第5話 俺と麻里亜さん〜家で…〜
「とりあえずソファーに座ってて。お酒を用意するから」
「わかりました」
俺は今、麻里亜さんが住んでいるマンションに来ている。
部屋は白と黒、薄ピンクを中心としたカーテンや家具、お洒落なインテリアなどが置かれており、可愛らしく男心をくすぐる作りになっている。
さらに壁にはコルクボードに写真を貼って飾ってあったり(チラッとみた感じ学生時代の?)、部屋の隅には観葉植物もしっかり置いてあったりして、必要な家具以外何も置いていない俺とは正反対である。
とはいっても、姉の亜美や幼馴染みの玲香の部屋に上がったこともあるので、こういう女の子らしい部屋に慣れてないわけではない。
ただ…
(彼女の部屋だもんなぁ。しかもこれからお酒飲むし、これってそーいう事する流れ…だよな?)
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イタリア料理店を出たあとだった。
姉がわざとらしく「急用を思いだしたから、先帰るね!ばいばい」と言って小走りに帰っていくと、俺と麻里亜さん2人になった。
「えーと、俺たちもとりあえず今日は解散しますか」
俺は麻里亜さんの様子を伺う。
「えっ?…そうだね。…うん、帰ろっか」
何やら不服そうな麻里亜さん。
こういう時って、どうすれば良いんだ?
「あの…麻里亜さんは、早く帰らなくても大丈夫なんですか?明日も仕事ですよね?」
「あぁ、うん。仕事だけど、明日は夜勤なんだ…」
チラッとこちらを上目遣いで見てくる麻里亜さん。
当たり前だけど、めちゃくちゃ可愛い。
「…そっか。俺は今夏休みで毎日暇なんで…。じゃあ、この後もう一件どっかいきますか?といっても、お洒落なバーとか俺知らないしお金もあんまりないんで、居酒屋とかになっちゃいますけど笑」
思い切って誘ってみる。
こういうところでバチっと小洒落たバーなんかに連れていけない自分が情けないが、こればっかりは仕方ない。それにまだ俺、二十歳になって二か月くらいだし。
「そんなこと気にしなくて良いよ笑 私もバーとかあんまり知らないし…。じゃあさ、もし良かったら…うちに来ない?家でビールでも飲もうよ!付き合った記念に宅飲み。どう?」
「家ですか?」
急な展開に戸惑う俺。
(いや、家ってつまり…その…)
20歳の大学生。どうしてもそういう事に意識がいってしまう。
「家っていっても、私が今1人で住んでるマンションだけどね。だから家族とかは居ないよ。…あ、もしかしてエッチなこと考えてる?笑」
俺の顔を下から覗き込む麻里亜さん。
その顔がヤケに色っぽくて、俺の心臓と股間が脈を打つ。
「すみません…。俺、本当にこういうの慣れてないんで、家って言われたらそういう事しか考えれなくて」
どうせ隠しても無駄だ。
これから付き合っていくわけだし、自分の感情とか思いは素直に伝えておいた方が良い気がする。
その方が、草加裕太
オレ
という人間を知ってもらえる気がする。
そうだ。それが俺の価値観だ。
「俺今まで女性と付き合った事ないから、もちろん素人童貞なんですけど…。いわゆるプロって呼ばれる人達ともそういうのした事なくて。だから完全なる童貞っていうか…。いや、行きたい気持ちはもちろんあったんですけど、恥ずかしくてなかなか行けないっていうか…。だから、自分ですることが多いんですけど。実は昨日もその…姉から麻里亜さんの写真を貰って、自分で2回ほどヤッてて…」
そこまで言って、ふと我に帰る。
(あれ?俺は何を言ってんだろ?)
目の前に居る麻里亜さんは、呆気にとられた表情でこちらを見ている。
「あ、すみません。ここまで言うつもりじゃなくて、ただ何となく俺を知って貰おうと思ったらつい…」
麻里亜さんがふふっと笑う。
「なんかよくわからないけど、裕太くんが完全なる童貞のむっつりスケベで、私をオカズに昨日2回したって事はよくわかったよ笑」
(ほとんど全部わかってるじゃねーか。改めて彼女の口から聞くとくそ恥ずかしい…。
てか、真夏の夜空の真下でこんな事を言う俺、冷静にキモくないか?)
