第12話 エキルレの町

 モンスターを倒しながら森を奥へと進んで行くと、広い草原へと出た。


「おい、あれがエキルレって町か?」

「そうだと思います」


 勇太が指差す先、草原の遥か向こうにポツンと町が見える。

 俺たちは温かい太陽が顔を出し、優しい風が吹く草原の中を歩いて行き、町の方を目指した。

 なんか冒険の始まりみたいでワクワクするな。

 

 草原を歩いていると、その途中でモンスターが出現する。

 半透明の丸い肉体をしており、両腕で十分包み込めそうなサイズ。

 それは跳ねる度にプルンプルン体を震わせている。


「……あれって、スライム?」

「おそらくは。まぁ、ゲームなんかじゃ定番の敵だよな」


 俺たちはそれをスライムだと認識する。

 名前は違うかもしれないが、見た目はゲームでよく出て来るスライムそのものだ。


 勇太は鼻歌交じりでスライムに近づいて行く。


「おい、勇太、油断するなよ」

「大丈夫だって、こんなぐらい」


 俺も新たなる成長の種が現れた喜びに胸を躍らせながらも、もしかしたら強いモンスターだったどうしようかという不安を胸の片隅に抱いていた。

 何事も慎重に行こうぜ。


「ほいっ!」


 だが勇太の横薙ぎの剣は、スライムをあっさりと真っ二つにしてしまう。

 俺はホッとしながら、《ホルダー》を開く。


 スライムカード:レア度N

 運が1%上昇する


「【スライムカード】が手に入ってたよ。スライムで間違いないみたいだな」


 運よくモンスターカードをゲットできており、モンスターの名前を確認できた。

 これでこいつはスライム確定というわけだ。

 

「ん?」


 皆の方へ視線を戻すと、全員ポカンとした顔で俺の方を見ていた。


「どうしたんだよ?」

「いや……いきなりモンスターカードって、どれだけ運がいいんだよお前」

「あ……」


 そうか。

 モンスターカードって、普通はドロップしにくいのか。

 俺の場合はどういうわけか、ポンポン手に入るものだから、それが当たり前だと認識してい待っていた。

 お互いの考えのずれ、互いのルールに違いがあることを思い出す。

 どう説明するかな……


「さすが司くんです! 運がいいなんてものじゃありませんね!」

「え、あ、ああ……」

「このままの勢いで最強武器とか、ドロップすればいいですけどね!」

「流石にそれはないだろ」


 眩しい笑顔の由乃の言葉に俺は乾いた笑みを浮かべる。

 SSR武器を超えた武器ならもうすでに持っているんだよな。

 LRレベルのクロスボウだけど。


 皆俺の運が良かったということで納得し、歩みを再開させる。

 周囲でちらほらと跳ねるスライムを倒しながら、町へと向かう。


 合計スライムを8匹倒したところで、町へと到着した。


「ようこそ、エキルレへ!」


 町につくなり町の住人が俺たちを招き入れてくれた。

 どうやらここはエキルレの町で間違いないようだ。


 そこはのどかな町で、背の高い建物は一つも無かった。

 木造の家屋が多く、数人の人が練り歩いている。


「まずは……宿屋でも探すか」


 時間はまだ昼を過ぎたぐらいではあるが、今日はこれ以上先に進めないだろう。

 そう判断していた俺たちは、町の宿屋を探すことにした。


「なあなあ、宿屋ってどこにあるの?」


 近くを歩いていた女性に、勇太は屈託のない笑顔で訊ねる。

 女性は笑顔で勇太に答えた。


「あそこの一番大きな建物が宿屋だよ。あとは、向こうの方にも小さな宿があるわ」

「そっか。ありがとう!」


 女性はニコニコしながら去って行き、勇太はそんな彼女に手を振って見送った。

 彼女が指差した宿屋……背の高さこそたいしたことはないが、面積の広い建物だ。

 

「じゃあ……小さい方の宿屋に行くか!」

「え? 何で?」

「何でって、多分あそこには、辰巳たちがいるだろ?」

「ああ……その可能性は高いな」


 少し前に出て行った辰巳たち。

 この町で宿を取っていると考える方が自然か。

 それもそこそこの人数がいるんだから、大きな宿を選ぶよな。


「別に一緒の宿になってもいいけど、お前は嫌だろ?」

「確かにそうだな……」

「おっしゃー! じゃあ小さい方の宿に向かうぞ! ガハハッ!」


 磯さんは肩に手を回し、ズンズンと歩き出す。

 俺はそんな彼に逆らうことなく、一緒に宿の方へと向かった。


 歩いている途中で、いくつかの店が目に入る。

 売っている物は――カードだった。

 そうか。この世界は全てがカード化されているんだったな。

 武器もアイテムも食料も。

 

 店などを眺めながら進んで行くと、ベッドのマークがついた看板が下げられている建物を見つけた。

 周囲より少しだけ大きな建物。

 俺たちは宿に入り、部屋を二つ取った。

 男子の部屋と女子の部屋だ。

 

 宿代はというと……Nカードが10枚。

 物々交換みたいな感覚だ。


 木造の部屋に通されると、中はベッドが丁度三つ備えらえれている清潔な部屋だた。


 俺は一眼奥のベッドに腰かけ、ステータス画面を開いた。


 島田 司

 LV99

 ジョブ  合成師

 HP  510(+1020)

 MP  255(+127)

 攻撃力 255(+708)

 防御力 170(+173)

 敏捷  170(+141)

 魔力  255(+127)

 運   212(+42)


 ジョブスキル

 合成Ⅰ

 武器スキル

 弩 99

 アクティブスキル

 火術Ⅳ 回復術Ⅲ 心術Ⅳ 62 潜伏Ⅴ 99 鷹の目Ⅳ 99

 パッシブスキル

 HP増加(特大) MP増加(大) 怪力 

 防御力増加(大) 敏捷増加(中)魔力増加(大) 

 運増加(中) 自己再生(大) 毒無効

 麻痺耐性(大) 石化耐性(大) 混乱耐性(中)

 誘惑耐性(大) 病気耐性(中) 魔力消費軽減(大) 

 高速成長


 レベルは99のままだが……ステータスが上昇している。

 記録ログ確認すると、レベルが上がりました、といくつか表示されていた。

 レベルの数字こそ変化は無いが、どうやらしっかり上がっているようだ。

 

 しかしやはりと言うか、皆と行動しているとレベルの上りが悪く思える……

 経験値が分散されているのだろ。

 よし。この後一人でモンスター狩りをしに行くか。

 俺は窓から見える鳥の姿を見ながらニンマリと笑っていた。

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