第177話 エルフとダークエルフと門外不出のウザ拳法
~~~メモでも取ってりゃいいのに、またしても自動更新されている前回の話から執筆を開けてしまって、今何を書いているのかわからなくなった作者の備忘録的あらすじ②~~~
レッドヘルム学院地下に囚われた者たちは続々増えていく。
地下牢から拐われたジョージ・ベラトリクスと中途試験落第者三人。落とし穴の罠に引っかかりカミラという美女に救われたシルビスとガラバ。仮面の魔法使いアラハ・ウィに誘い出されたリュウガ・エリューデンとユーリアン・キトラ。
更にその失踪者たちを探しているアルダムとディーゴ、ビランとシーマ。更にそれらの影で暗躍している謎の女教師やその動向を追うルイード。
仮面の魔法使いアラハ・ウィの狙いとは。校舎地下にうごめく「レッドヘルム一族」は何をしようとしているのか。そしてシャクティが依頼した「学院内で起きている虐めとか様々な問題の解決を取り計らってほしい」は果たされるのか。
~~~あらすじ②おわり~~~
「おい、校舎を壊そうとするな」
アルダムとディーゴの所にビランとシーマが現れた。二人共アルダムとは別働でシルビスとガラバを探している最中だ。
「この下から声がするんだよね~」
アルダムの説明は色々と端折り過ぎだが、長年付き合いのあるビランは「行方不明者はこの下にいる」と解釈した。それくらいの意図を汲めるくらいの付き合いはあるのだ。
それに比べ、同じ「ルイード一味」でありながらイケメン三人衆同士の付き合いには到底及ばない
「私だってガラバとだったら通じあえる」
「なんの話? てかやっぱり地下あるわ~。不自然なくらい下から音がしなくなったから逆に怪しい。認識阻害か遮音の魔法でも掛けたんじゃないのか?」
アルダムは廊下に寝そべって耳をつけている。
「なら、姉御が言っていた秘密の入り口を探―――あれじゃないだろうな」
ビランは言いながら視界に入った扉を指差した。
階段下にあるそれには繊細なレリーフが彫り込まれ、重々しい鋼のような材質で作られている。ただの用具入れにしては豪奢過ぎる。
人ひとりが入れるかどうかという小ささだが、四つん這いなら入ることができそうだし、秘密の地下入り口と言われても不思議なものではない。
「私の出番だな」
それは手のひらサイズの箱だが、展開するとレンチ、ドライバー、カッター、ノコギリ、定規、拡大レンズ、ファイヤースターターなどになるという優れもので、これの販売をしているのも【稀人】なので、異世界の技術が使われているのは間違いない。なんにせよ、探索系冒険者なら必須アイテムと言えるものだ。
「さすが冒険者」
そう感嘆するディーゴは、事前にアルダムから彼の仲間である「ルイード一味」について聞いていたので、ビランとシーマの本来の姿は冒険者だと理解している。
ちなみにディーゴもエルフの国の怪しい秘密道具をいくつか持ち込んでいるが、彼は所持品検査で咎められないように「多次元ポケット」と呼ばれる亜空間収納可能な魔道具を利用して隠して持ち込んでいる。
「ディーゴと言ったか。冒険者なら備えは当然だ」
「そういうものなの?」
「そういうもの、だ」
シーマはディーゴを。ディーゴはシーマを凝視した。
エルフの国の王太子と
実はエルフの国ではダークエルフのことを「国を捨て外界で汚れたからあのように黒くなった元エルフ」だと教えているし、逆にダークエルフ種は「エルフは傲慢で潔癖主義で排他的な選民思想の化け物」だと忌み嫌っている。
だが、今は一時的とは言え協力者同士なので「敵対するような言動は控えよう」という暗黙の了解を目線だけで交わしたのだ。もしも協力の必要がないタイミングで出会っていたら、お互いに侮蔑の言葉を吐き捨てあっていたことだろう。
これほど似て非なるエルフたちだが、元は同じ種族だったらしい。
