第31話 アルダイルエリア
ルラフィンの世界に戻った俺は、勇太たちと共にセイルレーンエリアからアルダイルエリアとの境界線までやって来ていた。
草原が続くセイルレーンから、線を引いたように目の前に荒地が続いている。
「こっからアルダイルエリアか……皆、頑張ろうぜ!」
親指を立ててウインクをする勇太。
「勇太くんはムードメーカーで、いてくれるだけで元気になれますね」
「本当だな。勇太がいれば暗くなる暇もないよ」
ニコリと笑う由乃を見ながら俺は
同じ名前で同じ顔で同じ人物で……
でもあの子とは別人なんだな……
向こうの由乃から預かった時計をポケットから取り出し時間を確認する。
時刻は午前11時。昼前だ。
空には太陽が昇っており、じんわりとした暑さを提供してくれている。
時計を見ている限り、一日のサイクルは元の世界と同じ程度だな。
うん。この感じなら、やはり7回太陽が昇った時に向こうへ行けばいいはずだ。
「おう! じゃあ行くぞ!」
磯さんが大きな一歩でアルタイルエリアへと足を踏み入れる。
俺たちも続き、荒地へと足を踏み出し、北東へと向かって歩き出した。
「北東に町があるって言ってた」
「そうだったな。北東に向かっていざゆかん! ってやつだな」
円の言葉に勇太は愉快に応えるも、円は反応を示さず黙々と歩くだけだった。
勇太はそんな円の態度を気にすることなく笑顔で歩を進めていく。
俺だったら間違いなく傷ついてるところだ……その精神力が羨ましいよ。
砂利道の感覚を足に感じながら歩いていると、新たなるモンスターが姿を現す。
骸骨だ。
骸骨が剣を持ってゆっくりと徘徊している。
「おう! 骸骨のモンタスーがいたぞ!」
「モンタスーじゃなくてモンスターね」
「おう! それだそれだ!」
磯さんは手に持った盾を前方に突き出しながら骸骨との距離を縮めていく。
彼の後ろから勇太たちが続いて行く中、俺は周囲を探りながら歩いていた。
すると右方向に骸骨の姿を3つ確認し、勇太たちに気づかれないようにクロスボウを連続で放つ。
アルダイルエリアでの初エンカウント。
一撃で倒せるか?
心配しながらも放った矢は、軽々と骸骨3匹を破裂させる。
俺はホッとしつつ、湧き上がる歓喜に胸を躍らせていた。
これでまた俺は強くなれそうだ。
レベルの上昇と共にモンスターカードを新たに手に入れられる。
「おう! 来るぞ!」
磯さんが骸骨の剣を盾で受け止め、由乃がハンマーで骸骨の頭部に強烈な一撃を放つ。
骸骨の頭が砕けるが――動きを止める気配はない。
「まだ死なねえのかよ!」
勇太が骸骨の後ろに回り込み、縦一文字にバッサリと切り裂いた。
そこでようやく骸骨の活動は停止し、地面に飲み込まれて消えていく。
「なんとかなるけど……セイルレーンのモンスターと比べたら随分強そうだな」
「おう! 攻撃の威力もけた違いだったぞ!」
俺は一撃で倒せてしまったので分からなかったけど……どうやらそういうことらしい。
敵のレベルが上がったのか……
ということは、経験値なんかも上がってるのかな?
パッと左手に見えた骸骨を射抜きながらそんなことを思案する。
そしてサッと《ホルダー》を開き、入手しているであろうカードを探し出す。
スケルトンカード:レア度N
MPが1%上昇する
骨:レア度N ランクB
投擲で敵にダメージを与えることができる
MP上昇か……MPは消費しないからあんまりありがたみが無いな。
【骨】のカードはアタックカードか。
これも使い道はない。かな?
あまりありがたみのないスケルトンと呼ばれるモンスター。
しかし、こういう物はコレクションすることに意味がある。
とりあえずはコンプリートするつもりでいよう。
スケルトンを倒しながら先へ進んで行くと、大きな町が遠くに確認できた。
「あれが町ですね」
「だなっ。今日はあそこで宿を取ろうぜ」
勇太たちが嬉しそうに会話をしている間にも、俺はモンスターを撃ち貫いていく。
皆と行動している時は自分にあまり経験値は入らないが、その分由乃たちにも経験値が加算される。
勇太たちが死なないためにも、出来る限りのことをしておいてやろう。
それから町に到着するまで、15匹のスケルトンを倒すことができた。
町は石造りの建物が多く、中央には大きな城が見えた。
「おう! ここは何て町だ!?」
「ええっ!? こ、ここはダラデニーの町だよ」
「そうか! ありがとな!」
磯さんに声をかけられた老婆は、顔を引きつらせながら去って行く。
「ここはタラバニーって町らしいぞ!」
「タラバニーって、そんなカニみたいな名前じゃないでしょ。ダラデニーって言ってたでしょ」
「おう! そうか! ガハハハッ!」
磯さんの言い間違いに苦笑いしながら、俺たちは宿へと移動する。
そしてまた男女別で部屋を取り、ベッドへ腰をかけた。
「ふいー。今日は今日で疲れたなぁ、司」
「ああ。明日からのためにもしっかり休まないとな」
「おう。そうするぜ」
勇太にできる限りの笑顔を向けながら、俺は悪だくみするかのように腹の中でニヤリと笑う。
今日も俺の時間が始まる……ふふふっ。
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