第33話 恐怖の宿①
旅の商人の話によると、公道に出るとアル・リベリオから馬車に乗って1時間ほどでサンモルノ王国に着くそうだ。
ヨッシーとクリフさんの2人はアウトドアがしたいそうなのでオレ達は山道を歩きようやく国境を越えてサンモルノ王国に入った。入国審査を終えてまた山道を歩き出す。
「ふむ、少し休憩しないか」
「お腹も空きましたニャ」
「そういえばジギーさんからもらったおにぎり食べよか」
「それじゃお茶にしよう」
みんなでちょっとブレイク……
ジギーさんの女中さんたちが作ってくれたおにぎりをみんなに1つずつ配っていくとみんな無心になっておにぎりを頬張り出した。
「おう、お茶が入ったで」
ヨッシーが入れてくれた緑茶で一息つく……
「このお茶を飲むとリラックス出来るニャ」
「うむ、気持ちが落ちつくな」
オレは探索スキル使って自分の現在地と両親がいる場所を表示させた。ち……近い! どちらかは分からないがもうかなり近づいて来ている。どうやらこれから入国するサンモルノ王国の西側にある島にいるみたいだ。
「そろそろ行きますかニャ」
「うむ、そうだな」
おにぎりを食べ終わり、テントを
なんだ目の前に小さな村があるぞ?
「村があるニャ」
「村人に声かけてみようや」
村人と思わしき男性がトコトコ歩いて来たのだが
話しかけても何の反応もなかった。
「なんや失礼なやっちゃな」
少し歩くと目の前に子供を抱いた女性がウロウロしていたので声をかける。
「こんにちは」
やはり反応が全くない
というかまるでオレ達が存在していないような、見えていないような様子———
それに何か頭痛がしてきたぞ?
どうやらオレだけじゃないようだ。ヨッシーやクリフさんも頭を押さえ出し、苦しみ出した。
「ちょっとアンタ助けてくれや」
ヨッシーがその辺をウロウロしている小太りのおばさんに向かって叫ぶが聞こえていないのかやはり無反応だった。
一体どういうことなんだよコレは?
オレ達が膝をついてこんなに苦しんでいるのに
コイツら何の反応もしないなんて?
「フォッ、フォッ、フォッ、如何やらお困りのようじゃのう」
「アンタは?」
「ワシはこの先にある小さな宿を経営しておる者じゃよ、どうじゃアンタらが今かかっておる神経毒に効く薬もあるし良かったら泊まっていかんか?」
とりあえずみんなを見るとうなづき返されたので
この突然現れた老婆について行く事にした。
こんな所に宿?どう考えても怪しいだろ普通に…
オレはヨッシーやクリフさんに小声で考えを聞いてみる。
「ええやん、まあとりあえず行ってみようや」
「うむ、臨戦態勢だけは取っておこうか」
老婆が強引にオレ達の間に割って入って来た。
「アレがウチの宿ですじゃフォッ、フォッ、フォ」
老婆が指差す先にポツンと一軒、木造の小さな宿が建てられてあった。小さいといっても二階建てで7部屋あるそうだ。
宿の扉を開ける。ガチャガチャと扉を開けて中へ入って見るとそこはなんの変哲もないごくごく普通の宿であった。
それどころか少しオシャレな雰囲気すら感じる。
部屋の壁などは地味な白をベースにしているのに対してテーブル・椅子などはダークブラウンの木製家具を使っていてとてもよい雰囲気を出していた。
「なんやええ感じやんか」
「うむ、椅子もフカフカで良いな」
そこへ老婆が宿帳らしき物を持ってオレ達のところへフラフラと近づいて来て話しかける。
「実はちょうど今、主人が取ってきた淡水魚があるのじゃが晩ご飯は何か作りましょうか?」
「どんな料理か楽しみですニャ♪」
オレ達は夕飯を楽しんだ後、各自の部屋へと戻り
グッスリ眠りについた。
クリフは歯を磨くのを忘れてしまい深夜遅くに1人洗面台の前に立つ、チラリと鏡を見ると背後の棚に奇妙な雰囲気の人形が置いてあるが気にせずに歯を磨く……
アレ、この人形、さっき見たときはもう少し離れていた気がするのだが
次に鏡を見ると人形はすぐ目の前に迫っていた。
「うわあぁぁぁっ!」
何故かまったく寝付けずベッドでリンクを撫で回していたら、クリフの叫び声が聞こえたのでオレはすぐに洗面所へ駆けつけた。
「どうしたのクリフさん」
「マサ君た…助けてくれ」
何とクリフさんの背中に少女の人形がへばりついていた。ハア、何だよコレ?
包丁を持った少女の人形がカタカタカタと首を360度回転させてこちらへ降り向くとニタリと不気味な笑みを浮かべた。
「ヴヴヴヴェァァァ!切り刻んでヤルウゥゥ!」
人形の舌が伸びて来てオレの首に纏わり付いて来た。
「キューイ」
リンクのかかと落としが少女の人形の頭にモロに入り、さらにサイドキックでぶっ飛ばすとオレの首に纏わり付いていた舌がようやく外れた。
さすがリンク、ナイスだぞ!
「よし、逃げるぞマサ君」
オレはクリフさんの伸ばした手を掴んですぐにほかの部屋へと走り去った。
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