第36話

 目が覚めると、ベッドの上だった。少し頭が痛い。体を起こし部屋の中を見回すが、誰もいない。

 テーブルの上には、水の入ったコップと、サンドウィッチがあった。手にとって見てみる。近くのコンビニで売っているものだ。

 将棋盤には、見覚えのある局面が。夏川との将棋の、投了したところだった。その横には、広告の裏に書かれた棋譜が。中盤以降、一手一手に検討の結果が書き込まれていた。

 トイレにも風呂にも、川崎はいなかった。靴もない。

 部屋に一人きり。こんなにも独りを実感したのは、初めてだった。

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