第2話次元渡り
「まあ、まあ、まあ、まあ、そんなに怒らないでよ、ちょっとした嘘じゃない」
「じゃかましい、どこがちょっとした嘘だ、地球と異世界は全然違うわ!
俺の経験に、異世界で何か教えられるものなんか何もない、さっさと地球に帰せ!
さもないと、女神に騙されたとこの世界で話し回るぞ。
いや、心の中でも念じ続けたら、他の神様にも伝わるじゃないのか?」
「それがどうしたの、そんな事、なんの脅しにも交渉材料にもならないわよ。
貴男はちゃんと私との契約書にサインしているから、私は騙した事にはならないし、その程度の交渉術はこの世界じゃ常識なの。
いえ、生き馬の目を抜くのは地球でも普通の事よ。
貴男のいた日本の平和の方が、極端に非常識なのよ」
「それでも騙した事には違いないだろうが!
俺を騙してこの世界に送って、いったい何になるんだ、何もできないだろうが!」
「そんな事ないわよ、貴男はとても役に立つの、それくらいあなたのいた世界とこの世界には差があるのよ。
だから多くの人にそっちの世界に渡って欲しいのだけど、適正が難しいのよね。
適性がないと、上手く生きて次元を渡れたとしても、次元渡りにはとても大きな副作用があって、著しく体力や知識が劣ってしまうことが多いの」
「こら、待て、ワレ、てめえ、そんな危険、ひと言も説明しなかっただろうが!」
「大丈夫、私だって誘う相手は選んでいるわよ、貴男は次元渡りができる体質よ。
しかも次元を渡るとスキルや能力を得られるという、稀有な体質なのよ。
ねえ、それでどうなの、どんなスキルや能力が得られたの?
ケチケチしないで私に教えなさいよ」
余りの言い方に、怒り心頭の所に暴言を吐かれた心境になった。
怒りのあまりノートパソコンの画面を殴りつけたくなったが、理性を総動員して我慢するしかなかったが、今ここでノートパソコンを失うわけにはいかない。
それに、なんだかんだ言っても、異世界の情報を得るには女神が必要だ。
海外壮年協力隊に参加する準備ができたとメールで送信した途端、訳も分からないまま異世界に転移させられたのだから。
クラっとしたかと思ったら、家の部屋からいきなり大平原に転移させられた。
眼の前には見たこともない獣が悠然と歩いているのだから、一瞬白昼夢を見ているのかと思ったが、冷静に考えたらそんなはずはないのは直ぐわかる。
知らない間に死んでしまったり、意識を失った可能性もないではないが、普通に考えれば、ボランティアの応募に関係しているのは直ぐに分かる。
慌てて周囲を見れば、ノートパソコンをはじめ準備していた物が全てある。
どう考えても何か異常事態が起こっているのは明らかだった。
いや、大好きな異世界転移小説の定番に近い状況だったから、半ば確信してノートパソコンに電源を入れたら、女神が恥ずかしげもなく出てきやがった。
だから思いっきり文句を言ってやったのだが、全然相手にされない。
ここはやり方を変えて、なんとしてでも地球に戻させてやる!
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