第81話 属性付与

 空が黒く、時計が無ければ朝か夜かも分からない中、湧き出る敵を倒しながら突き進んで行く俺たち。

 しかし道中、体力の限界が来たので【結界】のカードを使用して休息を取り、死ぬように眠る勇太たちであった。


 俺は疲れなど一切感じておらず、仮眠を取ってすぐに起きる。

 人数分のテントを張って眠っており、俺は青いテントの天井を見上げて自身の戦力のことを考えていた。

 どれだけ力があっても足りないような気がする。

 俺が慎重派だからなのか?

 いや、違うと思う。


 こちらの能力を好き勝手できるような相手だ。

 どれだけ力を手に入れたとしても敵わないと心が悟っているのだろう。

 だけど、そんな簡単に諦めるつもりはない。

 出来る限りのことはやっておこう。

 もし……もしそんな相手の戦力を超えることができたのなら。

 その可能性にかけるしかない。


 俺は【結界】の外まで移動し、新たな【合成】の能力を発動させる。

 それは【召喚】したモンスターと四属性のスキルを合成できるというものだ。

 簡単に言えば、モンスターに属性を付与できるということらしい。


 まず目の前にモンスターを召喚する。

 そして【合成】を発動。


 「【合成】」


 目の前にいたゴブリンの体が炎に包み込まれる。

 全身から燃え盛る炎を放出しながら周囲にいる敵モンスターを睨む付けているゴブリン。


「行け」


 【結界】を囲むようにモンスターが数えきれないほどおり、炎を纏ったゴブリンはその集団に突撃する。

 燃え盛る棍棒でレッドスケルトンを殴りつけると、相手は炎の力に消し炭にされていた。


 戦闘力がずいぶん上昇しているみたいだ。

 これなら経験値をガンガン稼いでくれそうだな。


 俺はさらに召喚したモンスターに属性を付与していく。


 冷気を放つオーク。

 風を纏うウルフ。

 体が岩のように固くなっているスライム。


 他のモンスター全てに属性を与え、俺はそれらを野に放つ。

 怒涛の勢いで敵モンスターを排除していく俺の召喚モンスター。


 こんな状況だしそんな気分じゃないはずなのに、また強くなる自分を想像しブルッと体を震わせる。


 【結界】の護衛兼経験値稼ぎを召喚モンスターたちに任せるとして、俺は別のモンスターを探すことにしよう。


 【鷹の目】でくまなく周りを目視する。

 するとここから東の方角に二体、別のモンスターの姿を発見した。


 俺は【閃光】でそのモンスターたちの場所まで移動する。

 接近したところで【潜伏】を発動し、クロスボウで相手の頭部を狙う。


 俺が狙うのは黒い毛並みの熊のようなモンスターで、とても大きな体をしている。

 およそ3メートルと言ったところだろうか。

 見た目だけではなく、強さに満ち溢れた気配を発している。

 だが俺の勝てない相手じゃないはずだ。

 これまでだってそうだったんだ。

 こんな道端に設定されているようなモンスターは俺の敵じゃない。

 そうあって欲しいという願望半分で、俺はクロスボウのトリガーを引く。


 ヒュンと飛翔して行く矢は熊型モンスターの頭部に突き刺さり、その肉体は爆散する。

 ホッとため息をつきつつ、俺の力を持ってすればやはり楽に倒せるということを確信していた。


 さらに近くにいる別のモンスターに視線を向ける。


 それは大きな蛇型モンスターで、チロチロと舌を出しながら獲物でも探すかのように辺りを徘徊していた。


 そのモンスターの姿を見るなり、ブワッと鳥肌が立つ。

 あんまり蛇って得意じゃないんだよな。


 その蛇型モンスターも周囲に沢山おり、俺はこいつらをさっさと一層することを決意する。


 熊型モンスターも蛇型モンスターも、まとめて一瞬で倒してやろう。


「【エクスプロージョンノヴァ】」


 ゴウッと景色が炎に包み込まれる。

 凄まじい衝撃と炎が俺を中心にして世界に広がり、視界が戻った頃には周囲一帯のあらゆるモンスターの姿は消え去っていた。


 うん。この調子でモンスターを蹴散らしていくぞ。

 もっと効率よく、もっと着実に強くなるんだ。


 そこから魔術を駆使してモンスターを倒して行く俺。

 一気にモンスターを倒すなら、魔術が一番効率いいな。

 そんな風に考えながら敵と戦っている時だった。


 【鷹の目】でさらに東の方を視認すると、ひときわ異彩を放つモンスターの姿が見える。


 あれは……いわゆるドラゴンという奴ではないだろうか?

 黒い肉体のドラゴン。

 体の大きさも半端じゃない。

 遠くから見ているはずなのに、その圧倒的な存在感に身震いする。


 あれを倒したら俺はまた……

 ひょっとすると勝てない可能性もあるかも知れない。

 そんな風に考える一方で、強さへの好奇心がそれに勝り、俺はそのドラゴンの方向に体を向ける。

 そして地面を蹴り、接近していく。


 なんでこんなに強くなるのが楽しいのだろう。

 由乃と会えなくなて寂しくて悲しいはずなのに……

 強くなることの喜びを禁じえない。


 俺はさらに走る足を加速させ、ワクワクする気持ちを爆発させていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る