異世界壮年協力隊

克全

第1話詐欺師女神

「条件が悪いのによく応募してくれましたね、ありがとうございます」


「いえ、リタイア後の生活資金は何とかなりますから、報酬に関しては特にこだわっていません。

 ただ、日本と同じ生活環境は確保したいのです。

 特に衛生面と食事内容にはこだわってしまいます。

 米や味噌といった日本食にこだわるわけではありませんが、貧しい食事は我慢できないと思うのです。

 それと、できれば、ネット環境は確保していただきたいです。

 僕はスマホが使えないので、ノートパソコンが使える場所がいいです。

 身勝手を申しますが、よろしくお願いします」


「う~ん、それは難しい条件ですね、困りましたね。

 報酬なしというのは助かりますが、衛生面と食事にネット環境ですか。

 衛生面というのは、感染症やトイレなんかの事ですよね」


「はい、昔は汲み取り便所でも平気だったのですが、一度水洗便所を使ってしまうと、できれば二度と汲み取り便所は使いたくないと思ってしまいます」


「派遣先は文化が遅れていますので、貴男が望んでいるような水洗便所はありませんが、貴男の宿泊先と仕事場だけなら水洗便所を設置する事は可能です。

 感染症に関しては、事前に予防接種を受けていただけば大丈夫です」


「それで結構です、別に派遣先で観光したいわけではありませんから、職場と宿泊先の往復で結構です。

 病気も予防接種で防げるのなら問題ありません」


「次の食事環境ですが、穀物と野菜、パンと豆と肉が主な食材になります。

 ただ野菜は、日本と同じようにサラダにすると、お腹に虫が湧く危険があります。

 貧しい人達は穀物粥が主食で、肉とパンが食べられるのはお金持ちだけです。

 ただ給食がありますので、ある程度の食事が確保できると思いますが、貴男の望み通りとは限りませんので、日本から宅配で取り寄せられるようにしましょう。

 日本円で八万五〇〇〇円までは、自由に使っていただいて結構です。

 使わなかった分は報酬として残りますが、それ以上は自己負担になります」


「食費と生活費が頂けるのは有難いですが、現地の輸送環境は大丈夫なのですか?」


「それは安心してください、こちらの拠点からドローンで届けられるようにします」


「そうですか、それなら安心ですね。

 向こうで購入した物を、日本の友人に送る事は許されるのですか?」


「当たり前の事ですが、日本の法律に違反している物はおくれません。

 検疫を受けることになりますが、できるだけ滅菌して送れるようにします。

 ただ送料は自己負担になります」


「それで結構です」


「ノートパソコンの使用ですが、全く問題はありませんが、有線が未発達なのでワイファイ環境になりますので、その心算で準備してください。

 準備資金として、九万円お渡ししますので、準備が整ったら連絡してください」


「ありがとうございます、できるだけ早く準備させていただきます」

 

 俺がバカだった、もっと入念に調べれいれば、騙される事などなかったのだ。

 だが、どこのだれが、女神が現代の日本にいて、人間を騙して異世界に送っているなんて想像するんだ。

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