第2話 カード
「司。俺のステータスだ。見てくれよ」
「あ、ああ……」
混乱気味の俺に、勇太がステータスを送って来る。
指でステータス画面をこちらにスライドさせることによって、能力値を送ることができるようだ。
勇太の能力値が俺のステータスに表示される。
LV1
ジョブ 勇者
HP 40
MP 30
攻撃力 30
防御力 20
敏捷 20
魔力 30
運 10
ジョブスキル
聖剣
うん。
数字を見ても分からない。
これは一体どれぐらい強いんだ?
一度自分のステータスと比べてみよう。
俺は勇太のステータスを画面から弾き、自分のステータスを確認した。
LV1
ジョブ 合成師
HP 10
MP 3
攻撃力 5
防御力 3
敏捷 3
魔力 5
運 4
ジョブスキル
合成Ⅰ
「…………」
絶句。
何も言えないぐらい弱い。
勇太のステータスが高いのか、俺のステータスが低いのか。
多分、そのどちらもだろう。
そもそも星は最低でも二つは約束されていたのんじゃないのか?
それなのに星0って……
俺は自分の能力値の低さにガックリしていた。
「なあなあ司、お前の能力もこっちに送ってくれよ!」
悪意のない笑みでそう言う勇太。
俺は乾いた笑いを浮かべながらステータスを勇太に向けてスライドした。
「……戦士?」
「せ、戦士?」
ちょっと待て。
俺のジョブは【合成師】と表示されているんだぞ。
それなのに戦士ってどういうことだ……?
「……異世界から召喚されておいて星1の【戦士】とは……そんなこともあるのか」
王様が俺の情報を垣間見て、まるでゴミでも見るかのような視線を俺に向ける。
いや、やっぱり星一つはおかしいんだよな……
いやいや、俺のは星0の【合成師】だぞ。
何度自分のステータス画面を確認しても、戦士などとはどこにも表示されていない。
俺はその事実を口にしようとした。
しかしちょっと待て……星一つでこれだけ蔑んだ目で見てくるのなら星0だったらどうなるんだ……
俺はそれを想像し、背筋をゾクリとさせる。
うん。言うのは止めておこう。
戦士だと思われているのなら、もうそれでいいや。
この様子じゃ、活躍なんて夢のまた夢。
もう後のことは勇太にでも任せて俺はほどほどにサポートに徹することにしよう。
「戦士って」
「島田って普段からパッとしないのに、こんな時までパッてしないとか笑えるんだけど」
「やめとけって……ぷぷぷっ」
そうだよな。
人って自分よりも程度の低い人間を見て喜ぶ生き物だもんな。
勇者という上位の存在を囲んでいる時より、戦士という下位の存在を楽しんでいる今の方が気分良さそうにしている。
自分の存在価値を見出すため、またはその価値を自身よりも程度の低い比較対象を見つけて大きく見せるのに躍起になるのだ。
そんなことするより、自分の能力磨けよって思うんだけどなぁ。
これまで磨いて来なかった俺が言うのなんだけど。
でも、こんな人を見下すようなことはしたことはない。
これからだってするつもりはない。
人と比べる必要がないことはよく知っているからだ。
なんて言いつつも内心はやはり少々傷ついていたのだが……そこで王様がある物を差し出してきた。
「これは?」
受け取った辰巳が王様に聞く。
「これは【武器カード】」
「……カード?」
カードと呼ばれる物を手にし、辰巳は眉を顰める。
カードはトレーディングカードと呼ばれる物と同サイズほど……手のひらほどの大きさであった。
「この世界では【カード】が全て。武器も、道具も、スキルも、全てが【カード】として入手できるようになっているのだ」
「全てが……」
「『チェンジ』の一声でそれを物質化させることができ、『リバース』で元のカードの状態に戻すことができる」
「……チェンジ」
辰巳の手元のカードからボンッと煙が上がり――手品のようにその手の中に鉄製の剣が現れる。
「おおっ……武器になったぞ!」
「すげーな……」
どよめきが起こる中、辰巳は冷静に「リバース」と呟き、武器をカードに戻す。
「カードの種類は大きく分けて七つある。【アクティブスキルカード】、【パッシブスキルカード】、【武器カード】、【アタックカード】、【トラップカード】、【アイテムカード】、【モンスターカード】。後、先ほど入手したジョブもカードとしてお主たちの《ホルダー》に保存されているはずだが……ジョブは他に入手方法が発見されていないので、省いている」
なるほど。
通常入手できるカードの種類が七つあり、ジョブカードまで含めると八つあるということか。
兵士の人が大量のカードを乗せた箱を広げる。
俺たちは順番にカードを一枚ずつ選んでいき、それぞれ武器カードを入手した。
俺が手に入れたのは、【クロスボウ】だ。
カードの裏には紋章らしきものが描かれており、表にはクロスボウの絵と武器の詳細が表示されていた。
クロスボウ:レア度・
攻撃力5
そう表示されていた。
レア度は、
しかしこれから世界を救いに行くというのに、もっとレア度の高い物を用意できないものなのだろうか?
せめてSSRの武器ぐらい用意しておいてくれよ。
「……ん?」
数秒カードに視線を落としていると、文字に変化が現れた。
クロスボウ:レア度・N ランクB
攻撃力5
「…………」
先ほどまで表示されていなかった《ランク》という文字。
なぜこんな現象が起こったのか俺には分からないが……これが後にとんでもないことになるとは、この時の俺には知る余地も無かった。
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