展望
展望 -断崖
私は、ここに至るまで、2013年に決定付けられた失敗と、2020年、今まさに体験しつつある失敗について、そこそこ長々と書き連ねてきた。然し、少なくとも、2013年の暮れから2019年の3月末まで、私は、相応の成功を収めてきたと思う。思っている。私にとっては、あれだけ破滅した自分自身がよくもまあここまで持ち直して、また同じような失敗を繰り返しながらも、いつか見た傷だな、なんて呑気に構えて対処法の構造を稚拙な方法で分析して実践してやろう、と思えるくらいに生きていることを、個人レベルでの成功、どん底からまあまあ普通といえなくもないレベルにまで這い上がることができた事実は単純なよろこびとして、考えているから。
墜落し、転落した、断崖絶壁の下から、どうにかして。
ここから先が、本当に、事実の羅列にしかならない。恣意的に隠すことはあれど、それはこの主題に関係がないからであって、これから書くことは、これまでのように道草を食っている余裕のない行為であるから。
2013年秋。とある日帰りの後か前か、私はとりあえず、次の目標を定めた。高校卒業が為せなかった私が、それと同じくらいに持ち直すには何が必要であるのか。
大学卒業の称号だ。
大学を卒業する為には、大学に入学しなければならない。改めて書くと莫迦みたいなくらい、当然の事実だ。眠りから覚める為には、眠らなければならない、と云うくらい、単純な事実だ。
そして、重要なことに、大学に入学する為には、高校を卒業したという資格が必要になる。
資格、といったのは、何も「高校を卒業した事実」でなくとも良い、という抜け道があるからだ。ただし、多くの抜け道がそうであるように、この抜け道もまた、大通りのような整備され先達が豊富で行き交うひとも大勢おり迷う心配のない真っ直ぐな道から外れた、山あり谷ありサバイバルの、とてもではないけれど素人にはお勧めできない代物だ。
その抜け道の名前は、高等学校卒業程度認定資格試験の合格及び大学入学試験の合格。
適当に高校を卒業して大学入試を受ければどうにかなるこいつらを、自分の力だけでどうにかしなくてはならない。
高等学校卒業程度認定資格試験、通称・高認では、幸いにも、当時の私にとって最大の脅威であった「数学」と「科学」は、どうしてか、某自称進学校で単位を頂いていたことが功を奏し、別に不安も何もなかった「国語」「英語」も、同様に無視できた。残る「地歴」は、残念なことに得意分野だったから、恐れることなど何もない。2013年休学当時の偏差値は、ゆうに40を割っているレベルだったのだが、一から地理と世界史と日本史をたたき込むことは、そう難しくはなかった。かつての、何不自由ない学力が、予備知識として残っていたし、塾や学習環境、家庭環境も整っていたから、むしろ学校に行かない方が勉強の面では捗ったとすら云える。
当然、5教科総てを高認のレベルで、しかも自力で修得しよう、なんてするのは、それなりに困難であろうことが予想されるから、(これを読んでくださっている方々にとって有用な知識となるかどうかはわからないが、)あまりお勧めはしない。しかも、この高認の落とし穴は、「高校を卒業したのと同じくらいの学力がありますよ」という証明の為の資格でしかないところで、「高校を卒業しましたよ」という、一般的な「高卒」の資格と同じではない、と云うところだ。つまり、最終学歴は、中卒のままになる。
……よって、私は、2015年4月から2019年3月某日まで、最終学歴・中卒のまま、大学に在籍していたことになる。ううっ、改めて思い直すと恐ろしい橋を渡ったな。
別に、中卒の困難を、私は知らない。だって今、私、実質無職だし。うわあ、なんて酷い話なんだ。
閑話休題。
つまり、これらの事実は、高認そのものだけでは有意ではない、と云う現実を示すことになる。従って大学に入学して、卒業するまで、私は全く気を抜くことが出来なかった。この抜け道の過酷さその2。抜け道の脇は断崖絶壁であること。命綱があるかどうかは、自分次第だ。
ちなみに、私の場合は、その命綱を利用して、そろそろぶち切れそうな状態にある。
当然のことながら、大学入学直後の話題「出身校は?」にも参加できない。たぶん。常識から外れてしまっているから、常識の中で進学してきたような学生の多い大学に入ってしまうと、これはなかなか、人間関係に響くということを、ここで明らかにしておくべきだろう。
高校卒業程度認定資格試験を2014年夏に受け、夏の終わりに合格を証明された時には、それでもほっと一息つけた。それまで自室に飾ってあった県の将棋大会四位だったか三位だったかの賞状を入れた額の中身が、合格証書に入れ替わるくらいには、嬉しかったらしい。ただの自慢である。
然し、本当に困難なのは、大学入学試験そのものだ。どこの大学のレベルなら狙えるか、という水準の吟味から始まって、試験時に予想される費用から入学から卒業までに必要となる学費を考えることになり、これが総て自分の裁量になってしまう。母の協力があってこそ実現したが、こんなもの、高校を中退した私みたいなやつにとっては手に余る難題だろう。もちろん、手続きも自力で。間違えることは許されない。
受験勉強が始まった。
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