第4話諦観

 詐欺女神の話は、騙された俺が可愛そうになるくらい忙しいものだった。

 この宇宙の爆発的な拡張の上に、次々と新しい次元が生みだされ、そこでも生命が誕生してしまい、神々が手分けしてお世話をしているそうだ。

 だが神々の能力を超える宇宙と拡大と、次元と生命の増加のため、人間世界のブラック企業さながらの忙しさらしい。


 だが、少し考えて同情心を捨てることにした。

 俺の視点から見れば、どう見ても既存神側の身勝手だと思う。

 自分たちで管理できない次元や世界は、そこで新たに誕生する神に任せればいい。

 それを別次元別世界からやって来て、自分たちに都合のいい次元や世界に管理しようとするのは、既得権益の確保というのでではないだろうか?


「おい、さっさと元の世界に戻せ、他にも適性のある人間はいるだろう。

 こういう事は、自分から望んでくる奴にやらせるべきだぞ」


「本当にうるさいやつね、もう何を言っても無駄よ、もうあんたはそっちの神なの。

 私たちは神々の神、上神になっていて、アンタは現地神になっているの。

 日本に戻りたいのなら、そっちで修業して、上神の能力を身に付けなさいよ」


 詐欺女神のあまりの身勝手な言い分に、頭と心が沸騰してしまった。


「その言い方は、もうお前の力でも、俺を日本に戻せないという事か!」


「……そうよ、だから契約書にも書いていたでしょ。

 現地の生活環境を改善するまでは、日本に戻れないって」


「ちょっと待て、そんな話は聞いていないぞ、二年経ったら帰れるという話だった。

 それを契約書だけ違う事を書いていただと、いや、契約書も全部読んだぞ。

 そんな事絶対に書いていなかったぞ!」


「……行間と余白の所に、神にしか読めない言葉で書いてあるのよ。

 他の神々も同じ契約書を使っているから、私だけがアンタを騙したわけじゃないからね、全ての神々が同じ方法で人間を異世界に送っているんだからね!」


 ああ、もうどうにもならん、神々全てが共犯だとは!

 何をどう言って詐欺女神を糾弾しても、他の神が俺を助けてくれることはない。

 だったら次善の策で、日本に戻るしかない。


「お、こら、詐欺女神、だったらどうやったら日本に戻れる。

 この世界の生活環境を改善するとは、どの程度の文化文明レベルにする事なんだ。

 今度こそ嘘偽りなく正しい条件を教えろ、さもないとどんな手段を使ってでもお前を超える力を身につけて、いずれ殺しに行くからな!」


「分かったわよ、ちゃんと教えるわよ、本当にうるさいやつね」

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