第6話 キラービー

 ゴブリンカードはこの様子ならまだ重ねて合成できそうだが……

 他のカードならどうなんだ?


 今手元にあるカードで試せそうなのは……アイテムカードの塩だ。


 塩:レア度N ランクB

 調味料の塩


 塩のカードは四枚ある。

 俺は塩のカードをタップし、合成を選択した。

 だがこのカードの場合は、ゴブリンカードのように複数枚合成できないようだ。

 何だよ……期待外れだな。

 俺はガッカリしながら、塩のカードを合成し、残った塩のカード同士も合成した。


 そしてもう一度試しに塩のカードをタップした。


「おっ?」


 どうやらまた合成できるようで、選択肢が出現する。

 なるほど。同じカード同士が合成できるということは、合成し合った、同ランクのカードなら合成できるというわけだ。

 パッと塩のカードを合成する。


 塩:レア度N ランクS

 調味料の塩


 ランクがさらに上がった。

 ランクA同士の物を合成すると、ランクSになるんだな。

 多分だけど、レア度で言えば……SR相当か。


 俺はゲームに夢中になるように、楽しい気分で操作を続ける。

 そう言えば、アクティブスキルを確認してなかったな……


 火術Ⅰ:レア度N ランクB

 下級の火術を使用できる


 潜伏Ⅰ:レア度N ランクB

 姿を消し敵に見つからなくなる

 効果時間5秒


 火術はそのまま火の術が使えるようだけど……潜伏は敵に見つからなくなるのか。

 だけど、5秒じゃあんまりありがたみがないよな。

 だが、【潜伏】のカードはもう一枚ある。

 こいつも合成しておいてやろう。


 潜伏Ⅱ:レア度N ランクA

 姿を消し敵に見つからなくなる

 効果時間10秒


 効果時間が倍になった。

 それでも10秒か……慎重派の俺にとってはまだまだ短い。

 もう少し長くなってほしいところだ。


「……うん」


 俺は腕を組んで、皆との違いを整理することにした。

 まず一つ目。

 まだ確定ではないけれど、俺はNのカードしか入手できない。

 だけどその代わりに【合成】が使用できる。

 二つ目は、《ランク》が表示されているカードは同じランク同士、そして同じカードじゃないと合成することができない。

 だけどモンスターカードみたいに《ランク》が表記されていないものは、そのまま合成を重ねることができる。

 三つ目。

 ガチャは一回一ポイントで回せる。

 四つ目。

 スキルをセットできる数は違う、と。


 最初は星0の【合成師】を引いて愕然としていたけど……

 これなら案外強くなれるかも知れないな。


「おーい、司! 何ニヤニヤしてんだよ!? 面白い話なら、俺にも聞かせてくれよ」

「え、いや……大したことじゃないよ」


 どうも顔が笑っていたらしい。

 勇太に言われるまで気が付かなかった。

 ……気持ち悪くなかったかな?


 ◇◇◇◇◇◇◇


 さらに翌日。

 ちらほらと防具を手に入れている者たちも増えてきて、戦士っぽさが増してきていた。

 俺は昨日手に入れた、【鉄の鎧】を装備している。

 ちょっと動きづらいけど、死ぬよりはマシだろ。


「今日はキラービーって奴を探すぞ」


 キラービー。

 これもシバーフの森に出現するモンスターらしく、もう少し先に進むと出現するとのこと。

 城の周囲ではゴブリンばかりが出現していたが、今日は奥に進んで他のモンスターと戦うんだな。


 勇太と辰巳を筆頭に、ゴブリンを倒しながら先に進んで行く。

 俺も道中、ゴブリンをクロスボウで倒していた。

 一度矢を放ち、10秒経つと矢が左手に出現するという、なんか魔法のような仕様。

 あまり連射はきかないので、着実に一撃で仕留めたいところだ。


 そうこうしていると、キラービーと呼ばれるモンスターが視界に入ってくる。

 森の中を飛翔する、巨大な蜂のようなモンスター。

 人間の頭ほどのサイズがありそうだ。

 ブンブン音を鳴らせながら、数匹が法則性の感じさせない動きで飛んでいる。


「まず俺が行く。お前たちは援護しろ」


 辰巳の命令に素直に頷く皆。

 辰巳は虫でも捕まえる少年のごとく、ゆっくりこっそりキラービーに近づいて行く。

 キラービーは向こう側を向いており、辰巳に気づいていない。

 そして剣が届く距離まで接近し、剣を振り下ろした。


 音に反応したのだろうか、辰巳の剣を喰らいながらも、回避運動はしていたらしく、傷は浅い。


「ちっ!」


 横に剣を振る辰巳。

 青い血を巻き散らしながら、キラービーは上昇してそれを避ける。

 周囲にいたキラービーが、辰巳に向かって集まって来ていた。


 仲間たちは弓を引いたり術を発動させたりと、辰巳の援護を開始する。

 俺もキラービー目掛けてクロスボウを撃つ。


 ドン! と矢の威力に吹き飛ぶキラービー。

 あれ? もう辰巳よりまともに戦えるんじゃない?

 と言ってもリロードには10秒かかる。

 あいつらがいてこそのこの攻撃力か。


 だけど……潜伏の性能が上昇したらどうだろうか?

 俺は淡い期待に胸を躍らせながら、キラービーとの戦いを再開させた。

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