戦争で起きた不思議な話

 戦争、それは国と国とがそれぞれの利の為に実力行使を行う行為、または利を得る為に動く他国から身を守る為の行為でもある。

 ルク・ディア戦役と呼ばれる戦争は、狩る者と狩られる者の闘いであった。

 狩られる者達、ヒューマン・ドワーフ・ビーストマンによる連合と、エルフの国家との戦争だ。

 このルク・ディア大陸で起こった争いで最も規模が多く長く続いた戦争には様々な話しがつきまとう。

 それは戦争に勝つ為の常軌を逸した研究開発。これにより生み出された数々の発明。

 人を湯水の如く消費する事に対する忌避感による民心の変化。それに伴う嫌戦活動。

 永きに渡る戦争で、前線で戦う者達の心は荒んでいく。

 それでもと、奴隷狩りなどと言う巫山戯た事を止めさせる為に当時の戦士達は戦い散っていった。


 ヒューマンの寿命は五十年、ビーストマンの寿命も五十年。

 短命種と呼ばれる彼らは時の流れと共に戦争の傷を着実に癒やしていった。

 ドワーフの寿命四百年、エルフの寿命一千年。

 長命種と呼ばれる彼らは時の流れと共に国としては復興していたが、その心に当時の事を思い残している。


 種族・国家により様々な物事を抱え込み、それでも奴隷解放と言う偉業を為し得た反エルフ連合勝利の裏側では様々な出来事が起こった。

 戦後数百年経とうとも解明されない不可思議な現象と共に。

 そんな不可思議な現象の中には、彼らが意識しない事柄も含まれている。

 戦争は悲惨だ、死体がバラバラに為る程の衝撃を受け死亡する兵士もいる。

 そんな兵士の死体が何者かに因って持ち出されていた。

 誰にも気付かれない様に少しずつ少しずつ、気付かれない様な惨事の渦中であった場所から持ち出されていく。

 ヒューマンも、ビーストマンも、ドワーフも、エルフも、誰からも気付かれずに、地下の世界へと持ち出されていく。

 それはまるで冥界へと誘われる死した魂の様に。


 ルク・ディア大陸南西部、森田が生み出したギブイン達の楽園たる地下世界。

 そこでは、今日も幸せに過ごす人影が過ごしていた。

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