気付くとそこは暗闇だった
「ウルズ・ワンより報告です」
「繋いでくれ」
各種計器を操作出来る程度の最小限の光量を確保された部屋で、私は前線からの報告を受けた。
「報告を。オクレ。」
「本隊上空を高速で通過する高魔力源体を探知、進路からそちらに向かっている者と推定、留意されたし。オクレ。」
「解った。オワリ。」
高魔力源体か…、
「掴めているか?」
「はい、現在進路を此方にマッハ二で移動中です。」
「速いな。対空体制指示。」
「了解。…各員に次ぐ、当基地に推定アンノウンの高魔力源体が上空より接近中、対空体制に移行せよ。繰り替えす…」
来た。
「魔力圧縮をかんそ…」
パチッ。急激な吸気の音を響かせながら彼らは意識を取り戻した。
まるで肺に空気がない様だった感じだ。
…ん?ここは何処だ?
何も見えない、光源となる物が何一つ無いのか、それとも目が見えなくなっているのか。
身体の感覚はある、動きもするな。
状況が掴めない。下手に動かない方が良さそうだ。
なんだ?
風?にしてはおかしい。何かが動いたか?
「だれかいるか!」
他に人が居るのか。
「あー、居るぞ」
彼方此方から声が上がる。これは相当な数が居るぞ。
ボッ、と唐突に黒い光が灯る。
一斉に向けられる視線。前線にて戦闘を行っていたであろう軍人から、後方にて作戦指揮に携わっていたであろう軍人が其処彼処にいる。
軍として行動する為の訓練を受けていた彼らは、この様な理解し得ない状況であっても、パニックを誰も起こさずに状況を判断する為の情報を求めた。
その結果彼らの視線の先に、彼らの周囲に存在するそれに気付く事になった。
中を水中を泳ぐ様に、古代に生きていた様な魚や、同時期に生息していたであろう巨大な外骨格を持つ水棲生物等がいた。
そして、一際異様さを放ちながら存在するのが中空を漂う一人の男。
特段として可笑しな風体では無いが身体が理解した、この人間がここの主だと。
その圧倒される気配の発生源が目の前の人間の容に入っている何かだと。
「ご機嫌よう皆さん。お体の具合は如何でしょうか?」
違和感。
明らかに人では無い存在感を漂わす存在から発せられる、極々普通に此方を気遣う言葉。
違和感でしか無かった。
圧倒的な強者とは、ルク・ディア大陸に於いてはエルフの様に一方的な搾取をするというのが一般的。
そんな考えを持っているここに居る軍人達からすれば、これは異常事態とも取れる行為だった。
「急にこの様な場所に来られて驚かれていることでしょう。
パニックこそ起こされていないようですが、一旦落ち着く為の時間を置きましょうか。
一時間程後に、またここに来ますので、それまでの間に私と話しが出来る体制にして於いて貰えますか?
そこで、状況をお話ししますので。
では、一方的に話してしまいましたがお暇しますね。」
周囲を泳いでいる?魚達と時折戯れながら離れていく人影。
向こうが用意したであろう光源から離れ、見えなくなると周囲から詰まった息を吐き出す音が其処彼処から聞こえてくる。
私もかなり緊張していた様だ。自然と息が漏れてしまった。
おっと、いかんいかん。
「さて、状況が一切掴めないが先方から与えられた時間は一時間だ。
これを有意義に使っていこう。
私は解放戦線東方面軍総司令官のヴァルター・ヴェンク中将だ。
私と同階級の方は居られますか?」
幾分の沈黙が流れる。
「よし、では以降は私の指揮で動いてもらう。異論は?」
再びの沈黙。
「了解と取るぞ。
では、少将各位は私の元へ、それ以外は佐官を中心に百名規模で纏まり、人員の把握を進めてくれ。
また。東方面司令室に詰めていた者は全員私の元に来る様に、以上、行動開始!」
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