第27話 湖と妖精と一角獣と③

 

 一角獣ユニコーンの生息地を探り当てようと

 スキル【探索】を使ってみる。目の前にここのマップ画面が現れた。少し離れた所から赤い表示がいくつかあったのでおそらくこの場所が彼らの住処なのだろう。


「どうだマサ君、一角獣ユニコーンの場所は見つけられそうなのか?」


「ああ、どうやらここから5キロほどの所に住処があるみたいだよ」


「盗賊どもはどないや近くにおらへんか?」


「イヤ、それはわかんねえな?」


 オレの能力スキル『探索』は対象となる者一点しか表示出来ない、それ以外の物は表示されないのが難点なんだよな……


「とりあえず住処へ行こうよ。一角獣ユニコーンのそばにいれば盗賊どもは向こうからやって来るっしょ」


 オレ達は一角獣ユニコーンの住処を目指して山道を進む事にした。40分ほど歩いてようやく住処を見つけるとさっきの盗賊どもが一角獣ユニコーンの家族と思わしき群れをジワジワと取り囲んでいた。


「マサ君たちは一角獣ユニコーンをたのむぞ。

 私とニーヤ達は奴らを抑えるぞ」



炎弾魔法ファイアボール


 ニーヤが盗賊どもに向けて炎を放つと一角獣ユニコーン達が怖がってものすごい勢いで走り去っていった。


「マサ坊、追いかけるで!」


 オレはヨッシーと共に走って一角獣ユニコーンを追いかけるが一角獣ユニコーンは足が速く、追いつくどころか差がどんどん広がっていく………


「ハァハァハァどうしようもないな」


「よっしゃ、ほんならエリミネーターの出番やな」


 ヨッシーはなんと虚空庫アイテムボックスからバイクを出して来た。

 ヨッシーがキックしてエンジンをかけるとズド、ズドドドドドと激しい排気音があたりに鳴り響いた。


「何よこの変な音は? 変わったゴーレムね」


 ヘルメットをオレに向かって放り投げ、ヨッシーは自分のヘルメットをかぶって、バイクにまたがると、後ろを指さしたのでオレは彼の腰にしっかりと捕まった。


まあオレの原付じゃこの山道はムリそうだし——


「いくであのお馬ちゃんらと競争や!」


 クラッチを繋ぎバイクは走り出す。その振動がオレとフレリーヌを驚かせた。景色が、オレの視界にあるものがガンガン通り過ぎていく。そして、風と木の枝がすごい勢いで顔面に当たってくる。


コレ結構な速度で走っているよね?


「うわぁ、怖い!怖い! 誰か助けてぇ!」


 オレの首にしがみついているフレリーヌが耳元でギャアギャア騒いでいる。どうやらこの速度と揺れにすっかり怯えてしまったみたいだ。


 ヨッシーの林道走行により、すぐに一角獣ユニコーンの群れに追いついた。は…速い! さすがは文明の力だ。


「よし、追いついたで」


「ア…アンタ達、あとはアタシが!」


 フレリーヌは深呼吸して意識を集中すると超音波のような音を一角獣ユニコーンに向けて放った。すると一角獣ユニコーンはピタリと足を止めたのでヨッシーも急停止した。


「なんや突然止まりおった?」


「アタシが妖精の里でこの子達を保護するって事を伝えたんだよ。」


 一角獣ユニコーンの中の1匹がゆっくりとフレリーヌに近づいて来た。


「つーわけでアタシはこの子達に乗って一旦里に帰るからあとはよろしくねーっ!」


 一角獣ユニコーンはフレリーヌを背中に乗せ、オレ達を一瞥すると頸を高くあげて、尻尾を振り、軽やかな足取りで走り去っていった。


 さてと、それじゃ後はクリフさん達のところへと戻りますか。



 ◇





「2人が戻って来たニャ」


「ふむ、その様子だとどうやら一角獣ユニコーンは無事に保護できたようだな」


 山道沿いではニーヤの魔法そしてクリフさんの弓さばきによって盗賊どもは形成不利とわかると一目散に逃げて行ったらしい。

 さすがクリフさんだ。どうやら戦闘系の2人を当てて正解だったね


「ほんならさっそく勝利の祝杯でもあげよか」


 オレ達は泉へと移動するとヨッシーが虚空庫アイテムボックスからお酒を出して来たので月明かりの下でみんなで、一杯やる事にした。


「それって確かモンテーヌで飲んだ酒だよね?」


「アレはどぶろくやな、コレはにごり酒や!甘口でアッサリしてなかなかいけるで」


 ゴクリと唾を飲むクリフさん……


「ふむ、それならば私も今夜は飲もうぞ」


「ちょい待ち!アタシも混ぜてちょーだい」


「妖精さんも飛び入り参加かニャ♪」


 フレリーヌは一角獣ユニコーン達を無事に妖精の里へと連れて行ったそうだ。

 それにしてもオレらのまわりをクルクルと飛び回る彼女はまるでデカいコバエのようで正直ウザい!

 つーか妖精も酒飲むのかよ?


「おう、ほんならみんなで勝利の乾杯しようや」


 ヨッシーが注いだ酒を高く上げてみんなで乾杯した。月明かりに照らされる泉の前でオレ達はワイワイ騒いだ。


「ウマー何よこのお酒はー!

 アンタらいつもこんな美味い物飲んでんの?」


「うむ、確かにコレはイケる」


「美味いニャー!」


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