第12話 決闘


 集合場所へと集まると中央の天幕にいるパトリスさんとケシャ、騎士団長、あと冒険者の人々が何やら話し合っていた。オレ達はその部屋にある討伐隊名簿に到着のサインをして天幕を出る。


 テントへ戻ろうとするオレ達をはばむように体格のいい冒険者のオッさんたちが立ち塞がってきた。


「オイ、お前みたいなのもこの戦いに参加するのか? あぁん」


「ええ、そうですが何か?」


「だったら先輩冒険者のオレ様に参加費を払ってもらわねえとな」


「C級冒険者のセルジュさんがオマエに冒険者の指導をしてやるって言ってるんだよ。

 それがわかんねえのか? バカなのか?」


 取り巻きの1人が胸ぐらを掴んできたので肘関節を決めて下に絞ると取り巻きは手首と肘の痛みで膝を付いた。


「い…痛ええええっ!」


「テメエこのやろう!」


 もう1人の取り巻きが殴りかかって来たので身体の向きを変えて避け足払いをかけるとそのまま勢いよく転んだ。


 ガキの頃、両親に無理やり通わされた合気道だが

 まさかこんなところで役に立つなんてな!


「テメェエエ!調子にのりやがって〜」


 セルジュは大剣をオレに突き立てる。


「待て下郎、貴様の相手は私がしてやろう」


 マルグリットさんがオレを庇うように前に立ち、

 セルジュを睨みつける。


「ああぁんオレ様が下郎だと〜っ!」


「そうだ。自分よりも体格の劣る相手に3人がかりで突っかかるなどという騎士道精神のかけらもない貴様らなどこの私からすれば下郎以外の何者でもない。その腐った性根を私が叩き直してやろう! さあかかって来るがいい」


「何だと〜っ!

 お……女〜っ決闘だ。ピーピー泣き喚きながら

 後悔させてやるぜ!」


 えーっ!

マルグリットさん戦う気かよ?


 スッとレイピアを構えるマルグリットさん……何というか絵に描いたような美しい構えだ。


「うおおぉぉぉっ!」


 距離を詰め、まるで竜巻のように大剣を振り回すセルジュだった。

 2人の戦いを見ていたほかの冒険者達や協力者から、同時に悲鳴が漏れた。どうやらセルジュの振り回す大剣が直撃すると思ったらしい。


 だが、彼らの予想は大外れだった。


 マルグリットさんはそれを全てかわした。

 突然、セルジュの足下に矢が突き刺さった。

 一瞬スキが生まれた事で彼女はセルジュの大剣を蹴り上げ、彼の喉元にレイピアを突き立てた。


「チェックメイトだ。たとえどのような状況であろうとも目の前にいる敵から目をそらすなどあってはならぬ!」


「ちくしょうぅ!」


 ヘタッと座り込むセルジュ達……


「では行こうかマサキ殿」


 マルグリットさんは消化不良だったのかやや不満そうな顔でオレの手を引きその場を後にした。


 オレ達はトコトコと歩いてテントへと帰ると弓を持った男がテントの前に立っていた。冒険者というよりも旅人といった風貌、歳は35あたり、背丈もオレより少し高いくらいの痩せ型の優男風……


「えっとアンタは?」


「オレはクリフ・オルヴァン 見ての通り旅人だ。

 さっきはついついつまらないおせっかいをしてしまったので謝りに来たんだが」


「おせっかい?」


「そうか! 先程の矢を放ったのはそなたか、

 ……クリフ殿といったか礼を言う」


 そうだったんだ。

 なんだよクリフさんいい奴じゃん!


「クリフさん、良かったらテントの中であったかい飲み物やお菓子を食べながらお話しでもしませんか?」


「おお、では頂こうかな」


 オレはクリフさんをテントの中に招き入れ、

 あったかい紅茶をカップに注ぐ……


「むむ、何という深みのある独特の芳香…」


 ズズッと紅茶を飲むクリフ


「おおっ、私はこんなにも美味い物は飲んだ事が

 ないコレは……最高だ」


 クリフさんはどうやら紅茶が気に入ったようだ。

 オレはドーナツを取り出してテーブルに置くとマルグリットさんの目がキラキラと輝き出し、スパッとドーナツを取っていった。


「ク…クリフ殿、よろしければこのお菓子も試してみるが良い、ドーナツと申すそうだ!」


 マルグリットさんに昨日ドーナツをあげてから彼女、しっかりとハマってしまいました(笑)

 お願いだから食べ過ぎてデブグリットさんにはならないでね

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