辺りを見渡す。幸い、人気は少なくて俺のとんでも発言は通行人には聞かれていないようだ。
夜風が吹いていて比較的涼しいはずだが、俺の背中にはじんわりと変な汗が流れている。
(今ので麻里亜さんに嫌われてないかな?)
そんな心配をしていると、麻里亜さんが俺の手を握る。
「え?」
「とりあえず行こ。エッチな裕太くん笑」
麻里亜さんは俺の手を引っ張って歩き出した。
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「レモンサワーなんだけど、飲める?」
俺がソファーに腰掛けてこの後の事を考えていると、その俺の隣に腰を下ろした麻里亜さんが、目の前のテーブルに置かれた氷の入ったグラスにレモンサワーを注ぎながら、「一応」といった感じで聞いてくる。
「飲めます。そこまで強くないお酒なら大体は」
「よかった。じゃあ乾杯しよっか」
2つのグラスにレモンサワーが注ぎ込まれると、それぞれがグラスを手にする。
「じゃあ、お付き合いを始めた記念日ということで…乾杯!」
「乾杯!」
俺の挨拶(?)に応える形で、麻里亜さんも声を上げると、俺たちはグラスを軽く合わせる。
そしてレモンサワーを口に入れると、程よい炭酸が喉を通過する。
麻里亜さんも美味しそうに飲んでいる。
(しかしこのレモンサワー、美味しいな。今度買おうかな?)
しばらく2人で談笑しながら飲んで、ふとそんな事を考えていると麻里亜さんからまた声が掛かる。
「そういえば、裕太くんは酔うとどうなるタイプなの?」
アルコールが回ったのか、少しだけ舌足らずになった麻里亜さん。
そんな様子も当然可愛らしい。
「そうですね…。あんまり変わらないかなぁ。特別明るくなったり、涙脆くなったりとかはしないですね。そうなるまで飲んでないだけかもしれないですけど笑 麻里亜さんはどうなんですか?」
「そうなんだ。私はそうだなぁ…。ねぇ、祐太くんは酔った私がどうなったら嬉しい?笑」
質問を質問で返された。
(どうなったら嬉しいって…)
「そうですね…。やっぱり女の子だったら酔って甘えっぽくなるとか可愛いですよね。でも明るく笑い上戸な感じも良いなぁ。いや、涙もろくなるのもなかなか良いのかなぁ…」
「ちょっと欲張りすぎじゃない?笑」
「あぁ、すみません笑 いろんな麻里亜さんを想像したら、全部魅力的で」
どんな麻里亜さんをイメージしても可愛くて選べないのだから、仕方ない。
「もぉ…そんな事言っちゃって。ちょっと祐太くん、グラス置いて」
「え?あ、はい」
俺が言われた通りにテーブルにグラスを置くと、麻里亜さんもグラスを置く。
「裕太くんさぁ…なんで今日レモンサワーにしたか、わかる?」
「え?これしかなかったからじゃ…」
「違うよ」
麻里亜さんは俺の両頬を自分の両手で挟むと、ぐっと俺に近づいてきて…。
チュッ
「ちょっと?麻里亜さん」
俺が顔を離すと、麻里亜さんが頬を赤らめて俺の方を見ている。
アルコールのせいなのか、キスのせいなのかはわからない。
「裕太くん、ファーストキス…でしょ?」
「そうですけど…」
「良かった。だから、レモンの味にしてあげようと思って笑」
(ファーストキスはレモンの味ってやつか…)
「なんかよく言うでしょ?だから、折角だし良いかなぁって…」
そんな事を言いながら照れ臭そうに笑う麻里亜さんが、死ぬほど可愛くて愛おしくて…
「麻里亜さん…」
俺は麻里亜さんの背中に手を回し強く抱き寄せると、今度は自分からキスをする。
さっきより深く激しく、舌を絡めながら…。
いつか俺と幼馴染みの恋愛価値観は交わっていく 神の名はペルシア @nanaco63
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