第47話 治癒の泉


 オレ達は転移の杖でいったんサンターナに戻り、ハッサンを連れてジャングルへと向かった。

 彼のガイドによると浄めの泉は前回来た時に遠くから見えたアスピラの大樹の近くにあるらしい


「それにしても皆さんどうされたんですか?

 浄めの泉に何か用事でもあったのですか?」


「ん〜っ ちょっと状態異常にかかってて素の状態に戻してもらいたい人間がいるんだよね」


「へー、そんな方がいるのですか? 大変ですね」


 いやいや、お前だから!


 そんな感じで雑談しながら歩いているとすぐに大樹のそばに着いた。オレ達はその大きな大樹を見上げた。それは天をも仰ぎそうな大きな樹木であり、巨大な木の根が土から出て、太い真っ黒な血管のように遠くまでうねり広がっている。


「うわぁ、でっかい木ニャ」


「懐かしいな、昔から全く変わってないなあ」


「ふむ、そんな事よりも泉へ着くことが先だ」


 浄めの泉は大樹から歩いて10分程の所にあった。

 ヨッシーはさっそく虚空庫アイテムボックスから王女を出し、速攻で泉へと突き飛ばした。


「えっ今女性がってうわぁ!」


 ハッサンも同じように背中を蹴っ飛ばし泉へと飛び込んでもらった。


 しばらくすると泉から黒い霧のようなものが出現し、それは少しずつ形を変えていく………


「キ……キサマらが来なければすべて上手くいっていたものを………こうなったらキサマらの魂ごと喰らいついてくれるわ! 」


「アレがエルサ王女に取り憑いていた奴か?」


「あ……悪魔ですかニャ」


「なんや気持ち悪いな」


「キューイ!」


 リンクは2段跳躍で素早く間合いをつめ、悪魔にバックスピンキックを放ったが悪魔は微動だにせずほとんどダメージが無いようすだった。


「どういう事……リンクの蹴りが効いてねえの?」


「うむ、確か半物質体の悪魔には物理攻撃が効きにくいという話を聞いた事があるが」


 悪魔は目を赤く光らせて、魔法の詠唱を開始した。


闇霧魔法ダークミスト


 えっ何か黒い霧が立ち込めて来たぞ?


 何だよコレ? 前が見えねえじゃねえか! コレじゃまわりの状況が分からねえぞ?


「アカン、前が見えへん」


「このような霧などわたくしがすぐに吹き飛ばしてみせますわ光輝嵐魔法セイクリッドストーム


 突然、エルサが乱入し、光の魔法を唱えると

 ヴアァァァッと黒い霧が晴れていった。



「ほう、我が霧を消し飛ばすか……ならば闇弾丸魔法ダークバレット


「させへんで!」


 ヨッシーがみんなの前に出て虚空庫アイテムボックスから出した盾で魔法を防ごうとするが2発肩に被弾して動きを止められてしまった。

 ブラックがすぐにヨッシーに向かって回復魔法をかけ、その後方にいたクリフが走り周り出し、矢尻に魔力を込めると悪魔にそれを放った。


「食らえ、ファイアショット!」


 さらにエルサもクリフに続き、魔法を叩き込む!


「いきます!光矢魔法シャイニングアロー


 おおおぉっ! エルサ姫の光属性魔法そしてクリフさんの魔法弓、これならイケるんじゃねぇか?

 オレの思った通り、悪魔はアッサリと消滅した。


「姫さんスゴイやんか圧倒的やな!」


「いえ向こうが下級悪魔レッサーデーモンだったので何とかなっただけですよ」


「えっさっきの奴ってアレで下級なの?」


「ハイ、物理攻撃が効きにくいので少々厄介ではありますがあの程度なら問題ありませんわ」


「でも姫さんはアイツに取り憑かれてたんやろ」


「ハイ、何故か気づいた時にはわたくしの自我はもうすでに乗っ取られておりました」


 エルサ姫はいつの間にやら悪魔に取り憑かれさっき使った光属性を封じられていたらしい。

 コレはあの城内にもウーサの仲間が確実に潜入しているな。


「マサ坊、コレってウーサの他にもまだ能力スキル持ちがおるって事やんな」


「そうだね、ウーンどうやって暴き出すか?」


 連中の目的はおそらく、クーデターが成功して自分達の指導者リーダーが実権を握った時に権力闘争をするであろう人物を狙ってこのように潰しているのだろう。


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