第13話 +99

 ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 一人でシバーフの森に侵入し、モンスターを倒していた。

 ゴブリンもキラービーもトレントも俺のクロスボウを前にして次々と四散していく。

 オーバーキルもいいところだろう。


 【弩】の熟練度が上がったことにより、凄まじい効率でモンスターを倒し続けることができていた。

 撃った矢先に矢が装填されるものだから、ピストルを連射するかのようにドンドン矢を放つことができる。

 俺はガンマンにでもなった気分でモンスターを倒し続けた。


「【トリプルショット】!」


 【弩】の熟練度を上げたことにより【技】が使えるようになっていた。

 【トリプルショット】を発動し矢を放つと、それは三本の矢に分裂する。

 全てが実物らしく、敵に向かって飛翔して行く。

 ボボンッ! と三匹のトレントを破裂させながら、後方にいるキラービーたちも巻き添えにする。

 合計9匹のモンスターを一撃で仕留めることができた。

 いつもこれぐらい敵が固まってくれてたら効率もいいんだけどな。


 周囲に敵がいなくなったため、俺は一息入れる。

 クロスボウを見下ろしながら、熟練度の事を考えていた。


 【弩】の熟練度はマックスなんだから、次の武器の熟練度でも上げてみるか。

 となれば、次は……どうしよう。

 《ホルダー》を開きながら、今ある武器を確認する。

 剣、槍、斧、槌、色々と入手はしているが、どれにするか……


「…………」


 そう言えば、王様は素手で戦っても熟練度が上がるって言ってたよな。

 《ホルダー》を開いて武器を手に取る必要もないし、素手の攻撃ができたら咄嗟の時に対処できる、か。


 よし。次は素手の熟練度を上げよう。


「リバース」


 俺はクロスボウを《ホルダー》に戻し、【鷹の目】でモンスターの姿を探した。

 4匹のゴブリンを発見し、俺は【潜伏】を発動させ接近して行く。

 しかし、武器は威力があったから一撃で倒せてはいたが、素手の場合どうなんだろう……?

 ま、隠れながら戦うし、倒すのが難しそうなら素手の熟練度上げは諦めよう。


 最接近するが敵は当然、俺の姿に気が付いていない。

 そしてゴブリンの背後から、頭部を狙って拳を振り下ろす。

 拳を喰らったゴブリンの頭は体から離れ、遠くへと飛んで行く。

 あ、一撃で倒せるな。

 俺はウキウキしながら次のゴブリンの方に視線を向けると――相手はこちらに気づいたらしく、犬歯をむき出しにして俺に襲い掛かってきた。

 え、何でバレたの?


 俺に飛び掛かるゴブリン。

 しかし俺から見たらその動きはスローモーションのようだった。

 スッと体を捻り、アッパーを顎に叩き込む。

 天高く舞うゴブリンの体。 

 他のゴブリンにも居場所がバレていたので、素早い動きで残りの二匹も始末する。


「ふー……」


 何で【潜伏】を発動していたのに居場所がバレたんだ?

 今までとの違いは……接近戦をしたからか?

 遠くからの攻撃の場合は【潜伏】は解けないが、近距離での戦闘ではその効果が切れてしまう……?


 俺はそれを確認するため、素手とクロスボウでの戦闘を交互に行った。

 結果、やはり素手による接近戦の場合、攻撃を仕掛けた時点で【潜伏】の効果が途切れてしまった。

 これは、ちょっと気をつけないとな……

 初見の敵は、遠距離から慎重に行こう。

 もし勝てないような相手だったらシャレにならん。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 森でモンスターと戦闘を続け、気が付けば夜になっていた。

 俺は森から抜け、スライムを倒しながら町に戻る。

 町に入る時に、辰巳たちと会わないように、【潜伏】を発動して宿へと向かう。

 こういう時もこの能力は役立つなぁ。

 石造りの地面を軽快な動きで宿に戻った。


「おう! どこ行ってたんだよ!?」

「ああ……ちょっと散歩に行ってたんだ」

「そうかそうか! 迷子にだけはなるなよ! ガハハッ!」


 豪快に笑う磯さん。

 俺は笑顔で応え、自分のベッドに腰をかける。

 そこから溜まったモンスターポイントでガチャを回しに回し、スキルなどを合成していく。


 全てを合成しきったステータスは――


 島田 司

 LV99

 ジョブ  合成師

 HP  600(+1200)

 MP  300(+600)

 攻撃力 300(+900)

 防御力 200(+588)

 敏捷  200(+504)

 魔力  300(+600)

 運   250(+507)


 ジョブスキル

 合成Ⅰ

 武器スキル

 体術 37 弩 99

 アクティブスキル

 火術Ⅴ 回復術Ⅴ 心術Ⅴ 72 

 潜伏Ⅴ 99 鷹の目Ⅴ99

 パッシブスキル

 HP増加(特大) MP増加(特大) 怪力 

 鉄壁 俊足 超魔力 

 強運 神の加護 毒無効

 麻痺無効 石化無効 混乱無効

 誘惑無効 病気無効 魔力消費0

 高速成長


「おお……」


 ガチャから手に入るパッシブスキルのLR化がとうとう完成した。

 能力上昇系はHPとMPを除いて、【鉄壁】【俊足】【超魔力】【強運】に名称が変化しており、【自己再生】は【神の加護】というものに変わっている。

 さらには【魔力消費軽減】が【魔力消費0】に……

 いや、0ってことは、スキル使い放題ってこと?

 なんということだ……嬉しすぎて踊りたい気分だ!

 だが俺が踊り出すと、勇太と磯さんが驚いてしまう。

 ……違うな。一緒に踊り出してしまうに違いない。

 だから踊るのは控えておこう。


 モンスターカードも合成し終えた物を確認する。


 ゴブリンカード+99:レア度N

 攻撃力が100%上昇する


 キラービーカード+93:レア度N

 敏捷が94%上昇する


 トレントカード+85:レア度N

 防御力が52%上昇する


 スライムカード+2:レア度N

 運が3%上昇する


 ゴブリンカードは+99――丁度100枚目から手に入っていないようだった。

 そうか。+は99が限界か。

 しかし一枚で攻撃力100%上昇って……凄すぎじゃない?

 俺は喜びにニヤニヤしながら窓の外を眺めていた。

 何故外を眺めているかというと、勇太たちに笑ってるのがバレたら、ちょっと恥ずかしいからだ。

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