念力が使える程度の少女だけど何か質問ある?

三村

前編

 私は念力……かっこいい言い方をするとサイコキネシスを使えるごく一般的な女子高校生「間宮さくら」だ。


 半径100m以内のものだったら何でも浮かばせることが出来る……いやなんでもは言い過ぎだな。まあ、ゴリラが持ち上げられそうな重さぐらいであれば何でも浮かばせることが出来るだろう。


 更に手を扱うみたいに細かい動きをすることが可能で糸を浮かしながら固結びをすることぐらい造作でもない。


 一般的に見てこの能力はかなり便利だろう。実際私も便利だと感じることも多い。例えば外がすごい暑さで家に帰ってものすごく喉が渇いていたとしよう。だが、猛暑のせいで疲れ切っているためにリビングのソファーに寝転んだ状態から動きたくない。そんなことあるよね!!でもこの能力さえあればなんと寝転んだ状態のまま冷蔵庫から飲み物をとってこれるのだ。


 これが恐らくこの能力が一番役に立つときだろう……なんか地味だよね。この世界はバトル漫画の世界ではない。だから、超能力を使おうとなるとこういう地味な使い道しかない。こんな他にないぐらいの力を持っているのに一番の使い道がこれって言うのはなんかもったいない。


 これを使ってテレビに出て大儲けすれば良いと考える人もいるだろう。確かにそういうことも考えたことはあった。だが、超能力ブームのときにテレビに出ていた人たちがその後どうなったかを調べていると誰も彼もろくなことになっていないため超能力を使ったテレビ出演は諦めた。


 だが、それでも私はどうにかこの念力を生かす方法を四六時中考えている。どうにかこの能力を利用出来ない物だろうか。なんとか、なんとしてもこれを使ってを探さなくては……

 


「おい、間宮!!」


「は、はい!!何でしょうか!!」


「何でしょうかじゃないだろ!!ほら教科書の47ページの問2!!」


「え、ええとその……分かりません」


「分かりませんじゃないだろ!!全くいつもいつも人の話も聞かないでお前は……」


 まずいまた話が長引きそうだ。全く私は今それどころじゃないってのに……もし私の能力が念力じゃなくてテレパシーだったらこの事態も回避してたのに……


 キーンコーンカーンコーン


 先生が私を叱りだして数分後授業の終わりのチャイムがなった。私は先生の小言から解放され休み時間を迎えることになった。


「サークラ♪」


「……なによ聡美」


 彼女は田中聡美。私の友達だ。私が念力を使えることも知っている。


「ねえ、久々にあれ見せてよ」


「あれって?」


「超次元ペン回し」


「ええまたそれ……何回も見てるのによく飽きないよね」


「だって面白いんだもん。ねえ見せてよジュースおごるからさ!!」


「はいはい分かった分かった。……は!!」


 私がペンを片手に持ち念を込めるとそのペンはくるくると回り始める。その回り方は明らかに地球の重力を無視している。しかも回る速度は尋常じゃないぐらい速く夏には扇風機の代わりに使えそうだ。


「ふええ……やっぱ何度見てもすごいよねサイコキネシスって……」


「別にこんなの私生活がちょっと便利になるだけだって……そんなことよりもさ聡美も考えてよ、念力使ってもてる方法」


「またその話……」


「だって、もてたいっていう欲求は全人類が持ってる物でしょ!!聡美だってもてたいでしょ」


「いや、私は別にそこまで……」


「はああ、まあそうだよね……聡美彼氏いるもんね!!リア充だもんね!!もててるもんね!!はああ幸せそうでうらやましい、うらやましい」


「いやあ、それほどでも……あるかな」


 聡美が謙遜することなくそう言った瞬間私は人間として聡美に完全に負けていることを実感した。


「もう超能力でもてようとするの諦めたら?」


「ええ……でも超能力が私の唯一無二で一番のアイデンティティーなんだよ。それを使わない手はないでしょ」


「でも使えるのって念力だけじゃん。それでどうやってもてもてになるのよ……テレパシー使えたら話変わったと思うけど」


「はー、やっぱテレパシーだよね……なんかの拍子で使えるようになんないかな」


「でも、テレパシーなんて使えるようになったら生活にかなり支障を来すような気がするけど」


 確かに……人の心なんて読めたら人間不信になって恋愛どころではなくなってしまうだろう。


「まあ、そんなことより近くのコンビニで何かご飯でも買いに行こうよ」


「はあ、まあ私もおなかも減ってきたしねヨーソンでいいよね」


「うん」


 私達がコンビニに向かおうとする途中廊下で二人の男女を見かけた。一人は普通の男子だがもう一人は……


「あ、ミリアちゃんじゃん。また男子から告白されてる」


 『佐藤ミリア』学校内で十年に一人の美少女と呼ばれている一年下の女の子だ。


「ごめんなさい……気持ちはうれしいんだけど……」


 どうやら、男子の告白を断っているようだ……


「さくら、何ミリアちゃんの方じろじろ見てるのよ」


「え、いや違うから!!別にうらやましいとか思ってないから!!」


「ふうん……でもやっぱりミリアちゃんかわいいよね十年に一人の美少女ってのも全然大げさじゃないぐらい……」


「十年に一人がなんだってのよ!!こっちは百年……いや千年に一人いるか分からないぐらいの逸材だってのに……」


「でも、もてないんでしょ」


「うっ!!うぐぐぐぐぐ…………」


「まあ、どう超能力を駆使しても十年に一人の美少女には勝てないよ。ペン回し対決じゃないかぎり……」


「聡美、ペン回しのことやたらおしてくるよね……」


「だって好きだもん!!聡美のペン回し!!」


「そんな強調して言うことじゃないでしょうが……」


 だが、確かに彼女はすごい……顔立ちはもちろんのこと噂によると成績はいつも学年topで運動神経も抜群しかも人当たりが良いから男子だけではなく女子にも人気らしい。マジでペン回しぐらいしか勝てる要素がない……









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