第12話 ウザ絡みの十八番を取られる
「大丈夫ですよ。ルイードさんは十分ウザいです! 私よりウザったいですから自信を持って絡みましょうよ! ってか冒険者ギルドなんて無駄に自信持った高圧的なやつしかいない所なのに、そんな弱メンタルでどうすんですか!」
シルビスに叱咤激励されたルイードは、やる気の炎に無理やり薪を焚べて動き出した。
新人冒険者たちに絡んでいる三等級のイケメン三人組は、新人たちの肩を突き飛ばしたり「んだこら、その反抗的な目は!」と路地裏のチンピラでもやらないようなウザ絡みをしている。
『んにゃろう、俺の仕事を!』
本来、新人に絡むのはルイードの仕事だ。
東の冒険者ギルドでは、ルイードがウザ絡みするからこそ他の冒険者達が「他人のふり見て我がふり直せ」で「ああいうおっさんにはなりたくないな」と思ってくれる。だから新人や余所者に対して無駄な絡み方をする者はほとんど存在せず、ルイードは反面教師として役立っているのだ。
だが、最近顔を出すようになった余所者がルイード以上にウザ絡みをするようになっては立場がない。それでなくてもシルビスの方が自分よりウザい事に辟易しつつ、ウザ絡みのやる気を折られているというのに、これ以上立つ瀬がなくなるのは勘弁なのだ。
「てめぇら俺様の
いつもの棒読みではないのは沈積した鬱憤を本気でぶつけたからだろう。
「ンだとコラ……」
振り返った三人はルイードを認識して突然意気消沈した。先日「三等級の自分たちでも視認できなかったパンチ」を繰り出したルイードに対してかなりの危機感を持っているようだ。
「あ、あんたかよ」
「別にでかい顔してるわけじゃねぇよ」
「こいつらが邪魔でさ……」
三人三様の言い訳をしているが、言い訳してくるということはビビっているということでもある。ルイードに勝てると息巻くアホは言い訳などせずに殴りかかってくるだろう。
「あ? てめぇらも邪魔で目障りなんだよ。俺様の目の黒いうちにデケェ面はさせね───ん?」
猛烈な殺気を飛ばしながら三人組とルイードの間に割り込んできたのは、先日脳震盪を起こして一時的に記憶喪失になった無休冒険者のアバンだ。
「ルイード。あなたはもうギリギリアウトだよ」
「ああん?」
「僕は何度も忠告したはずだ。他の冒険者へのウザ絡みはやめろ、ってさ」
「いや、おま、今の見てなかったのか? どう見てもこいつらがウザ……」
「問答無用! 僕は正義の代行者【稀人】としてあなたを粛清する!!」
アバンがビシッと指をまっすぐルイードに突きつける。
『はぁ……。帝国に誘拐されかけたっていう痛い目に合っているのに、学習能力のないやつだ……』
アバンには様々なルートから何度も忠告しているのに「自分は稀人だ」と公言して憚らない。むしろ自分は普通の人とは違うという選民意識すら持っているようで、事あるごとに稀人であることを積極的に自己紹介して回っている。
だが、いくら稀人の潜在能力が常軌を逸するほどに高いとは言え、鍛えられていない場合は一般人と変わらない、いや……別の世界とやらがどれだけ平和な所なのかルイードにもわからないが、ほとんどの稀人たちは肉体労働をしていないらしく、こちらの世界の一般人より体力がないと言ってもいい。
アバンは特にそうだ。意思の強い眼差しとイケメンっぷりは本物だが、悲しいことにそこに実力が全く追いついていないのだ。
しかも彼はあまりにも短慮で無鉄砲で独善的だ。まだ十代前半の若さと勢いは羨ましいが、冒険者は慎重でなければ生きていけない。自分の実力を客観的に把握できていない者は、任務中に実力と行動を天秤で測りそこねて命を落とすのがセオリーなのだ。
冒険者という商売は『自分はこの亀裂を飛び越せる跳躍力がある/ない』を瞬時に判断して、実行するか回避するかを決める場面が多々ある。さまに命がけだというのにアバンは自分の実力を過信しまくっているのでどんな亀裂にも挑もうとするだろう。
『貴重な稀人をそんなアホな理由で失ったら王国の損失だからなぁ。育ててやるしかねぇんだよなぁ』
ルイードは若干面倒くさそうな顔をしたが、それはアバンにとって小馬鹿にされたように見えたのだろう。
「おいおっさん! こうなったら僕と決闘しろ!」
「てめぇ、そのセリフはウザ絡みする方が言うもんだろうが!!」
またウザ絡み側の
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