第80話 ダ・ルーズエリア
ダ・ルーズエリア――
黒い空から雷が落ち、大地は枯れ果て、そこにいるだけで息が詰まる。
後ろを振り向けば水に溢れたソルワースの土地があるというのに……
なんて差だ。
天国から地獄、なんて言葉が脳裏をかすめる。
勇太たちは少し雰囲気に飲まれているのか、ゴクリと固唾を飲み込んでいた。
「ここからダ・ルーズか……モンスターの強さも分からないし、気をつけて行こうぜ」
「うん」
「おう! 俺が先頭を歩くから、皆ついて来い!」
磯さんは皆を守るように先頭を歩いて行く。
彼に続いて勇太と円が並んで歩き、その後ろを由乃が進む。
俺はしんがりを務めているわけではないが、一番後ろを歩き、皆のサポートに徹することに。
【鷹の目】を発動し、敵の姿を確認する。
すると左手、遠くの方に骸骨姿のモンスターが見えた。
人間の骸骨のようだが、その骨は全て血のように赤い。
二本の剣を持っており、怪しいオーラを発している。
一気にモンスターのレベルが上がったような気がするな。
俺はクロスボウを構え、その骸骨めがけて矢を放つ。
ビュンと飛んで行く矢はその骸骨の頭部を捕え、骨が爆発四散する。
よし。ここでも俺の攻撃は十分通用するな。
そこから数メートル横に同じ骸骨のモンスターがいるので、それも撃ち倒しておく。
早速入手したであろうカードを確認する。
レッドスケルトンカード:レア度N
MPが1%上昇する
あのモンスターの名前はレッドスケルトンというのか。
そのまま俺は、目に映る範囲のレッドスケルトンをクロスボウで狙い撃っていく。
勇太たちもそうだが、俺も出来る限り強くなっておかないと。
これからやって来る管理者が、また俺より弱いなんて保障はどこにもない。
もっとだ。
もっと強くならないと。
全部守れるように。
管理者を蹴散らして向こうの世界も守れるぐらい強くなりたい。
皆に気づかれないようにモンスターを倒していると、とうとう勇太たちがレッドスケルトンとの戦闘に突入しようとしていた。
勇太たちがどれほどここのモンスターに通用するのか見ておきたい。
それに全てのモンスターを倒してしまったら、皆はおかしく感じてしまうであろう。
こんなあからさまに危ない雰囲気の場所でモンスターが出現しないなんて、異常としか考えられない。
そう考えた俺は勇太たちが歩く先にいるレッドスケルトンを残しておいた。
レッドスケルトンと衝突する磯さん。
奴の二本の剣を盾で受け止めるも、その威力に後ずさりする。
「おう! こいつは中々強いぞ! 気をつけろ!」
「気はいつでもつけてる」
円が風のような動きでレッドスケルトンの背後から斬りかかる。
二刀流による多段攻撃で、相手の左腕を斬り落とした。
しかし円から見れば想像以上に浅かったらしく、一瞬目を丸くする。
円を狙おうと振り返るレッドスケルトン。
だが磯さんが盾で殴りつけ、自分に攻撃を向けさせる。
「おう! 狙うならこっちを狙え! 仲間はやらせねえぞ!」
「おうおう! 俺だって磯さんをやらせねえぜ!」
飛び上がり勇太はレッドスケルトンの体を真っ二つに切り裂く。
手に持っているのはSRの武器である【フレイムブランド】。
赤い肉体を赤い炎が易々と切り倒したのだ。
「勇太くんの攻撃力が随分上がってますね。皆で勇太くんをフォローするので、勇太くんが止めを刺して下さい!」
「任せろ! 俺がモンスターを倒して倒して倒しまくってやるぜ!」
ゾロゾロとこちらに向かってくるレッドスケルトンの群れ。
俺は【手加減】を発動して数匹のレッドスケルトンを狙う。
全部倒してもいいんだが、それでは皆のためにもならない。
ここのレベルの戦闘にも慣れてもらわないと。
他にモンスターがいないかを探りながらレッドスケルトンを相手にしていると、次に見えてきたのは、以前戦ったことがある、オークのようなモンスターだった。
豚の頭部で二足歩行するモンスター。
だが、オークとは違い、その肉体はただれて、腐っているようだった。
そのオーク型のモンスターが三匹並んでいるのを視認し、俺は矢を連射する。
ボンボンッと弾ける肉体。
俺はあっさりと倒せたことに高揚し、皆に見えないところで拳を握り締める。
あれも簡単に倒せるぞ。
遠くに見えるオーク型のモンスターもドンドン倒していき、瞬く間にその体は四散していく。
だがここでは敵の湧きが尋常ではなく、倒せば倒すだけモンスターが現れるようだった。
皆をサポートしながらモンスターを倒す。
強くなれるという意味では嬉しいのだが……これは中々大変だな。
右手で勇太たちの戦うレッドスケルトンを狙い撃ちながら左手で《ホルダー》を開く。
オークゾンビカード:レア度N
防御が1%上昇する
あれはオークゾンビと言うのか。
俺は《ホルダー》を閉じ、密かに【火術】と【弩】を合成し、オークゾンビ目掛けて矢を放つ。
遠くで矢が炎を起こし、何匹ものオークゾンビを巻き込んでいく。
やり過ぎたか?
と思ったが皆は戦いに集中しており、その炎には気づいていないようだった。
俺はホッとため息をつき、戦いの手を再開させるのであった。
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