第66話 ルージュ・ブルとの戦い②
「何かするつもりかい、お兄ちゃん。だけど何をやっても無駄だよ」
【集中】を発動させた俺を見て、腹を抱えて笑うブル。
あいつの体は攻撃をしても水になる。
憶測ではあるが、本体は別のところにあり、水で作った分身体だけをこちらから見える場所に設置しているのではないだろうか。
別次元に本体があるというならあいつを倒すことはできないかも知れないが……もしあちらから俺を観測できる範囲にいるとするなら――
その本体ごと蹴散らせば倒せるはずだ。
俺の胸の辺りに、朱い魔力が集ってくる。
大気は震え、急激に周囲の気温が上昇していく。
「……お、お兄ちゃん、何をするつもりなんだ」
「何かする前に爆ぜさせる!」
眼前まで迫るルージュ。
ブルは突然起こった変化に、少しばかり怯えているようだった。
そして俺は朱き魔力を解き放つ。
ルージュを、ブルの本体を、全てを焼き尽くす。
【エクスプロージョンノヴァ】――
【火術】の禁呪、LRクラスの魔術。
カッと景色が輝き、次の瞬間、世界が炎に飲み込まれる。
ブルの水の棺は一瞬で蒸発し、俺を中心に炎の莫大なエネルギーが外へ外へと放出されていく。
その力はいつまでもとどまる気配を見せず、どこまでも広がっていくような感覚があった。
長時間、炎が世界を燃やし続け……とうとう朱いエネルギーは収まっていき、景色が俺の前に訪れる。
「…………」
周囲一帯の何もかもが消え去っていた。
湖は完全に蒸発してしまい、草木一本も残っていない焼け野原状態。
地面に足を付けると、ジューっと靴のゴムが焼ける嫌な臭いがした。
温度はまだ上がったままのようで、真夏でも体験できないほどの暑さ。
じわっと汗をかきつつ俺は周囲を見渡した。
ブルの姿が見当たらない。
そして水で作った分身も見当たらなかった。
ルージュは……
「な、何をしやがったんだ……てめえ」
爆炎を纏っていたルージュ。
それは俺の炎から身を守り、何とか生き延びたようだ。
だが痛々しい火傷を全身に負っており、顔は右半分ただれている状態である。
ルージュはフラフラと立ち上がり、ハッとして周りをくまなく見渡しはじめた。
「ブル……おいブル! 返事しろ!」
だが彼に返るはずの言葉はない。
プスプスと周囲から何かが焼ける音だけが聞こえるだけ。
「てめえ……ブルをやったのか」
「どうやらそうみたいだな。思った通りにことが運んでくれたようだ」
「クソが!」
ルージュは殺気を含んだ目で俺を睨むと、爆炎を起こしながら特攻を仕掛けてきた。
【エクスプロージョンノヴァ】を使用して分かったこと。
こいつの爆炎は敵の攻撃を消し去る能力があるようだが、それには限界があるということ。
【エクスプロージョンノヴァ】の破壊力には耐え切れず、奴は全身に傷を負った。
ということは、あれを突破するだけの火力を持ってすれば、ルージュを倒すのは容易いと言うことだ。
俺は再び【集中】を発動し、ルージュを待ち構える。
「死ねえええええ!」
「【合成】」
【合成】――【火術】と【魔剣】を合わせ両手を上段に構える。
燃える紅蓮のエネルギーと闇が交わり合い、徐々に力が膨張していく。
紅蓮の赤が闇に飲み込まれ、黒き炎と化す。
俺の手の中から凄まじい勢いでその黒炎が吹き出し、大剣の形となった。
3メートルはあろうかという黒炎の刀身。
「【
「なっ――」
ルージュの動きに合わせて炎の魔剣を振り下ろす。
エクスプロージョンノヴァを凝縮させたような威力を誇る魔剣は、ルージュの爆炎を抵抗なく軽々と切り裂く。
激しい衝撃にルージュの体は消し飛び、炎が大地を抉り取る。
炎はどこまでも上へ上へと伸びていき、その勢いは天まで届きそうなほどだ。
俺の手から黒炎が消えると、地面に何メートルもの亀裂が入り、槌は黒焦げとなっていた。
ルージュは完全に消滅したようで、奴の肉片すらも見当たらない。
俺は大きくため息をつき、完勝に拳を力強く握る。
仮面をいったん外し、《ホルダー》を開く。
二人を倒したことにより、二枚の【ジョブカード】を入手していた。
爆炎師:――
水幻師:――
俺はさっとこれを合成し、現在のステータスを確認することにした。
島田 司
LV99
ジョブ 合成師+++
HP 12000(+48000)
MP 6000(+24000)
攻撃力 12000(+48000)
防御力 4000(+16000)
敏捷 4000(+20000)
魔力 12000(+48000)
運 5000(+20000)
ジョブスキル
合成Ⅳ 召喚 閃光 魔剣 爆炎 水幻
武器スキル
体術 99 剣 99 弩 99
アクティブスキル
火術Ⅴ 99 水術Ⅴ 99 風術Ⅴ99
土術Ⅴ 99 回復術Ⅴ 10 心術Ⅴ 99
飛翔Ⅴ 47 弱化Ⅴ 33 手加減Ⅴ 99
潜伏Ⅴ 99 察知Ⅴ 99 鷹の目Ⅴ99
障壁Ⅴ 19 帰還Ⅴ 99
パッシブスキル
HP増加(特大) MP増加(特大) 怪力
鉄壁 俊足 超魔力
強運 神の加護 毒無効
麻痺無効 石化無効 混乱無効
誘惑無効 病気無効 魔力消費0
術発動時間0 高速成長
ステータスがまた上昇し、ジョブスキルに【爆炎】と【水幻】が追加された。
さらに【合成Ⅲ】が【合成Ⅳ】に変化しており、どうやら新たに合成の術が増えたようだ。
俺はまた成長した自身のステータスに高揚し、全身が喜びに包まれていく。
しかしだ。
喜びに浸っている場合じゃない。
まだバロウたちの件は終わっていない。
さっさと帰らなければ。
強敵に勝ったのにゆっくりできないのは少々辛いものがあるが、これも力を持った者の宿命なのかも知れないな。
俺は仮面をかぶり直し、【帰還】を発動させアルベンの町へと戻るのであった。
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