第3話交渉

「俺の力を買ってくれているようだが、全く自覚がないぞ。

 能力やスキルが発現していないんじゃないのか?」


「そんな事はないわよ、ステータスオープンと心に念じたら、獲得した能力やスキルが視界の端に表示されるわよ」


 腹が立って、腹が立って仕方がなかったが、思わず言葉通りにやってしまった。

 これがファンタジー小説や仮想戦記小説好きの性かもしれない。

 異世界で大暴れしたいとか、過去に遡って歴史を変えたい想いはやはりある。

 だけど、騙された事には腹が立つし、直ぐに家に戻りたいとも思う。

 騙されて異世界に送られたからこそ、日本のありがたみがよく分かった。


 だが、視線の端に表示されたの能力やスキルの高さと多彩さに、ちょっとこの世界で無双してみようかという思いも沸いてしまう。

 何とも身勝手な感情に自分自身情けなくなるが、ここでぶれてはいかない。

 女神を糾弾して地球に、家に帰るのだ。

 家に帰ってこの体験をウェブ小説にして残すのだ。


「確かに能力とステータスは表示されたし、能力とステータスも多彩だしレベルも高い気がするが、この世界の平均が分からないから安心できない。

 この世界の生き物の平均的な能力やスキルが、俺の持っている能力やスキルを遥かに超えているかもしれないからな」


「なんて猜疑心が強いのよ、あんたは!

 女神が確約してるんだから、ちょっとは信じなさいよ」


「じゃかましいわ!

 その女神が、俺を騙してこの世界に放り出したんだろうが!

 それで何を信用しろというんだ、大嘘つきが!」


「本当にうるさくて疑い深いやつね、だったらそっちの世界の生き物の平均的な能力と、上限の能力を表にして送ってあげるわよ、そしたら安心できるでしょ」


 そう詐欺女神が言ったと思ったら、直ぐにノートパソコンに情報が写し出された。

 定番のモンスターがずらずらと並ぶが、全て俺の数パーセントしか能力がない。

 普通は最強に位置付けられる龍や竜でさえ、俺の三分の一程度だ。

 だが、それでも、あの女神は絶対に信用できない。


 さっき口にした言葉でも、この世界の事をそっちの世界と言っていた。

 という事は、女神はこの世界に来ていないし、自分の世界だとも思ったいない。

 担当しているだけの世界であって、愛着など全く感じていないのだ。

 少しでも愛着を感じていたら「そっち」ではなく「その」世界と言ったはずだ。

 

「いいや、まだだ、なぜお前が来ない。

 お前が少しでもこの世界に愛着を感じていたのなら、お前自身がこの世界を拠点に定めて、ここから指揮していたはずだぞ。

 お前が愛着を感じていないような世界で働けるか、さっさと俺を日本に帰せ!」


「しかたないでしょ、私も複数の世界を担当させられて忙しいのよ」

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