第82話 黒龍

 雲に覆われ、闇に包まれたような空。

 枯れ果てた大地。

 そして黒く禍々しいドラゴンの姿。


 周囲にモンスターはいないし、パターン的に言えばこいつは三獣神だと思うのだが……

 間違いないとは思う。

 圧倒的な威圧感に見ているだけで怖気が走る。

 

 俺はその巨大なドラゴンを、相手に認識されない程度の距離からひっそりと見据えていた。


 硬そうな鱗に覆われた身体。

 悪魔のような翼。

 そして目が合うだけで死の恐怖さえも感じさせる赤い瞳。


 俺は固唾を飲み込み、そしてゆっくりと相手に近づいていく。

 死ぬかも知れないのに。

 だけど俺なら大丈夫。

 そんな葛藤を抱きながら歩く足を加速させ行く。

 

 黒いドラゴンには当たり前のように認識される。


 こちらに気づいたドラゴンは、ズシンズシンと一歩ずつ大きな足で近づいて来る。

 俺は心臓の高鳴りと共にさらに加速し、距離を縮めて行く。


「…………」


 お互いの視線をぶつかり合い――ドラゴンは翼を広げ宙を舞った。

 俺も大地を蹴り、空へと駆けあがる。


 互いに旋回しながら、少しずつ距離を詰めて行く。

 ゆっくりゆっくり近づいていき、ドラゴンの攻撃範囲に入ったのだろうか、相手は大地をも砕くような咆哮を放つ。

 ビリビリと全身にしびれのようなものが走る。

 その音量に鼓膜が破れそうになり、恐怖が加速していく。


 ドラゴンは咆哮を止めると、一直線にこちらへと飛翔して来た。

 俺は防御の構えを取り、相手を迎え撃つ。


 凄まじい突進。

 まるで隕石の如く勢いで大地に突き刺さる俺の体。

 その激しい衝撃で、地面に大きなクレーターが生じる。

 ドラゴンは全体重で俺にのしかかり、鋭い爪を喰い込ませようとしていた。

 

 だが。


「グオワアアアアアア!!」


 痛みに悲鳴を上げたのはドラゴンの方であった。

 俺が奴の爪ごと肉を握りつぶしたからだ。

 痛みに退くドラゴン。

 俺は相手の後側へと【閃光】で移動し、後ろ足へ蹴りを放つ。

 バキッと大きな音を立てて折れる足。

 ドラゴンは自分の体重を支えきれなくなり、その場に倒れ込んだ。

 ジタバタともがいているが、起き上がることができない。


 俺は勝利の確信と安堵を感じつつ、相手に止めを刺すために魔術を発動させる。



「【メイルシュトローム】!」


 【水術】の禁呪、【メイルシュトローム】。

 眼前に巻き起こる巨大な渦潮。

 ドラゴンを飲み込み、その威力に奴の肉体は引きちぎられていく。

 渦潮は天にまで昇る勢いで巻き起こり、とうとうドラゴンの体をこま切れにしてしまった。

 まるで大きなミキサーみたいだな。


 渦潮が収まり、周囲に水と血を雨のように降らす。

 俺はそれを全身に浴びながらため息をついた。


 今回も楽に勝てたな。

 これで俺はまた強くなったはずだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 その後もモンスターを散々倒しテントまで戻った俺は、《ホルダー》を開く。


 新たに入手していたカードは――


 ブラックベアーカード:レア度N

 攻撃力が1%上昇する


 デビルスネークカード:レア度N

 魔力が1%上昇する


 黒騎士:☆☆☆


 二枚のモンスターカードと【黒騎士】というジョブカード。

 俺はこのジョブカードを【合成】し、新しくスキルを手にいれた。


 新しいジョブスキルは――


 黒天:HPを半分消費し攻撃力に転換する


「…………」


 今まで以上の威力の攻撃が可能になるというわけか。

 これはもしかしたら切り札になるかも知れないな。

 

 そして先ほどのドラゴンはやはり三獣神だったようで、称号も入手していた。


 黒龍を討伐せし者:黒龍を討伐した者に送る称号

 効果・基礎防御力が二倍になる


 これもありがたい。

 また能力が上がったことに、俺はガッツポーズを取る。


 そして現在の能力はと言うと――


 島田 司

 LV99

 ジョブ  合成師+++

 HP  33000(+132000)

 MP  16500(+82500)

 攻撃力 33000(+165000)

 防御力 22000(+110000)

 敏捷  11000(+55000)

 魔力  33000(+165000)

 運   13750(+55000)


 ジョブスキル

 合成Ⅳ 召喚 閃光 魔剣 爆炎 水幻 黒天

 武器スキル

 体術 99 剣 99 弩 99

 アクティブスキル

 火術Ⅴ 99 水術Ⅴ 99 風術Ⅴ99 

 土術Ⅴ 99 回復術Ⅴ 22 心術Ⅴ 99 

 飛翔Ⅴ 47 弱化Ⅴ 33 手加減Ⅴ 99 

 潜伏Ⅴ 99 察知Ⅴ 99 鷹の目Ⅴ99 

 障壁Ⅴ 71 帰還Ⅴ 99

 パッシブスキル

 HP増加(特大) MP増加(特大) 怪力 

 鉄壁 俊足 超魔力 

 強運 神の加護 毒無効

 麻痺無効 石化無効 混乱無効

 誘惑無効 病気無効 魔力消費0

 術発動時間0 高速成長


「…………」


 ステータスが爆速で上昇していたことに、俺は口をあんぐりと開け呆然としていた。

 いや、強くなるのは嬉しいんだけど……ちょっと強くなりすぎじゃない?

 いきなり強くなったな。

 

 俺はその能力値に呆れつつも高揚し、その画面を横になりながら見つめ続けていた。

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