大陸各地にいる「賢者」と呼ばれる学者たちによれば、エルフ種は
大陸各地にあるダンジョンや古代遺跡は、それら古エルフが残したものだと言われるものが多いし、彼らが残した魔道具や武具の類は現代の技術では再現できないものばかりだ。
しかし、残念なことに古エルフは現存一人として存在していない。
稀人たちの住む異世界に劣らぬほど高度な文明と文化を持っていたとされる彼らが、どうして姿を消したのかは永遠の謎である。
「……鍵穴がない」
扉を調べるシーマは振り返ってアルダム、ビラン、ディーゴにそう言った。
「引っ張る取っ手もないし、押してもスライドさせても動かない。だが、間違いなくこの奥には空洞がある」
「仕方ない。ディーゴ、アレでアレして?」
アルダムが言うアレとは生体装甲のことで、それをまとって扉をぶっ壊せと言っているのだ。
「わかっ「そこでなにをしているのです!」
ディーゴの声をかき消す女の金切り声に全員が振り返る。
そこには副学院長のシャクティが腕組みして立っていた。
そして全員がゾッとする。常に気を張っているビランやアルダムのような三等級冒険者はもちろん、間者として寝ているときでも周囲の気配に敏感なシーマ、そしてエルフ特有の長耳で常人より音を聞き分けることができるディーゴ……この四人が四人とも、シャクティが背後に現れたことに気付かなかったのだ。
副学院長は
「こんな遅くに貴方達は―――ディーゴさんまで一緒とは」
「でたな容疑者!」
アルダムはサ・ウザー鳳凰拳で唯一の「構え」をとりながらシャクティの前に立ちふさがった。
自在拳であるサ・ウザー鳳凰拳には、防御の型である「構え」が一つしか存在しない。それは自分より強大な敵と相見えたときにだけ使用する構えで、使用すれば必ず死ぬが、相手も必ず殺すという技でもある。
「どうして私を相手に天翔十字鳳の構えを取っているのですか。やめなさいアルダム」
シャクティは呆れたように言い、構えの名前を言い当てられたアルダムは驚きのあまりに目玉が落ちそうなほど目を開いている。これは一子相伝の継承者しか知り得ない技名なのだ。
「え、ちょ、どうしてこの技を知ってんの……?」
「知ってますよ。この拳法を人間に授けたのが大天使ウザエルだということも」
「そんな馬鹿な!?」
「確か……今の構えは両手を広げて無抵抗に相手からボコボコにやられ、死んだように思わせるんですよね? そして敵が生死を確認するために近寄ってきたら最後の命を燃やして急所に一撃入れるという、まさに相打ちするための技だったかと。ですが私に言わせれば倒したい敵が近寄ってくれなかったら無駄死にすることになりますし、賭けの要素が強すぎるため技とは言えないのでは? 別名は必死拳でしたか? 使った者が必ず死ぬ拳というのはどうかと思います」
「あーはいはいはい! 長々と門外不出の秘拳の説明をどーもありがとうよ!!」
アルダムは構えを解いた。
「ったく、どこの国も冒険者ギルドの受付統括の女は怖すぎだろ」
「それを当人の前で言うお前もまあまあだがな」
ビランに指摘されてアルダムは慌てて口を手で抑えたがシャクティは気にしていないようだ。
王国のエルフ種カーリー。
帝国の
そして連合国の
どれも絶世の美女でありながらも一筋縄では行かない化け物揃いだという認識は、ビランもアルダムに同意しているらしい。
彼女たちに共通していることは「美しい」ということは勿論だが、どうにも「すべてを見透かされている気がする」ということだろう。
まさかその正体が
「どうして副学院長がここに?」
シーマが冷淡に質問すると、シャクティは「仕方ない」と話を始めた。
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