第10話 チンピラ退治と少年の保護
花火も終わり教会をあとにし、来た道を通って宿屋へと戻る。
周りを見ると花火祭りのせいかやはりカップルが多い?
「マルグリットさん、オレ達敬語やめませんか?」
「えっそうです……だな、うむ」
「手…つなごうよ」
マルグリットさんの手を取り腕を絡ませながら手をつなぐと彼女は少しうつむき、嬉しさと恥じらいの入り混じった笑顔をみせた。
途中、マルグリットさんがアクセサリー屋で足を止めた。
「ちょっと見に行ってもいいで……よいか」
「うん」
なかなかタメ口が慣れないな〜
敬語しか話さなかったのでわからなかったがマルグリットさんってこういう口調だったのか?
そりゃまあ騎士だもんな
「やぁいらっしゃい
お嬢さん、コレなんかオススメだよ。『青薔薇のペンダント』ていうんだ。どうだい吸い込まれるような美しさだろ」
「うむ、確かに美しいが、できればそういったものではなく彼とお揃いの物が欲しいのだが」
マルグリットさんはオレを指差すと店の婆さんは
ニヤリと笑っていくつかの種類の指輪を持ってきてくれた。
「だったらこのあたりの指輪なんかどうだい」
数ある中からオレ達2人に合いそうなペアリングを選んだ 。
「1番シンプルなのを選ぶんだねー、金貨6枚だね。ありがとうよ兄ちゃん」
オレはペアリングを買って店を出ようとする。
そして、店から帰り際――。
「あとコレも持っていきな、アンタらもこれから宿に帰ってヤりまくるんだろう」
と言って婆さんは避妊薬をサービスに付けてくれた。
こりゃ宿に帰ってからが本番だな!
おーっいいね。テンション上がって来た。
今晩は2人にとって最高の夜にするぞー
突然、目の前をボロ布を纏った子供が必死になって走り去っていった。
何だ? 何かから逃げているようにみえたぞ
かなり怯えていた様子だったし……
「マサキ、雰囲気から察するにあの少年何か物騒なことに巻き込まれておるのではないか?」
探索スキルを使って彼の位置を確認してみたが
路地裏で誰かに囲まれてるようだ。こりゃマズイと思ってオレは
「な…何なのだこのけたたましい鳴き声の珍妙な鉄の塊は?」
「マルグリットさん、説明は後でするからはやく後ろに乗って」
さあマルグリットさんを乗せてズーマー発進!
マップを見ながら彼のいる場所へと走らせる
裏路地に着くと何やらガラの悪いチンピラ風の男共に暴行を加えられている様子、
「マサキ殿、先に降りるぞ!」
そう言ってマルグリットはオレのバイクを踏み台にして飛び上がり、その勢いで手前の男に殴りつけ、そのまま腰に帯びているレイピアを抜く——
「な…何だてめえは?」
よし、マルグリットさんの突然の乱入によって彼らの意識は彼女に向いた。あとはオレが…
男共はナイフを構えて彼女に襲いかかるがほんの数秒であっさりと打ち取られた。
マルグリットさんがまさかこんなに強いなんて(笑)
オレは怪我をしている少年に
「大丈夫か」
「た…助けて、みんなを助けて下さい」
「安心するがいい、私が来たからにはもう大丈夫だ。さぁゆっくり事情を話してくれ」
マルグリットさんの言葉に安心したのか
少年は自分に何が起きているのかを説明し始めた。
ここから馬で2時間ほど走ったところに野盗どものアジトがあり、そこには拉致された大勢の村人が捕まっているらしい。少年は隙を見て逃げ出し、冒険者ギルドへ助けを求めてここまで来たのだが先ほど街でスパイ活動をしている野盗に偶然見つかってしまい連れ戻されるところだったのだとか
オレ達は冒険者ギルドへ向かい職員に事情を話し男達をつき出した。
20分後、ギルド職員がオレたちを呼びに来た。
「マサキナガタさん、ギルドマスターがお呼びですのでこちらへ」
マルグリットさんには受付で待っていてもらい、ギルマスの執務室に入ると、それらしきオッサンとその横には昼間、銭湯で出会った兎亜人の
ケシャがいた。
「オレはここのギルドマスターをやっている
ギョーム・ラセルだ。君たちがスパイ活動をしていた野盗からその少年を救ってくれたんだな。あとで謝礼として金貨10枚を出そう」
えっ野盗、どうやらチンピラどもの中に1人野盗がスパイとして潜り込んでいたらしい
一体どいつだったんだろう?
まあ何はともあれ
臨時収入ゲットだぜ!
「その少年のおかげで奴らのアジトの場所が特定した。明朝、冒険者ギルドはこれより討伐の人員の緊急招集をかけ、準備を行って明後日にはアジトの殲滅といった流れで行く!
明日討伐戦への参加依頼が告知されるだろうから、ケシャ、お前が筆頭にその依頼を受けてくれ」
「了解した。では明日の朝」
そういってケシャは窓を開けてスタッと外へと飛び出して行った。
気を取り直してオレの方へと向き直るギルマス
「という訳で君にも協力してもらえないだろうか」
「自分はFランクなので遠慮しておきます。そういうのは高ランク冒険者の方々に頼んで下さい」
オレは一礼して執務室を出ると駆け足で受付へと降りた。
明日の夜、野盗どもと戦闘? イヤイヤそんなのやらないよ。断るにきまってんじゃん! こっちは転生した両親を探しにこの世界に来てんだっつーの!
足音に気が付いたのかマルグリットさんが駆け寄って来た。どうやらずいぶんと待たせたみたい。
「うん、さあ帰ろうマルグリットさん」
「うむ、少年は無事に保護されたのだな」
オレ達は冒険者ギルドを後にして宿屋へと向かった。
「それにしてもマサキ殿が稀人だったとはな」
「稀人?……」
「別の世界からやって来た人達の事で大昔からその存在は昔話とかでよく語り継がれているのだ」
そうなのか?
今度、白孤に詳しく聞いてみよう。
その後、宿屋に戻るともうすっかり深夜になっていた。
なんだよ、せっかく花火祭りでマルグリットさんといい雰囲気になれたのに
野盗の件で台無しになってしまったじゃねぇか。
灯りを消し暗い中、一つのベッドでオレ達は何事もなく普通に寝た。
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