第3話カラス狩り
山鳥は美味しい鳥で、丸々と太って食べ応えはあると思うが、飢えている子供がとても多いので、一羽で彼らを満腹にさせられるとは思えない。
それに明日も狩りに出られるとは限らないから、できれば今日の内に数日分の獲物を狩っておきたいと、飢えた子供たちを眼にして強く思うようになった。
だから小屋の周りの安全に気を配りながら、獲物に出会えそうな場所を探す。
あの女狐の言う事は二度と信じないが、それでも気になる話をしていた。
狩れば高値で売れる猛獣がいるという事だ。
騙されたとはいえ、子供たちを預かった以上、わずかな傷もつけさせない。
それが武士の矜持であり、俺の誇りでもある。
だから絶対に必要な狩りではあるが、子供たちがいる小屋廻りの安全も疎かにはできないから、狩りに全集中することができない。
こんな状態では、獲物を探すのに不利なのだが、この森はよほど豊かで獣の数が多いのか、直ぐに狸に出会った。
なにも考えずに弓を構え矢を射て、一瞬で狸を狩ることができた。
狸は決して美味しい獣ではないが、いや、言葉を飾るのは止めよう。
よく狸と間違われる穴熊ならとても美味しいのだが、本物の狸はとても獣臭い。
だが、あれくらい飢えて子供たちなら、臭いくらいでは食べる事を躊躇わない。
しかし、できれば、美味しい肉を食べさせてやりた。
獣臭い肉は、他の獣を誘うための餌にする事もできる。
それに、狸の毛皮はふいご、太鼓、防寒具に最適で、とても高値で買ってもらえるから、肉を食べなくても狩りたい獲物だ。
でも、命を無駄にはしたくないので、できれば肉も活用したいから、強い獣臭を消すことができる、味噌・ニンニク・山椒・牛蒡・生姜を手に入れたいな。
一瞬でそんな事を思い浮かべ、素早く狩った狸の元に行き、獲物を確保する。
その間も他に狩れる獲物がいないかと四方に気を気張っていると、大きなカラスが視線の端に引っかかった、絶好の獲物だ。
カラスを食べる事を嫌う者が多いが、思い切って食べるととても美味しいのだ。
胸肉は鶏肉とほとんど味も食感も変わらず、とても美味しい。
もも肉はどちらかというと鶏肝に近い味だが、苦手なければ味が濃く美味いのだ。
それに、じっくりと時間をかけて根菜と煮込めば、根菜にカラス肉の出汁が浸み込み、相乗効果でとても美味しくなる。
そう思った時には、すでに弓を構え矢を射てカラスを仕留めていた。
自分でも少々驚くが、名弓と出会えたことで、俺の弓術が格段に上達している。
だから、仲間を殺されて襲いかかってくるカラスの群れにも、全く怯まなかった。
およそ百羽いたと思うが、俺が狩ったカラスの仲間なのだろう。
俺としたら、子供たちを飢えさせないためにはいい獲物である。
百羽全て返り討ちにしてくれる!
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