第5話 合成

「…………」


 俺はどれだけ【パッシブスキル】をセットできるのか確認しようと、全てのスキルをスライドさせてみた。

 結果、全てのスキルをセットできることが判明する。


 自分のステータスを視認しながら、俺は呆然としていた。


 島田 司

 LV1

 ジョブ  合成師

 HP  10(+1)

 MP   3(+1)

 攻撃力  5(+2)

 防御力  3(+1)

 敏捷   3

 魔力   5(+1)

 運    4


 ジョブスキル

 合成Ⅰ

 アクティブスキル

 火術Ⅰ 潜伏Ⅰ

 パッシブスキル

 HP増加(微小) MP増加(微小) 攻撃力増加(微小) 

 防御力増加(微小) 魔力増加(微小) 自己再生(微弱) 

 毒耐性(微弱) 混乱耐性(微弱) 魔力消費軽減(微小)


 なんだかいきなり豪勢になったような……

 俺はちょっとワクワクした気分でステータス画面を眺めていた。

 弱いけど……楽しいかも。

 その時、ふとジョブスキルの【合成Ⅰ】のことが気になりだした。


 このスキルにはどんな効果があるのだろうか?


 文字をタップすると、スキルの説明が表示される。


 合成Ⅰ:同じカード同士を合成させることができる


「同じカード……?」


 確か、クロスボウと毒耐性が二枚ずつあったよな……

 俺は《ホルダー》を開き、毒耐性のカードをタップした。


 毒耐性(微弱):レア度N ランクB

 毒の耐性がほんの少しだけつく


 別段、変わったカードではない。

 しかし、カードをタップした時に『合成しますか?』という文字も映し出された。

 俺は頭に疑問符を浮かばせながら、「YES」の文字を押す。

 

 すると毒耐性のカードがピカッと光を発し――『合成が完了しました』という文字が表示されていた。


 毒耐性(弱):レア度N ランクA

 毒の耐性が少しだけつく


「嘘だろ……」


 レア度はそのままなのだが、ランクとスキルの性能が上昇していた。

 続いてクロスボウのカードでも同じことを試してみる。


 クロスボウ+1:レア度N ランクA

 攻撃力62


 まただ。

 またカードの性能が上がった!


 こんな風にカードを合成できるのは当たり前のことなのか?

 俺は興奮したまま、勇太に声をかける。


「な、なあ勇太。同じカードってあるか?」

「同じカードって……二枚あるかってことだよな」


 勇太は自分のカードを確認し、笑顔で言う。


「あったぜ! 【鉄の剣】が二枚あるな!」

「そ、それ、タップしてみてくれよ」

「これをか? いいぜ」


 勇太が【鉄の剣】をタップする。


「…………」

「…………」


 しかし、何も起こらなかった。

 え? ってことは……これができるのは俺だけなのか?

 【合成】……俺だけが使えるスキル?


「で、これがどうしたんだよ?」

「べ、別になんでもないんだけどさ……」

「なんでもないのかよー! 何かあんのかって期待しちまったじゃんか!」


 ケラケラ笑う勇太。

 俺は自分の可能性……ジョブの持つ、特殊なスキルにますます興奮を募らせていた。


 ◇◇◇◇◇◇◇


 翌日。


 また俺たちは森へ行き、ゴブリンと戦闘を繰り広げていた。


「そっち行ったぞ!」


 勇太たちの攻撃をかいくぐり、後方の俺たちに向かって駆けて来るゴブリン。

 俺はクロスボウを手に取り、そのゴブリンの足を狙って矢を発射した。

 矢はゴブリンの右足を、膝から下を吹き飛ばす。


「「ええっ!?」」


 周囲にいたクラスメイトが驚いた様子で倒れるゴブリンを眺めていた。

 誰が倒したのかは分かっていないようで、お互いに誰がやったのか尋ね合っている。

 クロスボウの攻撃力が上がっていたのは分っていたが……これなら俺でもなんとかなりそうだな。

 俺はクロスボウの反動と歓喜に手を震わせながらニヤリと笑みをこぼしていた。


 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 戦闘が終わり、用意されていた部屋に戻って来ていた俺たち。

 今日は20匹のゴブリンを退治し、二度目のガチャタイムが行われようとしていた。

 俺も【パッシブスキル】を入手するため、ガチャ画面を開く。

 するとそこには今回も、『10連ガチャ』の文字が表示されていた。

 なんで?

 もうなぜかは分らないが、とにかく回せるなら回しておけ。

 

 N 運増加(微小)   N 敏捷増加(微小)

 N 攻撃力増加(微弱) N HP増加(微小)

 N 石化耐性(微弱)  N 毒耐性(微弱)

 N 混乱耐性(微小)  N 防御力増加(微小)

 N 魔力増加(微小)  N 成長増進(小)


 うん。何となく分かってはいたけどやっぱり全部Nだ。

 どれほどモンスターポイントを消費したのかを確認しておく。

 消費されたのは10ポイント。

 残り10ポイント残っている。


「…………」


 皆の様子を見る限り、やはり二回目は20ポイント消費しているようだが……俺は今回も10で10連ガチャを引けた。

 必要ポイントは倍になっていくと聞いていたのに、俺は例外と言うことなんだな。

 あまり理由を考えても答えなんて分かるわけないし、とりあえずはもうこれはこれでいいや。

 その方が精神衛生上いいし。

 うん。分からないものは分らないでいいのだ。


 次にドロップしたカードを《ホルダー》で確認する。

 ゴブリンカードが新たに3枚手に入ってるな。

 皆はほとんど手に入っていないというのに、俺はそこそこ高確率で入手できてる。

 ここも理由は考えないでおこう。

 とりあえず、こいつも合成しておこうか。


 ゴブリンカードをタップし、【合成】を選択。

 画面には『一枚だけ合成する』『持っている同一カード全てを合成する』の二つの文字が映し出されている。

 俺は同一カードを合成するを選択。

 ゴブリンカードがパッと光る。

 

「ちょっと待て……」


 ゴブリンカード+3:レア度N

 攻撃力が4%上昇する。


 予想を上回る上昇値だった。

 というか……何枚重ねることができるんだよ。

 俺はうるさいほどの心音を聞きながら、ゴブリンカードをずっと眺めていた。

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