第14話 洞窟
俺は新たに入手したカードと気になるカードを確認した。
神の加護:レア度N ランクSSS
どんな傷だろうと瞬時に回復する
手加減1:レア度N ランクB
攻撃によって格下相手のHPを90%まで残すことができる
くくり罠:レア度N ランクB
罠にかかった者の足をワイヤーで身動き取らなくする装置
「…………」
【神の加護】……瞬時に回復って、メチャクチャだな。
これなら攻撃を喰らっても何とでもなりそうだ。
というか、素晴らしすぎる能力に胸がときめく。
【手加減】と【くくり罠】はスライムを倒した時に入手したようだが……【手加減】は勇太たちのフォローに役立ちそうだな。
だけど、【くくり罠】なんて使い道あるか?
こんなの、猪とか捕まえるやつだろ。
「なあ司」
「ん?」
勇太が自分のベッドに寝転びながら、俺に声をかけてくる。
俺はステータスを閉じ、勇太の方に向く。
「今日町を歩いてたらさ、洞窟に行くことなったんだ」
「急だな……というか、説明がわけ分かんないよ。もう少し細かく教えてくれ」
「おう! 人助けのために西の洞窟に行くことになったみたいだぞ! ガハハッ!」
「磯さんも勇太も、結果しか言ってないじゃないか。なんでそうなったかを教えてくれって言ってるんだよ!」
二人は悪意なく大笑いして話を続ける。
「町を襲いに来るモンスターが西の洞窟を根城にしているらしいんだよ。だからそいつ倒して町の人たちを助けてやろうってことになったんだよ」
「困った時はお館様ってやつだな!」
「なるほど。後磯さん、お館様じゃなくてお互い様だからな」
「おう! そうか! ガハハッ!」
「その洞窟に向かうのは明日でいいのか?」
「ああ。明日行くつもりだ!」
勇太は親指を立ててウインクする。
俺はその話を聞いて、内心高揚している部分もあった。
人助けはまぁいいことだけど、洞窟に行くことによって新たなるモンスターと戦えることが嬉しかったのだ。
新たな力を手に入れられるかも知れないし。
問題は……俺たちに勝てるかどうかだな。
化け物みたいなのが出てきたらどうしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
翌日、曇り空の朝、草原を西に向かって俺たちは歩いていた。
俺は皆の後ろから付いて行き、バレないようにクロスボウでモンスターを倒していく。
草原に出現するモンスターはスライムと、黒い犬のようなモンスターだ。
犬型のモンスターのカードが手に入ったので名前を確認してみる。
ウルフカード:レア度N
敏捷が1%上昇する
ウルフか……見たまんまの名前だな。
ウルフと戦う勇太たちの方に視線を向けると、難なく勝利を収めている。
うん。俺も一撃で倒せたし、強さは大したことないようだな。
その後も勇太たちはモンスターと戦い、俺も遠くから近づくモンスターをクロスボウで狙い撃ちにして始末した。
「ここみたいですね」
進んだ先には山があり、岩で囲まれた、洞窟のような入り口があった。
入り口からはひやっとした冷たい空気が流れている。
「よし、じゃあ入るか!」
「おう!」
洞窟に愉快に足を踏み入れる勇太と磯さん。
もっと慎重に行った方がいいんじゃないの。
と俺は少しばかり緊張しながら洞窟に入っていく。
由乃はそんな俺の顔を見て、ニコリと笑う。
「司くんなら問題ありませんよ!」
「いや、俺は【戦士】だからね?」
なぜ俺は由乃からの評価が高いのだろう。
由乃はとにかくニコニコ笑うものだがら、俺は苦笑いを返しておいた。
「リリース」
カードから武器を実物化させる時は『チェンジ』だが、アイテムを使用する時は『リリース』と唱えるらしい。
勇太がその言葉を唱えると【タイマツ】のカードから実物のタイマツが出現する。
すると自動的にタイマツには火が灯り、暗い洞窟の中を見渡すことができた。
中は人が二人ほど並んで進めるぐらいの広さ。
高さは4メートルと言ったところか。
全面岩造りの洞窟だ。
「…………」
円がなぜか、体をフルフルと震わせていた。
もしかして、暗いところが怖いとか?
「どうしたんだ、円?」
「……火、怖い」
「火が?」
タイマツから目を背けて、円はコクリと頷く。
火が苦手なのか……俺は円を心配しながら話を続ける。
「中に入るの、やめておくか?」
「ううん。私たちは仲間だから。一緒に行く」
円って冷たい印象があったけど、意外と友達思いのいい子なのかも知れない。
俺は円に頷きながら、言う。
「じゃあ、何かあったら俺が助けるから」
「違う違う! お前じゃなくて、俺たちな!」
「おう! 全員でフォローするぜ!」
「円ちゃんは後ろから付いて来てくださいね」
「……うん」
友達思いなのは円だけじゃない。
ここにいる全員が友達思いの良い奴ばかりだ。
俺は胸に熱いものを感じながら、先頭を歩く磯さんに続いて洞窟に侵入する。
磯さんと勇太、由乃が前を歩き、後ろを歩く俺との間に円が位置していた。
モンスターの姿はまだ見えないが、油断だけはしちゃいけない。
少し怯える円と俺の真剣な表情を見て、勇太は振り返りながら壁に手を当てる。
「俺が皆の事助けてやるから、心配――」
「え?」
ガコンッ! と勇太の手元の岩がへっこみ、足元がポッカリト口を開く。
「「「うわあああああああ――」」」
「お、おい!!」
落とし穴だ。
俺を抜いた四人全員が、落とし穴に飲み込まれて落ちて行く。
「……え? どうすんのこれ?」
俺は真っ暗になってしまった洞窟の中で、唖然と落とし穴を見下ろし続けていた。
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