第41話 サンロードの塔⓷
コーヒーを飲みながら1人ずつ自己紹介をした後、少女は今までの経緯を話し始めた。
平塚太一という名前の稀人は長い旅の末ここに行き着いた。彼は今まで研究していた錬金術で今、俺達の目の前にいるこの少女コードネームL01
を作り出し、一緒に暮らしていたそうだ。
リナが少女を優しい眼差しでみつめる。
「何年くらい彼と一緒に過ごしたのですか?」
「約25年程ですね。時には一緒に研究所に籠もっていた事もあります。」
「それなら最上階にありますよ。あとでバッテリーを交換しに行こうと思っていたのでよろしければ
ご一緒にどうでしょうか?ワタシの転移スキルですぐに行けますよ」
◇
最上階の研究所
コードネームL01は生体認証ドアロックを目で認証させてセキュリティを解除してドアを開いた。
「なあマサ君、今のも稀人世界の魔法か何かなのか?」
「テクノロジーっちゅうやっちゃな」
まぁクリフさん達が驚くのも無理もないジギーさん曰くこっちの技術はうちらの世界でいうと中世ヨーロッパ程度のレベルらしい。クリフさんも前にスマホを見て驚いていたしね。
つーかなんでヨッシーが答えるわけ?
まあいつものことだけどさ……
それよりも研究所の設備を見て驚いた。カプセルみたいな形のガラス張りのケースの中の培養液に人が浸されて晒されていてその横にタッチパネルの操作盤がある。
「なぁ、あの中にいるのってまだ生きているんだよな」
「はい、あの中にいるのは人工生命体つまりホムンクルスです。」
一体、平塚太一は何の研究をしていたんだ?
俺は無言で彼女を見つめた。
「平塚太一は最初この研究施設でオートマタの開発をしていたのです。そしてセントラシア公国の協力と長い年月をかけて生み出して来たその技術の集大成がワタシなのです」
パソコンデスクに写真が飾ってある。
家族写真かな
平塚太一だと思われる男とその妻と
コードネーム01によく似た娘が写っている
「彼は…… 平塚はセントラシア公国から出張の帰り道に北のアルフェンヌ王国から逃げて来た亜人奴隷の幼い少女と出会ったの、平塚はその子を連れて帰り大切に保護し育てたわ。そう平塚はその子を我が娘のように可愛がった。でもある日、平塚がその子にお使いを頼んだの。運悪く平塚の研究をよく思わない連中に塔の外に出た時を狙われて殺されてしまった。
平塚は直ぐに遺体を回収し、そこのカプセルのような形のガラス張りのケースの中の培養液に浸けて様々な錬金術、蘇生魔術などを使ってなんとか蘇生させたの人工生命体つまりホムンクルスとして
「でも実はコレはまだ未完成なのよね彼女の中に他の生物の因子が加え……られて彼女自身の感情が安定し……ないのよ」
なるほど他の生物の感情が混ざってしまうって事か
「アレやなワイに飲み屋のお姉ちゃんの因子が混ざったらクリフちゃん好きよ~っブチュ~ってなるかも知れへんって意味やな~♪」
クリフさんは困った顔でオレを見る。
その横でニーヤと子供達がゲラゲラ大笑いしてる
「そして、ホムンクルスは未完成……のまま
ワタシ……は最期の……時期………を看取る事に…なり平塚太一は………ゆっく…りと息を…引き取ったの」
平塚は老衰で亡くなったのか、彼女達を残して…
ガシャーン!!
突然、ホムンクルスが目を覚ましてカプセルの様な水槽をブチ破って出て来た。
「ハァっ…ハァっ……違う! ウソだ、父ちゃんは死んじゃいない、またお前らか?よくも父ちゃんを……父ちゃんを返せーっ!!」
まずい敵意がある、とっさに鑑定スキルで確認したらとんでもない数値が出てきたよ?
