第4話 俺と姉と麻里亜さん〜告白〜
俺たちはお洒落なイタリア料理店でそこそこ高そうなコース料理を食べ終え、コーヒーを飲んでいる。
コース料理を食べながらの談笑は、姉がうまく繋ぎ役になってくれたこともあり3人で楽しく話すことができた。ただ、そこまで深い話にはなっていない。
座席としては俺の目の前に麻里亜さんが座っていて、その麻里亜さんの右隣に姉が座っている。
「…で、裕太君って本当に彼女居ないの?」
麻里亜さんは『ここからが本題』と言わんばかりに、コーヒーを一口飲んでイスに座り直し、俺の方に真っ直ぐな視線を向ける。
「居ないですね。今まで居たこともありません」
俺は今後の展開への緊張と期待、そして女性の前で経験のない事を改めて明かす少しばかりの恥ずかしさを感じながら答える。
「えー、こんなカッコいいのにー。見る目ないよ周りの女子達は笑 ねぇ、亜美ちゃん?」
「どうだろ…弟だから男としての評価をしたことはないけど、カッコいいって事はないかな笑 まぁ、彼女が出来ないほどダメな男だとも思わないけど」
姉のなんとも言えない評価に、俺は苦笑いする。
「いやー、絶対カッコいいって。亜美ちゃんも見る目ないよ。ま、私としては色々とラッキーだけど」
(何がラッキーなんだ?やっぱり昨日姉ちゃんが言ってたように、童貞に価値を見出すタイプの人なのか?)
俺がそんなことを思っていると、麻里亜さんが続ける。
「ねぇ、裕太くんは年上のオンナの人とかどう?」
キタぞー。これってつまり、そういうことだよな?
だとしたら、俺の答えはただひとつ。
「魅力的だと思います。どちらかというと俺、年上好きなんで」
というのは嘘。
本当は、小さいときから姉にからかわれてきた影響で年下好きだ。年上も別に嫌いではないけど。
「そうなの?へー、そっかそっか。ちゃんと年上の魅力がわかるんだね。偉いぞー裕太くん笑」
ホッとしたという安堵感を隠すように、麻里亜さんが姉のようにからかってくる。
そんな姉の方をチラッと見ると、またもやニヤニヤした表情でこちらを見ている。
それもそのはず。俺が本当は年下好きなの、知ってるからな。
「年上好きなら話は早いね。裕太くん、私と付き合おう?」
とんでもなくストレートな告白をさらっと、しかも姉の居る前でする麻里亜さん。
綺麗で可愛らしい顔をニコッとしている。
「ええっと……俺なんかで良いんですか?」
「うん。今日はじめてあったけど、私は裕太くんが好きみたい。もし裕太くんがよければ、付き合ってください。軽い女みたいでイヤ…かな?」
ニコっとしていた顔を崩して、今度は心配そうな顔をする麻里亜さん。
姉は自分の出る幕じゃないと察したのか、全く動かずまるで空気のようにこの状況をみつめている。
ーさぁ、どうする草加裕太
おれ
ー
これもおそらく、よくあるラブコメなら「いや、今日出会ったばかりですし。まずは友達からでお互いをよく知ってから〜」といった感じになるだろう。
実際、倫理的にもその方が正しいはずだ。
しかし現実はどうだ?
こんな芸能人顔負けの美人お姉さんに告白されて、童貞大学生がそんな倫理的な正しさなんかを優先できるのか?
いいや、できない。
俺は…
「俺で良ければ、宜しくお願いします」
[今の俺には]これが正しいはずだ。
「ほんとに…?ほんとに良いの?今日会ったばっかりだけど!」
麻里亜さんが、若干の興奮を隠しきれない様子で聞いてくる。
「はい。お付き合いしながら、お互いのことを知っていければ良いかな、と」
そう。何も友達からじゃないと相手のことを知れないわけじゃない。恋人として過ごしながら、お互いの事を理解し合っていく関係性があっても良いじゃないか。
「そうだね…。どうしよ、凄い嬉しい。亜美ちゃんに写真見せてもらったときから、一目惚れしてたから…。これから宜しくお願いします」
1回ゆっくり息を吐いたかと思うと、姿勢を正してぺこりと一礼し、ニコっとした最高にかわいい笑顔を俺に向けてくる麻里亜さん。
「こちらこそ。…色々と経験がないので、至らない部分もたくさんあると思うんですけど、宜しくお願いします」
「大丈夫よ。その辺は、お姉さんがしっかりと教えてあげるから」
色気たっぷりに言ってくる麻里亜さんに、ドキっとする俺。
「はいはーい。2人ともおめでとう…で良いのよね?」
「全く、私のこと忘れてるんじゃないの?私も彼氏欲しくなるじゃん」などと呟いて、麻里亜さんの方をみる姉。
「麻里亜、裕太は私の大事な弟だから宜しくね?」
「うん!大事に大事に愛でていきます!」
(その言い方はどうなんだ?)
そして今度は俺の方を見る。
「裕太、麻里亜は私の大事な親友だから。しっかりするのよ?」
「わかった。ちゃんと大切にします」
「よし!2人とも仲良くね。あ、それと付き合ってても、ちゃんと私のことも構ってよね?笑」
そっか。
今日いちばん大変だったのは、俺でも麻里亜さんでもなく姉ちゃんなんだ。
まずは出会いのセッティングをしてくれて、お店に来てからは俺たち2人が良い空気になるように上手く繋いでくれて、盛り上げてくれて、告白の時は邪魔にならないようにしてくれて…。
「ありがとう、姉ちゃん」
心から溢れ出るような言葉。
「ん?どうしたの?別にお礼に言われるようなことは何もしてないんだけど…。でも、どう致しまして」
姉は俺に向けてフッと笑うと、麻里亜さんに話しかける。
「そうだ麻里亜。デートとかで裕太の恥ずかしいエピソードとか写真が出てきたら私に送ってね!今後からかう時のネタになるから笑」
この姉ちゃんだけは本当に…
くそー。
やっぱり感謝するんじゃなかったかな…。
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