第31話 ジギーの願い


 オレ達は村のなかで最も大きな武家屋敷に通された。途中和服姿の小さな子供達が手を振って来た。

 まだ5歳くらいかな?中には動物の耳と尻尾が生えている子もいる。聖教国では奴隷扱いの亜人ってやつか、なんか昔の日本はきっとこんな感じだったのかなぁと思わせられる。建物もそうなんだけど村人たちも……縁側でゆっくりお茶でも飲みたくなるそんなリラックス出来る空間だなぁと思った。


 武家屋敷の入口で靴を脱いで広い部屋に通された


「どうぞこちらへ」


 女中さん??

 図書館にでもいそうな黒髪おかっぱ眼鏡でなかなかの美人だけど耳と尻尾があったぞ?


 おかっぱ眼鏡の女中さんはお辞儀をして一歩引いて襖をしめた。


「マサ坊、なんや元の世界に帰って来たような錯覚せえへんか」


「確かにそうだね」


「2人がいた世界はこんな雰囲気なのか?」


 数分後、ジギーさんがキセルをくわえながら入って来た。


「どうだこの村はまるで昔の日本みたいだろ」


「なんや昔よう行った京都を思い出したわ」



 オレは座布団の上にちょこんと座り……


「そーですよね。驚きましたよ一体どうやって建てたんですか」


「ガイコツ供を召喚して作らせた」


「えっ?」


「アタシ実は死霊術士ネクロマンサーのクラスなんだわ、意外だろハハハハっ」


「さっきの勇者たちに使ってた技を見て思ったんだけどジギーさんは何か武道というか護身術やってますよね?」


「おー、実はうちは武道場も兼ねててな、アタシも含めて老若男女ここではみんななにかしら武道の修行をさせているんだよ」


「何でや?」


「この子達は奴隷や戦争孤児だったんだ。

 親が殺され行き場もなく、酷い子は虐待まで受けていて誰かに助けを求めても誰も手を差し伸べやしなかった、だから今度は自分達で身を守れるようにとアタシが前の人生で学んだ武道の稽古をさせているんだ」


「実はワイもこの世界に転移してすぐ兵士供に馬車に乗せられて奴隷商人に売り飛ばされそうになったんや! いい稼ぎになるとかほざいとった。ホンマにアイツら人の人生をなんやと思ってるんや」


「確かにこの世界では奴隷ビジネスは儲かると思うよ。だってその辺の村からさらってくれば元金ゼロで利益が出るんだよ。でもよ人々が悲しむような事して子供を泣かせて儲けるよりも子供を喜ばせて儲かる方が良くねえかい? 里の外の棚田や畑は見たか??」


 ふと外を見ると庭で小さい子供たちとニーヤが

 ボールのような物で遊んでいる。

 もしかしてニーヤって子供好きなのかな?

 

「そういえば水車や小屋、畑があったな」


「正直この世界の貧しい子供達はろくな教育を受けていないんだよ………

 だからアタシがここに昔の日本に存在した寺子屋のような物を作りたいと思うんだ。子供達はここで学び自分で考え、何かみんなの暮らしに役立つモノを想像し、いつかそれを生み出せるようになって欲しい……というのがアタシの願いかな」


「そらまあええ話なんやろうけどもそんなん一体誰が教えんねや?」


「さっきいたろおかっぱ眼鏡女中が勉強を教えてるんだよ。子供達からの評判も良いし、小さい子の扱いも上手だしねーっ」

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