第4話 スキルガチャ
「じ、じゃあ回すぜ……」
ゴクリと唾を飲み込みながら、一人の男子がステータス画面に指をかける。
彼のステータス画面には青い扉がでかでかいと表示されていた。
現在彼は、【パッシブスキル】が手に入るガチャを回そうとしている。
【パッシブスキル】とは、スキルセットしておくことで自動的に機能するものらしく、これを合計五つまでセットできるようだ。
基本的にこの【パッシブスキル】はガチャでの入手になるらしく、ジョブと同じく、今後を左右する大事なことらしい。
ガチャはモンスターを倒すことによって得られる、モンスターポイントを消費して回すことができる。
敵一匹を退治することによって得られるポイントは一律、1だ。
これを10消費することによって、このガチャは回せる。
しかし二回目となるとモンスターポイントは二倍の20、三回目になるとさらに倍の40必要になるらしく、一回一回が大事になってくるのだ。
最初の一回は確定でSSRが排出されるらしく、彼はいい物が出るよう、祈るような顔でガチャを回していた。
「【防御力増加(大)】だ」
「……いいのか、それ?」
「さあ?」
確かにSSRは排出されたようだがそれが当たりなのか外れなのか、みんな分かっていない。
いや、俺も分かってないんだけどね。
というか、モンスターが現れてカードが手に入ってガチャを回すとか、本当にゲームみたいな世界だよな。
まだ少し混乱している部分はあるものの、こういう部分はちょっと楽しいかも。
それぞれ皆、ガチャを回している様子。
勇太は俺にニカッと歯を見せて、ガチャを回す。
「司ー。これ、どう思う?」
入手した物を俺に見せてくれる勇太。
士気高揚:レア度SSR
仲間の戦闘力を増幅させるスキル
効果・仲間の全能力値を1.2倍に増幅する
「外れかな?」
「いや……大当たりじゃない? 他の誰もこんなの当ててないみたいだし」
「そっか! それなら嬉しいな」
親指を立てて無邪気に喜ぶ勇太。
俺はそんな勇太の顔を見てほっこりする。
「じゃあ、次は司の番だな」
「ああ」
俺は緊張しながら、《ガチャ》の文字をタップする。
画面に映し出される青い扉。
すると『1回ガチャ』と『10連ガチャ』の文字が並んで表示される。
ん? 10連ガチャ?
10回ガチャを引けるってことだよな……
あれ? モンスターポイントは画面の右上に表示されているが……10だよな。
これどうなってるんだ?
軽いパニック状態になりながらも、とりあえず『10連ガチャ』をタップする。
そして青い扉に指で触れると――扉の中から緑色の卵が10個排出された。
排出されたパッシブスキルは――
N 攻撃力増加(微小) N 防御力増加(微小)
N 自己再生(微弱) N HP増加(微小)
N 毒耐性(微弱) N 毒耐性(微弱)
N MP増加(微小) N 混乱耐性(微弱)
N 魔力増加(微小) N 魔力消費軽減(微小)
「全部ノーマルじゃねえか!」
俺は立ち上がってガチャ結果に吠える。
周囲のクラスメイトは怪訝そうな視線を俺に向けていた。
恥ずかしくなり、そっと座る俺。
「どうしたんだよ、司?」
「あ、いや……別に」
「で、何が当たったんだ?」
「【攻撃力増加】……かな?」
「ふーん。悪くないんじゃねえの?」
また親指を立てて笑顔を向けてくる勇太。
攻撃力増加と言ってもSSRじゃなくてNなんだけどね。
その事実は伏せておいて、俺は画面に視線を戻す。
と言うか……SSR確定じゃなかったのかよっ!?
全部Nってどうなってんだよ。
俺はスキルをもう一度しっかり確認しておくことにした。
攻撃力増加(微小):レア度N ランクB
効果・攻撃力が1.05倍に上昇する
「…………」
何度見ても、どの角度から見てもやっぱりNだ。
ジョブの星は0だし、確定枠までNを引いてしまったのか……
これ、運が悪いとかそんなレベルじゃないよな。
運営にクレームを入れたいところだよ。
運営なんていないんだけど。
俺は絶望に嘆息しながら、投げやりでスキルのセットをすることにした。
ホルダーの上の方に、《整頓》と《スキルセット》の文字があり、《スキルセット》を選択する。
すると画面の左側が少し伸び、《アクティブスキル》と《パッシブスキル》の欄が出現した。
なるほど。こっちにスライドしてスキルをセットするわけだな。
王様の話によると、【アクティブスキル】は三つ、【パッシブスキル】は五つセットできるらしい。
と言うことは、10個手に入れた中から五つを厳選してセットしなければいけないと言うことだな。
……って、どうせレア度はNだし、そんなに悩む必要はないか。
俺は不貞腐れながらカードを左側にスライドさせていく。
「ほいほい」と勢いだけでセットしていると、俺は間違えて六つ目をスライドさせてしまう。
あ、六つ目スライドさせたらどうなるんだろう?
弾かれるのかな? もしくはブッブーみたいなシステム音が鳴るとか?
しかし。
俺の予想は見事に外れてしまった。
なんと、【パッシブスキル】を六つ、セットできてしまったのだ。
「……はっ?」
説明とは違う結果に俺は再び混乱をするものの、ドクンと心臓が高鳴っていた。
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