第二項 戦争行脚

二十年後

 森田が生み出したギブイン達はこの二十年の間に地下世界の有り様を大きく変えた。

 地中の浅いところを中心に反映していた元いた生物達の殆どは、森田の手に因りギブインへとその存在を変えられていき、それ以外の生物達とは隔絶した存在へとなっていった。

 負かし勝つという負素の性質をギブインは須く持っている。

 それ故に既存の生物ではどう足掻いたところで勝てる要素が皆無であるからだ。

 そんな中森田は一つの指示をギブインへとする。


 過剰な搾取を行わない事。


 圧倒的な能力を保有するギブインだけの世界へとならない為の指示。

 詰まるところ世界が狭くなり、つまらないものとなってしまわないようにとの思惑から来る指示であった。


 二十年という月日の流れの中で地下世界は発展した。

 ルク・ディア大陸南西部に連なる山脈の各山のほぼ全てにミチズにより地下道が設けられ、縦横無尽と評するに十分な移動経路を確保するに至っていた。

 さらに、そんな山々を繋ぐ為の巨大な道が太さ十m・長さ二百程までに成長させたミチズにより完成しており、各山で生活しているギブイン達を滞りなく移動させる事に一役も二役も買っていた。

 飛び、泳ぎ、歩き、這いずる者共が闊歩するそれが今の地下世界であった。


 そんな地下世界であるが、森田の姿は何処にも無い。

 森田はこの山脈周辺以外の場所へと赴いていた。

 そう、この大陸に住まう知的生命種の元へと。

 今まさに戦乱の渦中となっている奴隷解放戦線へと。

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