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ルフィアーナ・セドコーヴァ
クラス なし
種族 ホムンクルス
レベル99
HP9999 MP9999
攻撃9999 守り9999 速さ9999
スキル
応用魔法、基礎魔法、魔術(中)
剣術、槍術
加護:なし
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オイオイどうするよ?コードネーム01はすでにもうバッテリーが切れて止まってるし
「我が
「わかってるよ、ヨッシー頼む!」
「おうよ」
ヨッシーが前に出て盾を構えて突っ込んだ。
リンク、俺、そして少し後方にカエナとサジが一斉に飛び出した瞬間、ヨッシーが盾、鎧ごと吹き飛ばされ回転しながら落ちて行った。
つぎの瞬間ホムンクルスはオレの胸に掌を当て
そのままオレは衝撃で吹き飛ばされた。
「ガハッ!」
近くにいたブラック、リンクそしてカエナとサジも覇気だけで吹き飛ばされた。
「皆下がれニャ!「――炎ノ
「ファイアショット!」
ニーヤの持つ最強の魔法攻撃そしてクリフさんの魔法弓、これなら……
ドバシャ!!
ホムンクルスはそれをあっさりとまとめて吹き飛ばした。
「ウソだろ? あれを全て弾き飛ばした……」
ホムンクルスは強大なエネルギーの渦を纏いながらニーヤ達にゆっくりと近づいて来る。
ホムンクルスのエネルギーが溢れ出したその時、部屋の何処かからサイレンが鳴り響いた。
デスクに置いてあるノートパソコンの電源が入り、勝手に動画が再生されて写真の男が出てきた。平塚太一だ。ずいぶん歳を重ねているが……
「えっと愛する娘へ
やぁルフィ久しぶりだね、元気にしてたのかな」
「……父ちゃん!
父ちゃん!元気だよっルフィは元気だよ!」
「この映像が流れているって事は僕は
もう既にこの世にはいないだろう
だがどうか悲しまないでおくれ
ルフィいつかキミの未来のお友達が
キミを迎えに来るかもしれない
キミはそのお友達とここを出て
外の世界できっと辛い事、楽しい事
色々な経験をすると思う
いつでもここへ帰っておいで
ここはキミの家なのだから
あと最後にキミと一緒にいられた家族の時間とっても幸せだった。ありがとう
動画が終わると
パソコンの電源が切れた
「うぇっ父ちゃん!イヤだ!イヤだよ
行かないで!ひとりぼっちにしないで」
ホムンクルスは泣きじゃくりだした
そこへヨッシーがボロボロの体でよろよろとホムンクルスに近づき、手を差し伸べた。
「なあお前、よかったらワイらと一緒に来えへんか? おもしろい奴らと一緒やから毎日がめっちゃ楽しいで……」
「た…楽しいのか?」
「おう、今までもみんなで山登ったり、テントで家族みたいに一緒に寝たり温泉入ったりバーベキューしたり熊に追っかけられたり一緒に冒険しとるんや。」
ホムンクルスはヨッシーを見つめている。ヨッシーは少しぎこちなく、
「か……家族みたいに…か」
「お前も一緒に冒険するか?」
「行く!!」
ホムンクルスは野生の猿のようにヨッシに飛びつき抱きついた。
「うう、ワタシもオマエみたいに家族みたい……のなりたい……ワタシ一緒になる!オマエ家族」
「なっなんだよコレ? 何が起きてんだ?」
「うむ、最後に愛は勝つだ」
クリフさんがドヤ顔でオレを見つめる。
ハア、マジで何言ってんの
オレにはまったく理解出来ねー
ヨッシーの誰とでも仲良くなれるスキルが勝ったって事かよ。
コレこそオレにはないヤツのナチュラル
リナがサジとカエナに駆け寄り2人の目を覆おうとするとその手をはねのけ、2人が怒り出した。
「何するんだよ」
「子供は見ちゃダメ!」
「リナも子供じゃないか?」
「アンタ達よりも大人だよ!」
あっちはあっちで賑やかだなぁ
俺はホムンクルスにコードネーム01の
バッテリーが切れている事を伝えると
即座に交換してくれた。
するとコードネーム01が再び起動しだした。
「あらっ皆さんどうなさったの? どうしてルフィはヨッシーさんに抱きついているのかしら?」
「オレらは仲間になったんや」
「そうだ……ウチらは仲間だぞっワハハハ!」
そんな彼等を見て嬉しそうに微笑んでいるコードネーム01がオレの方へ振り向き、
「良かったですね皆さん仲良くなれて皆さん仲間になられたのですか?」
「さあ?」
し…知らねえんだけど
つーかヨッシーが勝手に言ってるだけだよ
オレには関係ねえ………けどまあ仲間が増えるのはいい事だ。
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