第18話 勇者召喚の巻き添えで来てしまった人達
キリス爺さんがようやく目を覚ました。
アンリの顔を見るや足を止め身をふるわせる。彼の瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
「あぁっ古の魔女さま〜!お懐かしい、やはりあの時の出来事は夢じゃなかったのですね。」
イヤイヤ夢じゃ困るし!
つーか感動しすぎ!
「おや、お主に見覚えがあるぞ」
爺さんは幼い少女の前でひざまづき頭を下げる
「ハイ、45年ほど前、迷子になった時に保護して頂きましたキリスです」
「おう、懐かしいのう!45年か? ほほっもう
そんなに経つのかえ、ワシャまだ10年前くらいかと思うとったわい」
……マジかよこのちびっ子が古の魔女?
「そんな事よりお茶にせんか、特別にワシの菓子を振る舞ってやろう」
オレは入れてもらったお茶を飲んでみる。
美味い……しかもなんだろうこれまで旅の疲労が取れたような気がする。周りを見るとみんなが同じような反応をしている。
「それは薬茶じゃ!どうじゃお主ら疲れが取れるじゃろう」
いいなこれ作り方を教わりてえ!
「ん、誰か来たぞい?」
その男達は突然やって来てドアを強く叩き、大声で叫んだ。
「怪我人がおるんや! ちょっと見てくれへんか」
あまりに大きな声だったのでオレはたまらず耳を塞いだ。
「うわ声うっせー、何だよ一体?」
「ヤレヤレ、仕方があるまいの、マサ坊よどうやら彼らも家に招き入れる必要があるようじゃぞ」
アンリはめんどくさそうにドアを開け、彼らを招き入れた。
「ワイが背負うとる彼のこと頼むわ」
関西弁の男が怪我をしている兵士を下ろすとオレとクリフさんでベッドへと運び込んだ。
関西弁の男たちは出されたお茶を飲んでホッと一息ついた。
怪我人を運び終え、椅子に座り2人を一瞥する。
つーか思いっきりオレと同じ日本人じゃん
何で関西弁なの? お笑い芸人?
「2人とも日本人の方ですよね」
オレは日本語で言った。
「ん?日本語」
「えっほんならアンタも巻き添えで来たん?」
巻き添えって何だよ?
「何やら事情を聞く必要がありそうじゃの
そっちの青年の手枷の理由ものう?」
彼らは聖教国で勇者召喚の巻き添えでこちらの世界に連れてこられたのに勇者の称号や戦闘スキルが無いため、奴隷市場へと連れて行かれそうになった所、先程の兵士に救われ、ここまで逃亡してきたんだとか
それにしてもいきなり奴隷市場に連れて行かれるってどんな状況だよ。やっぱりこの世界って人の命スッゲー軽くないか?
「んでお主らはこれからどうするんじゃ?」
「オレらに行く所なんかないッスよ」
「それだったらここから西へ2日ほど山道を歩くとようやくたどり着く街道沿いにオレの知り合いが領主をやっている村がある。そこで領民を募集しているので行ってみたらどうだ。オレの紹介だといえば追い返される事はまず無いだろうし」
「ふむ、ならばワシが今からその村に行ってやってもよいぞ」
「えっ馬車で数日かかる道のりだよ」
「ほうか、ならコレをお主にくれてやろう。
転移の杖という魔法具じゃ
それを使えば今すぐにその村へ行けるぞ」
マジで今すぐに行くか
「それじゃあとりあえず向こうに事情を説明したいのでちょっと待っていてくれる?」
「ほんならワイも一緒に行くわ。」
「うむ、私もついて行こう」
クリフさん、関西弁の男とともに転移の杖を使って村へと移動する。
瞬間、景色が変わった。ドニ村長の家の前に……
すごいぞ数日かかった道のりを一瞬で来れた。
「うわ! ホンマにテレポートしたんやな」
「ふむ、まるで御伽話に登場する転移魔法だ」
コンコンっとドアをノックするとドニの奥さんが
出て来てくれた。
オレ達はすぐに台所へと通された。
奥さんに勧められオレ達が椅子に座るとすぐにお茶を持って来てくれた。
「ありがとうございます」
「お気遣いすんません」
オレ達は入れてもらったお茶を飲んでみる。
やっぱ前にも飲んだうすいお茶だなーっ!
関西弁の人を見るとやっぱ微妙な反応してんなー
「アレ、そういえばマルグリットさんは?」
「数日前に王都へと向かわれました」
マルグリットさんなのだが彼女はこのあいだの野盗討伐の功績を称えられ、すでに騎士爵から準男爵へと陞爵したそうだ。
「マサキさん!」
村長とセヴランが帰って来た。
「マサキさんの活躍、彼らから聞きましたよ」
彼ら? ああ、野盗どもに捕まっていた人達か?
どうやら彼らはよく働いてくれているらしく村が随分と活気付いてきたんだとか?
「なんやどういう話なん?」
「イヤ実はですね———」
村長の話を聞いた関西弁の男が満面の笑みを浮かべてオレたちの事をジロジロ見てくる。
若い男3人女1人を追加でお願いしたいというと喜んで受け入れてくれた。
「すまんけど2人にしてくれへんか?」
「どういうこと?……」
「村長の話を聞いて決めた。ワイもアンタらに着いていく事にするで!
ワイは
よくわからんが仲間がまた1人増えたようだ。
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