第213話 アルダムちゃんとウザい仲間たち、解散?

 -----ここまでのあらすじ-----


 世界の命運を掛けてルイードたちが闘っている最中、アルダムは死亡し、レッドヘルム学院副学院長シャクティの手によって蘇生されたら女の子になっちゃってた―――書く暇がなくて間が開いてるせいで何を読まされてるのかわからねぇと思うが、俺も何を書いているのかわからない……気が付いたらこうだった。頭がどうにかなりそうだ。寝ながら書いたとか同人誌読んでたとか(中略)もっと恐ろしいのは、この先どうするのか、だからプロット書いとけってのを今まさに味わってるぜ……。


 -----ここまでのあらすじ終わり-----





「魔界都市カグラザカ?」


 自分の胸をぽよんぽよんと揺らしながらアルダム(♀)は小首をかしげた。


「てか、胸がでかいってのはこんなに重いもんなのか。揺らすと千切れそうで痛いし、大変だったんだな姉御……」


 アルダム(♀)が同情の視線をシルビスに送るが、彼女はノーム種なのでヒュム種とは骨格や筋肉の付き方が異なるので、そこまで苦労は感じていないようだ。


「ち◯ち◯小っさいから女の子だと思われちゃったアルダムちゃんも大変だね……」

「ちっさいんじゃなくて格納してたの!」

「アルダムのアルダムがナイダム……」


 シルビスがぼそっと言ったその一言にその場にいたアルダム以外の全員が「ぶほっ」と吹き出す。


「おめぇらも性転換してもらえよコンニャロー! おっぱい揺れると痛いんだぞ! 下乳に汗かくんだぞ!」


 アルダムがぽよんぽよんと乳を揺らしながらプンスカ怒るが、元が童顔小柄な上に女体化しているのでまったく怖くはない。


「あんたの乳はどうでもいいの。さっきあの公爵魔族サマが言ってた『妻のアンハサと一緒に魔界に来てもらう』って話、どーすんのあんた」

「はぁ。どーもこーもないよ。公爵貴族で魔族で稀人のご指名だし、魔族と人間の友好関係の橋渡しだから断れないってシャクティさんも言ってたから行くさ」

「魔界だよ?」

「魔界でもさ。なんならアンハサを寝取れるチャンスが続くわけだし?」

「あんた女になったのに、まだそんなこと言ってんの???」

「女同士ってのも背徳感があって百合百合ゆりゆりしぃから、またこれが」

「……あんたの性癖がフレキシブルオープンフィールドでよかったわ。じゃあ、連高リーグは出場できないってことね」

「ま、そうなるな」


 アルダムは学生の祭典よりも魔界に興味を持っていた。魔族の頂点がヤチグサ公爵なのだから、アレ以上の猛者はいないだろうという安心感もあるが、魔族というものが知りたくなったのだ。


 ヤチグサ公爵は稀人なので生粋の魔族とはまた違う感性を持っているはずだが、魔族の暮らしや生活環境、嗜好性志向性思考性……そういった「魔族の考え方」を知りたいと思うし、最強を自負するサ・ウザー鳳凰拳の継承者としては「完全実力至上主義」という価値観にも惹かれるのだ。


「てことは……あんたは魔界に行くし、ビランは婚約して【連合国この国】に残る覚悟を決めたって言うし、ルイード一味は二人減るってことかぁ」


 シルビスがため息をつくと、ガラバとシーマがゆっくり手を上げた。


「俺たちも冒険者は引退することに決めてる」

「……は?」

「もう冒険者で食っていける年齢じゃなくなるし、家庭を持つなら地に足をつけて働きたい。冒険に命掛けられるのは独り身の時だけだ」

「え、ちょっとまって? そしたらルイード一味は解散!? みんなで血盟クラン作る約束は!」


 その場にいる全員から「いやそんな約束はしてない」と突っ込み返されたシルビスはがっくりうなだれながらも、みんなに見えない口元には深い笑みを浮かべていた。


『くっくっくっ、これでルイードさんと二人きり。これまでの間はこいつらがいて愛を育めなかったけど、そろそろ私もゴールインってやつじゃあないですかぁ?』


 シルビスから見て、ルイードほど条件が整った結婚相手はなかなかいない。


 おっさんだし見てくれは小汚い冒険者にだが、実はボサボサの前髪をかきあげて小綺麗な格好をさせたら「世界一のイケメン・シブオジ」だとシルビスは知っている。


 なによりルイードは(魔王討伐した報奨金などで)莫大な金を持っている。その財力は国家予算を凌駕すると誰かに聴いたことがある。


 さらには各国の重鎮とも付き合いが深く、なんなら王国首都にはルイード特区と呼ばれる独立自治区を持っているので、下手な王族より格上であることは間違いない。


 なんならルイードがどこかに国を作ってもおかしくないレベルで、強い。その常識外れの強さは「救国の勇者を育てた男」「稀人たちを管理監督する男」という隠された肩書きからも分かる通り、人類最強であるとシルビスは確信している。


『地位あり、金あり、実力ありありで、さらにイケメンでシブオジ。あんな好条件の交配相手、この世のどこにもいないもんね! こいつらがいるとそこはかとなく邪魔者だったから、いなくなって二人きりになるなら丁度いいかもしんない!』


 ルイードとの結婚。これは血盟を作るという夢よりも優先される事柄だ。


 そもそも血盟を作りたいのも血盟員に働かせて自分は不労収益を上げたいからであり、玉の輿に乗れるのであれば血盟やら冒険者なんてものはどうでもいいのだ。


 だが、俯いてツノをぷるぷる震わせて(歓喜して)いるシルビスを見た一同は、どことなくバツが悪そうだ。


 ガラバ『やっぱ俺たちだけが幸せになるってのも……』

 ビラン『確かに姉御だけ置いていくのは心苦しい』

 シーマ『しかし一生共に歩むことなんて出来ないぞ』

 アルダム『出会いと別れが冒険者の矜持ってやつだろ』


 ヒソヒソと一同が会議を始める中、シルビスは脳内のお花畑に幸せの種を植えて、視界一面の花壇を生み出している最中だ。その花畑を眺める白いテラスのある屋敷の庭で、シルビスはメイドに囲まれて「おほほほ」と笑っている―――。


「どうしたシルビス」


 タキシード姿のルイード(イケメンバージョン)が現れてそっと手を差し出してくる。指毛なんか生えていない白く美しい貴族の手だ。


「私、幸せすぎて怖いの。あ・な・た♡」


 ルイードの手を取り、歯が浮いて飛んでいきそうなセリフを言うところまで想像したシルビスは、ヨダレが落ちそうなほどの笑みを浮かべていた。


「そして二人は花畑の中でそっと重なり合って、ぐふふ、ぐふふふ」


 思わず妄想が声に出たあたりで「姉御が悲しみのあまりにヤバイことになった」とみんなから心配されてしまったが、ようやく気を取り直した。


「わかった。ルイードさんには私から伝えるからいいよ。ここで私達シルビスと愉快な仲間たちは解散ね」


 シルビスの言葉に、ガラバ、ビラン、アルダム(♀)、シーマは頷く。


「あんたたちがいなくなると寂しいけど、私はルイードさんと一緒にいつでも冒険者ギルドのいつもの席でウザ絡みしてるから、顔見せに来てよ」

「え、姉御はまだ続けるのか」


 ガラバが驚いたように尋ねる。


「あんたたちと違って私にはこのままでやりたいことあるからね!」

「やりたいことって?」

「ルイードさんを堕として結婚する!」


 シルビスは豊かな胸を迫り出してフンスと鼻息を荒くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る