第28話 スタロ・リベリオ
山道から街道へと歩き続け、オレ達はようやくスタロ・リベリオへと着いた。
警備兵に身分証を見せて中へと入っていく——
まずは両替所でポローニャ小国の通貨をユーゲンティアラ王国のGに換金。
「みんなお待たせ」
「おお両替して来たんか!
それにしても広くて綺麗な町やな。中世ヨーロッパ的な雰囲気がええやんか」
オレの隣でまわりをキョロキョロし興奮するヨッシーたち、たしかにテンションが上がるのもムリもないと思う。まるで中世ヨーロッパのような西洋風な建物が立ち並び、たくさんの商店や屋台が連なり大勢の人々で賑わっている。
さらにオレを興奮させるのが、人間の中に混じって歩くエルフや髭もじゃのドワーフといった異種族たちの姿であった。
そういった人々に紛れて、冒険者っぽい連中の姿もチラホラと見かけることができた。
広場ではいくつかの屋台が立ち並び、真ん中では寸劇が行われており、観客が席に座って屋台で買った物を食べながらそれを見て楽しんでいる。
よし、じゃあまずは冒険者ギルドに行くか!
反対側を歩いている純白の高そうなドレスを着て日傘をさしている女性達がオレ達を見つめ、口に手をあててハッも何か驚いた様子であたりを見回し始めた。
「ヨシキ様ーっ!
ついに逃亡者を見つけましたわよ」
「ルナリア、ミリアリアーっどこだ!」
白くてピカピカの鎧を着た金髪の青年がその女性達に近づいていく……
「げっアイツ勇者やないか?」
その青年を見てヨッシーがあわててオレの背後に隠れた。
何だ。知り合いなのか?
ルナリアと呼ばれた女性がコチラを指差し、青年がオレ達の方へと振り向く
「見つけたぞ。 逃亡奴隷よ覚悟しろ!」
勇者らしき青年は剣を高々と天にかざすと剣が光り輝きだす。
「こらアカン!
マサ坊、ワイ逃げるわ」
「逃しませんわ、
必死に走り去ろうとするヨッシーだったが
彼に向けてルナリアは土魔法を放った。
小さい石のつぶてが散弾の様になって
ヨッシーの足や腰に直撃するとそのまま倒れ込んだ。
「うぎゃああああっ!」
ヨッシーは痛みに耐えきれず叫び上げる。
「よくやったぞルナリア、あとはオレがやる」
「ハイ、ヨシキ様」
勇者ヨシキが剣をヨッシーに向かって突きつけるがそこへクリフさんが素早くショートソードで受け止めてる。
「させん、マサ君、彼をたのむ!」
「えっでも……」
「行けっ! 」
「援護しますニャ
「ちいいいい!」
ニーヤは風魔法を、クリフさんは少し後退して弓スキルを勇者ヨシキに向かって放った。勇者ヨシキが彼らの攻撃を受け、下がり始めたその隙にオレはヨッシーのそばへと走り、彼に
「た…助かったわ。ありがとうマサ坊」
ヨッシーはオレの肩を叩き立ち上がる。
「マジでアイツが勇者なの」
「ああ、コイツが召喚された勇者で取り巻きの女どもがその仲間や、おそらく……奴隷として売り飛ばされそうになって脱走して来たワイらを捕まえに聖教国からここまで追って来たんやろ」
「汚らわしい奴隷よ! 勇者さまですわ! 様が抜けていますわよ」
「そうだ、俺様は愛と平和と正義の元、この世界に降臨した勇者ヨシキ様だ〜!」
ハア、何言ってんの愛と正義だあ?
こいつらアタマは大丈夫か?
なんか薬でもやってんじゃねえの?
つーかお前らが滅んだほうがマジ平和になると
思うんだけど?……
「勇者さま〜!」
数人の騎士や魔法士が勇者ヨシキのところへ駆けつけて来た。
「国からは抵抗するのなら斬り捨ててもよいと言われている。さあ、おとなしく我らについて来てもらおうか脱走奴隷!」
「アホか!ついて行ったら殺されてまうやんけ。
しっかり抵抗させてもらうわ」
「ふむ、ヨッシー私たちも加勢するぞ」
勇者ヨシキが距離を詰め、ヨッシーに向かって斬りかかるがクリフさんが素早く横から割り込みショートソードで弾いた。
クリフさんの剣と勇者ヨシキの剣が激しくぶつかり合う、何度も何度も……
時折ヨッシーが盾で勇者ヨシキの剣をなんとか防ぐ。
「ほう、なかなかの連携プレイだ。
少しはやるじゃないか! だがそれがいつまでもつかな!」
ヨッシーは徐々に息が荒くなってきた。
「ハアハア、こらアカンわ」
「
ニーヤの掌から水のしぶきが勢いよく勇者ヨシキめがけて飛んで行ったが側にいた魔法使いっぽい女が魔法で氷の盾を作り出して防いだ。
「
魔法使いっぽい女が今度は魔法を唱え、氷の槍が飛んで来た。
「
ニーヤの放った風魔法がスパッと氷の刃を真っ二つにした。
「
勇者ヨシキの取り巻きの騎士風の女が手に持っているサーベルでいきなりオレに斬りかかって来たが間一髪でかわした。
「うわ、危なっ!」
「おのれ、チョコマカとーっ!」
オレは
オレにはこれといった戦闘用スキルもないので……と思わせて油断したところを
バチン!
オレの放った鉄の玉をモロ顔面に入ったようだな。
「痛っ! 貴様、飛び道具を使うなど卑怯な、
正々堂々と剣で戦え!」
「サリア! おのれよくもサリアの可愛い顔に傷をつけてくれたな!」
勇者ヨシキがオレを睨みつける?
何言ってんだアイツ?
正当防衛の範疇じゃん。いきなり襲いかかって来たのはそっちなんだからよ!
「大丈夫かマサ君?」
「ああ、ヨッシー、ニーヤこっちへ」
「おう!」 「ハイですニャ」
オレ達が勇者ヨシキや女達から距離をおこうとすると後ろにいた魔法士たちがオレ達を取り囲み、杖を向けて魔法を放とうとしている。
オレは
「こんな氷の壁など我らが力を合わせればすぐに崩れよう!」
「いきますわよ
「「
「いくぞ
「「うおおぉぉぉっ」」
魔法士たちの火炎魔法によって氷の壁が少しずつ溶け出し、さらに騎士達の剣撃によって砕かれていった。
嘘だろ! 白孤に貰った札の力が破られた?
「オオォッ勇者の剣よ今こそ唸れーっ
「危ないニャ
ズドォォオオオオオオン!
オレ達の前に雷が降り注ぎ、ニーヤの魔法で防いだが……
「ふう、ニーヤの魔法が無ければ黒こげになっていたろうな」
「だがそれでもこのダメージだ」
「ああ、立っているのがやっとやで」
みんなもうすでに満身創痍の状態だった
勇者達がジリジリと距離を詰めてくる……
「アラ、もうおしまいのようですわね」
「とどめだ!」
マズイもう後がない
こうなったらあとは転移の杖で逃げるしか…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます