで縛られていて身動きがとれない。そして辺りを見渡すともう一人誰かが手足を縛られていることが分かった。近づくとその誰かは見覚えのある少女であることに気がつく。「佐藤ミリア」だ。


「ミ、ミリアちゃん?」


「ふ、ふあああ……あれ、ここはどこ?て、なんで縛られてるの私!!」


「なんか閉じ込められちゃったみたいだね私達……」


「閉じ込められたって……は、思い出した!!私が家に帰る途中、突然男が声かけてきて近くのカフェで何かおごるって言ってきたけど、あからさまに怪しいから逃げようとしたら後ろからハンカチで何か嗅がされて……」


 どうやら、ミリアちゃんも同じ経緯でここに閉じ込められてしまったようだ。


「ええと、あなたは……学校の先輩ですよねお名前は……」


「間宮さくら。それよりもミリアちゃん何かロープ切る物持ってない?」


「ええと確か筆箱の中にはさみが入ってたはずですけど……あっ、あれ?かばんがない!!」


 ミリアちゃんが言ったとおり私達のかばんはなくなっている。これではロープを切ることも助けを呼ぶために電話することも出来ない。


 そんなことを話していると突然扉が、ばん!!と音を立てながら開く。入ってきたのはさっきのイケメンを含めて男が三人……そのうち二人は明らかにかたぎじゃない背格好をしている。


「いやあ、まさか街で噂の美少女の佐藤ミリアを捕まえられるとはお手柄だよお前」


「多少強引では使いましたが幸い目撃者もいません。いやあ本当に我ながら良い仕事しましたよ」


「で、もう一人の女は………」


「ああ、この女はなんか突然ぶつかってきたんでついでに、まあミリアちゃんよりは見劣りするけど悪くはないでしょ」


「わ、悪くはない……って、い、いやいやいや」


 ミリアに劣ると言われたむかつきよりもイケメンに悪くはないと言われたうれしさが先行してしまった。そんな自分が情けない……


「あなた達、最近起きてる少女失踪事件の犯人ですよね……こんなことしてただで済むと思ってるか!!」


 ミリアちゃんはこの状況に恐れることなくそうさけぶ。勇敢な子だ……


「へえ、見かけによらず結構言うねますます気に入ったよ……」


 イケメンはあごをくいっと上げて顔を近づける。くそ、なんてうらやま……いや、何てくずな野郎だ!!


「おい、そのへんにしとけ!!こいつは大切な商品だ。傷物にすんじゃねえぞ……」


「はいはい分かりましたよ……ちぇっ、ちょっと顔近づけただけじゃんかよ……」


 イケメンを止めに入った大柄の男。雰囲気から察するにこいつがリーダーっぽいな……


「あっ、やべっ。タバコきらしてるの忘れてた……ちょっとそこらのコンビニで買ってくるからお前らちゃんと見張っとけよ」


「へーい」


 そう言うとリーダー格らしき男は外に出て行った。……これはチャンスだ!!


「……そういえばお前たばこ持ってたじゃんあれをボスに渡せばよかったんじゃないか?」


「でもボスはマイコンしか吸わねえから……」


「……なんか俺もタバコ吸いたくなってきたな……なあ一本寄こせよ」


「たく……しょうがねえな一本だけだぞ」


 イケメンがもう一人のにたばこを渡そうとした次の瞬間。たばこは渡されずに中へ浮かんだ。


「は、え、なにこれ?」


「たばこが……空を飛んだ!?」


 あまりに衝撃的な光景を目の当たりし視線は自然と宙に浮いたたばこに集まる。そしてそのすきに……


「くらいな!!」


 机の上にあった灰皿と分厚い本を念力を使って男達の後頭部に直撃させる。


「ぐあっ……」


 男二人はその場に倒れ込む。私は倒れた二人の様子を確認してみる。……ちゃんと気絶しているようだ。


「え、す、すごい……な、なにこれ?」


 ミリアちゃんもあまりの衝撃にあんぐりと口を開けてしまっている。


「説明は後!!とりあえずロープ切るから動かないで!!」


 私はイケメンが持っていたナイフを念力で私とミリアちゃんのロープを素早く切る。


「さあ、立って!!あいつが戻ってくる前に逃げるよ!!」


「は、はい!!」


 私達は部屋から出た。近くにある窓を見てここが4階であることに気がつく。急いで階段を探し出しそのまま階段を下る。三階、二階、一階……一階に到着し右を見てみるとそこに出口が……



「やった外に……外に出れる!!」



 私達がそう確信した……そのときだった。



「おいおい、どこに行くんだいお嬢ちゃん達……」


 リーダーっぽい男が私達を呼び止める。たばこを買いに行ったにしては戻ってくるのが早すぎないか!?

 

「いやあ、財布忘れてついてねえなって思ってたけど……どうやら違ったみてえだな……」


 男はゆっくりとこちらに近づいてくる……くそ!!何か使えそうな物は……そう思いながら辺りを見渡すとガラスの破片が一枚落ちているのを見つける。ガラスの破片は念力で宙に舞いすごい早さで男の方へ……だが彼にガラスの破片が当たることはなかった。ガラスの破片は祖浮かんだままその場所にとどまっている……


「こいつは驚いたな!!まさか俺以外にも超能力者がいるなんてな……あの二人から逃げ切れたのもその力のおかげってことか……」


 え、嘘、こいつも念力使い!?そんなの聞いてない……


「ほら……これでもくらいな!!」


 男は宙に浮いたガラスの破片を念力でこちらに向かって飛ばしてくる。こちらもなんとか念力で受け止めるが男の力はかなり強く抑えきれない……


「どうした?降参するなら今のうちだぞ!!」


 なんだよこれ、まるでバトル漫画じゃないか。こんな展開望んでないっての……だがこのままじゃまずい!!何か……何か策は……そう考えていたそのときだった。


「おりゃあああああ!!」


 ミリアは突然声を上げてどこに隠し持っていたのかさっきのイケメンが持っていたナイフを思いっきり投げつける。


「うお!!くそ、なんでこの女ナイフなんか……」


 男はなんとかナイフをよけるがそれと同時にガラスに込められた念力が解ける。その一瞬のすきにガラスの破片の主導権を取り返す。そして、そのままガラスの破片は男の方へ向かっていき……


「ぐ、ぐあああああ!!」


 男の肩に突き刺さる!!男はあまりの痛さにもだえている。


「これでとどめじゃ!!」


 今度は近くにあった。がれきを飛ばして男の顔面に食らわせる!!がれきはすごい早さで男に飛んでいき顔がゆがむぐらいの衝撃を食らわせた。がれきを食らった瞬間、男はその場に倒れ込んだ。


「え?まさか死んでないよね?」


 慌てて男に近づいて生死を確認してみる。脈は動いている。気絶しているだけだ。


「はあ……よかった……」


「せ、先輩!!」


 ミリアちゃんが私に思いっきり抱きついてきた。ミリアちゃんは涙ぐんでいる。さっきはああ言っていてが本当はかなりおびえていたのだろう。


「本当に本当にありがとうございます!!」


「いやあ、ははは良いって良いって……」


 その後、私達は近くのコンビニで店員に警察を呼んでもらい野郎三人は無事にお縄になる。彼らの自白によって取引相手も捕まり少女連続失踪事件は無事解決となった。そしてそれから数日後……





「桜先輩!!一緒にご飯食べに行きましょ!!」


「……え、うんまあ別に構わないけど……」


「ありがとうございます!!じゃあ私先に屋上言って場所とってきます!!」


 そう言うとミリアちゃんはそそくさと屋上の方へ向かっていった。


「あらあら、モテモテになってよかったじゃん……しかも学年で一番の美少女にもてちゃうなんて!!」


「…………」


 ……あの一件から私はミリアちゃんにめちゃくちゃなつかれてしまった。私のことをミリアちゃんは運命の人と呼び、毎日のようにべったりくっついてくる。更には、あの一件のことを皆に言いまわり、私のファンクラブ(女子だけ)まで作ってしまった。そのおかげで私は毎日モテモテな生活を送っている……女子に。


「ちがうっての!!私が求めていたモテモテはこういうのじゃない!!」


「でも、皆すごいうらやましがってるよ」


「男子がでしょ!!」


 最近ミリアチャンが私にべったりなせいで男子からの目が痛い。『てめえのせいでミリアチャンが変なのに目覚めちまった』とか訳わかんない因縁を毎日のようにつけられる。もう、高校在学中に男子からもてるのは絶望的だろう。


 ……神様。来世は1000年に一人の超能力者じゃなくて10年に一人の美少女にしてください……


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念力が使える程度の少女だけど何か質問ある? 三村 @akaaosiro3824

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