第63話 ルージュ・ブルとの戦い①
「爆ぜろ!」
ルージュは周囲の空気を爆発させながら突き進む。
彼の通る道全て爆炎に包まれ、凄まじい熱気と衝撃がこちらに襲い掛かる。
こいつの攻撃は喰らったらまずそうだな……
俺は相手の突進を迎え撃つことなく、上空に飛翔しやり過ごす。
「何だよ!
「!!」
ルージュは直線的な動きで俺に向かって来ていたが、突如空中を駆け出す。
俺が宙を蹴り移動すると、ルージュは爆発を起こしながら追尾して来る。
こいつも空中を移動できるのか。
「【ウンディーネスプラッシュ】!」
俺の手から生まれ出る激しい水圧。
レーザーめいたそれは、ルージュを今にも飲み込もうとしていた。
しかし――
「甘いんだよ!」
奴の体が爆炎に包まれ、それに触れたこちらの【水術】が蒸発していく。
「攻防一体の技というわけか」
「ああ! 当たれば熱いじゃ済まねえぜ!」
俺は【閃光】を発動し、直前まで迫ったルージュの攻撃の手から逃れる。
少し離れ、奴らから距離を取り動きを窺う。
【潜伏】は通用しないと見ておいて間違いない。
ブランにきかなったのだから、こいつらにもきかないと考える方が妥当だろう。
ルージュは目の前から消えた俺を一瞬で探し当てる。
ブルも同時にこちらに振り向き、ニコリと笑顔を浮かべた。
バレているな……なんでだ?
理由は動きながら考えろ。
止まっていたらあの攻撃が来るぞ。
「お兄ちゃん、僕もいることを忘れないでね」
「忘れるわけがないだろ。お前のことも警戒しているさ」
「そう?」
「!?」
突如、俺の体の周りに水が発生し、こちらの動きを止められる。
水の棺とでも言うのだろうか。
俺を取り囲む長方形に形作られた水が、俺を束縛している。
息ができない。体が動かない。力が入らない。
ジタバタもがいても、水はビクともしない。
「つまんねえけど、ブルのそれに取り囲まれたらもう終わりだ」
「そういうこと。あっさりとゲームオーバーだったね」
爆発を起こしながら飛翔するルージュ。
あれがどれほどの威力を有しているのかは分からないが、直感でマズいってのだけは分かっている。
攻撃を避けなければいけないし、これを脱出しなければならない。
どちらにしても、この水の棺をどうにかするのが先決だ。
動けないというのなら、魔術で破るしかない。
俺は瞬時に【火術】を発動し、周囲の水もろともルージュらをも巻き込もうとした。
「【イフリートブレイズ】!」
ゴウッ! と俺を中心に火柱が立ち昇り、景色が燃え上がる。
水の棺は蒸発し、ルージュもろとも巻き添えにした。
「効かねえよ!」
炎の中を飛ぶルージュ。
俺はルージュの突撃をギリギリで避けるも、尾を引く爆炎に腕が触れてしまう。
引火した腕は爆発し、皮膚と肉が焼ける匂いが鼻の奥を刺激する。
骨が顔を出すが、焼けたことによって血は出ていない。
触れただけで腕を持って行かれた……やはり直撃は避けないといけないな。
腕はすぐさま再生をし、それを見たルージュは目を細めて俺を睨み付ける。
「どんな回復力してんだよ……」
「それよりこのお兄ちゃん、僕の【水】を破っちゃったよ」
「ああ……想像の倍は強いみたいだな」
「僕は3倍ぐらい強く感じる」
ブルは水を破ってしまった俺に驚きはするものの、冷静にこちらを見据えるだけであった。
もう少し戸惑ってくれた方が可愛げがあるんだけどな。
可愛げもないし、ブルの方から倒すとことにするか。
ルージュも面倒だが、あんな水に封じ込められるのは厄介だ。
「【エアスラッシャー】!」
幾重もの風の刃がブルを襲う。
しかし、最初にブルを狙った時のように、水となって体が消えてしまった。
「あいつを捉えるのは無理なんだよ」
「向こうを捉えるのが無理なら、まずはお前をやらせてもらう」
「そりゃ余計無理ってもんだぜ!」
【閃光】を放ち、光の束でルージュを狙う。
だがまたルージュの爆炎に攻撃が阻まれ、光が四散する。
「ちっ……」
「言ったろ。無理だって」
「無理だろうがやらなきゃやられるんでね」
「黙ってやられるのが、一番手っ取り早いぜ!」
今度は腕を振るい、爆炎を飛ばして来るルージュ。
俺はヒヤッとしながらそれを飛んで避ける。
するとまた、ブルの水の棺に体が捉えられてしまった。
「黙ってやられるのが一番だって、ルージュも言ってるでしょ?」
いつの間にか遠くに現れたブルが愉快そうに言う。
俺の口からブクブクと空気が漏れるのを見て、ルージュが口角を上げる。
「そういうことだ! おとなしくやられてりゃ、そんな苦しい目にあわなくて済むってのに――よ!」
両手で空気を爆発をさせながらこちらに向かって来る。
再度俺は、【イフリートブレイズ】で水の棺を吹き飛ばした。
だがルージュはその炎の中を駆け、俺の右脚に拳を叩き込んで来る。
爆散する俺の右脚。
痛みは【心術】のおかげで感じていないが……このままではいつかやられてしまう。
俺はルージュから距離を取り、再生した足で地面に立つ。
しかしまた、ブルの水に捕らえられてしまう。
「あはは! お兄ちゃんに勝ち目はないよ。さっさとやられちゃいなよ!」
「…………」
どうやってこいつらを倒す……?
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