第36話 透明人間
ヨッシーのSUVのおかげで無事に砂漠を越えて日が沈む頃にはなんとかサンターナの街に入る事が出来た。しかもクルマに乗った状態で……
守衛の人は全く警戒せず、むしろフレンドリーな感じで「なあ今度オレもそれに乗せてくれないか?」などと言ってくる始末だ。
門を潜り街に入るとなんというかまさに南国そのものであたりには椰子の木が生い茂り、大勢の人が賑わい屋台がそこら中に並んでいる。
とりあえず両替所でユーゲンティアラのお金Gをサンモルノ王国のお金ペアに換金しておこう。
ヨッシーがクルマを
「キューイ!」
リンクがオレの服を引っ張り屋台に置いてあるフルーツを欲しそうにしているその姿に気付いたクリフさんが一言呟く。
「うむ、フルーツ屋台か、たしかに私のいた村では見た事もない果実がたくさん並んでいるなあ…
マサ君1つ買ってあげてはどうか?」
「ちょっとまてや2人とも!」
いきなりヨッシーがオレとクリフさんの間に割って入った。
「よお店の兄ちゃん調子はどないや、この旨そうなフルーツ全種類一個ずつ買うからちょっと負けてくれへんかな?」
「えっ、じゃあアンタが持っているそれと交換してくれよ」
狸耳の店員は鼻がきくのか、ヨッシーが手に持っているビニール袋を指差した。
「ん、おおこれか? ええよ」
ヨッシーは一体何を渡したんだ?
「なあアンタらウチの串焼きもよかったらどうだい
コイツはここら辺ではけっこう人気商品なんだぜ」
オレ達が珍しいのか、串焼き屋のオッサンが話しかけて来た。
「ウヒャーッ旨そうニャー!」
「うむ、確かにな」
「おっ、ええやん鳥か、牛か?」
「ハア、牛や鳥なんかよりももっと上等なモノだよ
ウチはワームの肉串焼き専門店だよ」
「イヤそれはアカンわ! なあマサ坊」
「また今度にしますハハハッ!」
虫、まさかの虫、いや〜っ虫はさすがに食えねえな!
オレ達は少し夜店から離れ、円を組んでプチ会議を開いた。
「うむ、想像してたよりもはるかに賑やかだな」
「美味しい物が一杯あって楽しいニャー」
「正直、キャッチがヤバイよね、さっきも色っぽいお姉さんに声かけられちゃったよ」
「アホかチャンスやんけ、逆にオマエがその女を持ち帰りしたらんかい」
とりあえずみんなで今晩泊まる宿を探す事にした。
「ヨッシー、さっき犬耳のフルーツ屋さんに何を渡したの?」
「タコ焼きや、ウチの嫁はんがお前らにって買ってきたんや」
「えっマジで」
「おう、ちゃんと人数分コピーしとるから宿ついたらみんなでタコ焼き会でもしよか」
オレ達はなんとか宿を見つけて部屋でタコ焼き会を始めた。ヨッシーが缶ビールを出してくれたので
グビグビ口にしながらタコ焼きをつまんだ。
うんコレはなかなかいけるね。
「美味いニャ」
「ニーヤ殿はこの町の雰囲気をどう思う」
「みんなノリノリで楽しいニャ」
「キューイ」
オレは両手でリンクを掴んでモフモフした。
「うむ、そういえばさっきチラッとこの町の旅人に聞いたのだが、ここから南西に馬車で2時間ほどの所に。広大なジャングルがあるらしくその奥に失われた秘宝が眠る遺跡があるとか?」
「それは面白そうやな明日にでもガイドでも雇ってちょっと行ってみるか?」
「口の上手なガイドにぼったくられそうだな」
-深夜-
宿を出て、寝ぼけ眼で立小便していたら
何と、女性の物と思われる下着がまるで生きているかのようにこちらに向かってきた。
と思ったら突然それを頭に被った中年男が突然、姿を現した。
「あ〜時間切れか〜くそ! でもまあいいや、そこの部屋に住むイシスちゃんのパンティゲットだぜ!」
オレは立小便しながらそいつをジーッと冷ややかな目で見ると中年男は舌打ちしてまた透明になり姿を消した。
「オイ、ちょっと待てよ。逃げたとしてもオレは今オマエの顔をきっちり目撃しているんだぞ!」
男は今にも泣き出しそうな顔をして姿を現した。
「何だ、まさか警備隊に通報するつもりか!
何でもするから、たのむよ見逃してくれよ!」
とりあえず中年男から話を聞いてみた。
彼の名はハッサンというらしくこの町に住んで20年になるというのだが性格が内向的なため、この町の人々とあまり上手くいかず、目立たずにひっそりと暮らしていたら、突然この能力に目覚めたそうだ。
あと話してみて思ったのだが少し不器用で世渡りが下手そうだが彼はなかなか真面目な性格のようだ下手に口が上手い奴よりかはこういう奴の方が信用できる。ではなんで下着泥棒なんかに手を染めた?
「なあ警備隊に通報しない代わりにちょっとオレ達のガイドをして欲しいんだよね。金も出すしさ」
「えっそんなんでいいならお安い御用だよ。
自分に任せてくれよ!」
そこでオレはもう一つ条件を出した。それは下着泥棒を辞める事だ。そのうちいつかは通報なり被害届なり出されてサンターナ警備隊の捜索対象になっちまうだろうしな!
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