第30話 忍びの里へ



 冒険者ギルドに行くと受付のセラという女性が迎えてくれた。


「冒険者ギルドへようこそ、今日はどういった御用件でしょうか?」


 とりあえず身分証が無いヨッシーの冒険者ギルド登録だけでもしておくか


「なあ、もしかしてアンタ達ってさっき聖教国の奴らに因縁つけられていた人達だよな、アンタらはギルバート卿の知り合いなのかい?」


 そこへ冒険者の猫耳の腹出たオッさんがビール片手にフラフラと近づいて来て……

———ていうか昼間に何飲んでんだよ!


「むむ、一体誰の事を言っているのだ?」


「オレらその人知らねえんだけど……」


「ホラッ、アンタらを救った御仁がいるだろうが、その方がジョージア・ギルバート子爵だよ」


 ジギーさんが?

 何……あの人って子爵? 貴族なの?


「おう、さっきの路上での活躍は凄かったなあ、ギルバート卿が聖教国の勇者をコテンパンにのしてたぞ」


 ドワーフのオッサンが強引にオレ達の話に入ってくると受付のセラも興味深々な表情で話に食いついてきた。


「ちょっとちょっと何よそれーっ

 ジギーさんがあの聖教国のボンクラ勇者供を

 ぶちのめしたって??

 ざまあーみろ! アタシさぁアイツらのあのふんぞり返ってる態度が大っ嫌いなのよね!! 元Sランク冒険者だったジギーさんに勝てる訳ないのにアイツらバカなんじゃないのー」


 オイオイ何だそりゃ?

 それにしても元Sランク冒険者って?

 つーかヨッシーの奴、ドワーフや犬耳の腹出たオッさんとビールジャッキで乾杯なんかしてやがるし!

 ホント誰とでも打ち解けれるってのはある意味で

 才能だな………オレにはちょっとムリだな(笑)



 ヨッシーの冒険者ギルドの登録が終わったので

 さっきの場所へと戻るとジギーさんが近くにある屋台のおばちゃんと世間話をしていた。



「おまたせしましたジギーさん」


「んじゃ行きますかね。転移魔法ポータル



 一瞬で景色が変わった。

 オレ達の周りには水田やいくつかの畑、水路があって水車までクルクル回ってる。


「ここがアタシの領地である忍びの里だよ」


「なかなか綺麗な場所ですニャ」


 うわぁ! すげえな自給自足生活してんじゃん

 なんつーかまるで昔の日本の田舎みたいだな。


「なんやのどかやなあ」


「うむ、これは良い雰囲気の村だ」


 外を木の堀が囲っており入口に門番が座っていた

 下を向いているので遠くからは気づかなかったけど

 ガイコツだよ。ガイコツが門番だよ


「よお、いつもご苦労な!」


 入口から少し歩いた所で小さい子供達が遊んでいた。ジギーさんに気付くとわーっ!と騒ぎながら

 こっちに駆け寄って来た。みんな簡素な着物姿で草履をはいている。


「お館さまが帰ってきたー!」


「おう、みんないい子にしてたか?」


「はーい」


 子供たちが手を上げて来たのでジギーさんも手を挙げ子供達とハイタッチし出した。


「ジギーさん、よろしくお願いしますね」


 ジギーさんがここの代表らしいのでオレはあらためて軽く会釈をしといた。


「いいよそんなの

 つーかお前日本人だろその挨拶の仕方は」


「えっそうだけどなんで分かったの??」


「実はあたしは前の人生がオーストラリア人だったんだ。日本が好きで京都や大阪へは何度かホームステイに行ったりしてよく遊びにいったよ」


「前の人生ってのは??」


「アタシは転生者なんだよ

 こっちで1度生まれ変わって赤ん坊からやりなおしてんだ。別に気にしなくて良いよ、まぁなんだアタシ達はこっちでは稀人同士だし仲良くしょうぜ!」


 子供たちは柿を食べてる途中だったのか口の中をムシャムシャしている。

 つーかその柿の木は一体どこから持ち込んだんだろう?


「良かったら柿食うか? うちの木でなったヤツなんだけど甘くて美味しいんだこれが」


「どっどうもお気遣いなく」


 皆には悪いけどお断りしといた。

 皆の方をチラッと見るとやっぱり欲しそうにしていた。そりゃそうだよな今日は色々あってずっと食べてないもんなーっ

 そんなみんなを見かねて小さな子供たちがオレ達に近づいて来た。


「柿アーン」


「頂きますニャ」


「うむ」


 クリフさんやニーヤが嬉しそうに柿を頬張りだし、しっかりと御馳走になって満足していた。


 そして小さな子供達が不思議そうな目でオレを見て指差してきた。


「このお兄ちゃんなんでお館様の植えた柿食べないの好き嫌いなの??美味しいのに〜」


 ジギーはニコッと小さな子供達に微笑んだ。


「違う違う初めてなんで遠慮してるんだみんな最初はそんなもんさ、お前らと一緒だ〜」


「一緒じゃ無いよ!」





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