第2話 準備
ガサガサ!
「どうやらここは魔物どもの巣窟みたいじゃな」
「へっ魔物?」
グラグラと地面が揺れ始めると根っこが地面を突きやぶってオレたちへと囲み始める。それは触手のように不気味に蠢きながらこちらに向けられていた。
『下がっておれ』
「えっ?」
『心配無用じゃすぐに終わるからのう』
「お……おう」
なんだかよくわかんねえけどオレはヨタヨタと無意識に後ろへとさがり白狐と少しだけ距離を開けた。
『ムン!』
白狐が力強く両手を合わせると突然、竜巻が発生し、発達した積乱雲に伴う強い上昇気流によって発生する激しい突風が周りにある木々をバキバキと勢いよくなぎ倒していった。
「一体なにがおきてんだ?」
『今のはのう
オレ達のいる場所だけ竜巻によって木々が吹き飛ばさられ何も無い草原のようになってしまった。
「何か頭の中で何か変なアナウンスが聞こえて来た? うえ、何だよコレ」
『おう、それはお前さんのレベルがドンドン上がっているというアナウンスなのじゃろうのう』
「レベル?」
『ワシが
な……なんだよそれじゃまるでRPGの世界じゃねーか
「なんかゲームみたいだな」
『げえむ? 何じゃそれは? そんなことよりもお前さんはどうする。このままここに残るのかや?』
ハァッ! 今コイツここに残るって言わなかったか?
バカかよ! んなわきゃねぇだろ!
魔物がいたり、魔法だか
オレが1人で居られるワケねぇじゃん!
絶対帰るに決まってんだろ
「いや無理無理! いったん帰ろう」
とりあえず元の神社に戻してもらった。
『なんじゃ結局行かんのかや』
「まずは準備だ。生活用品や武器になりそうな物
を揃えないとな」
正直、あのままあそこに放り出されたらヤバいだろ! 食料とか武器とか何にも持ってねぇし! 魔物とかもいるし?
「ほうかなら出発はいつにするのじゃ? 明日かの?」
「3日後だ」
さてとそれじゃあ買い出しにでも行きますか。
『ならワシもついていくぞ!』
「えっ? マジか!」
『ワシが嘘をつくわけがなかろう、それにワシの姿はお主にしか見えないようにするので心配はいらぬぞい』
まずは飲み物と食料を買うべく、原付で5㎞先のスーパーに行こう。
3ヶ月間留守にするので静岡の叔父さんに仕事の手伝いはもう少し待ってもらうよう電話しとくことにした。
あと一応、妹にも連絡しておかなければいけないだろうな。妹はすでに結婚していて横浜市内に住んでいる。出来れば甥っ子の写真や動画も父さんや母さんに見せてやりたいし、ただ異世界に転生した2人に会いに行くって妹にどう説明しょうかな?
色々と考え込んでいるうちに24時間営業のスーパーに辿り着いた。
『んでお主、何を買うんじゃ飴か? 蕎麦か? 饅頭か? ワシゃ油揚げが食いたいぞい』
「持てる荷物が限られているからね。
出来るだけ無駄のないように厳選するけど、魔物対策だけはバッチリしようと思う!」
『それに関しては全く問題ないぞ、出発前に荷物が999個まで入る
「おお、そりゃすごい! 」
とりあえずカートを押しながら食料品、生活用品
を買いあさった。
次はアウトドア用品コーナーへ行って見る。
店員さんにお願いして登山で必要なアイテム一式を集めてきてもらい、レジで会計をする際に後ろに並んでいるおばさんに「何だい、富士山にでも登るのかい?」などと言われたので適当に頷いておいた。
山登りなんてやった事ねーよ!
最近、運動とか全くしてねえから体力ヤベーかも?
◇
次の日、オレは妹に会いに行った。
小田原 由香、彼女はすでに結婚して横浜市内で9歳の息子と旦那さんの3人暮らしをしている。
マンションの駐輪場にバイクを停めて、エレベーターに乗って彼女達の住む部屋へと向かう。
部屋に着き、インターホンを鳴らすとドタバタとこちらへ向かって来る足音が聞こえた。
ガチャ
足音から甥っ子がドアを開けてくれたようだ。
「オッス! カッちゃん今日はサッカーお休み?」
「うん、ママ〜おじさん来たよ!」
長男の数人君、小学校4年生で少年サッカーをしている。試合の日は彼の送り迎えや応援で忙しいんだとか…
「アニキ、ズーマーのマフラー交換したの?」
「やっぱ音がうっさくなった? 正規の物は高えからよ
ネットで安いの探して取り付けてもらったんだわ」
「今ご飯作ってるから食べていきなよ」
「おう、今晩は何なの?」
「おじさん、今日はオレの好きなハンバーグだ」
「おう、やったー!」
「イエーイ♪」
オレはカッちゃんと互いの手のひらを叩き合った後、カッちゃんはオレの手を引きリビングへと向かう。
こないだの誕生日に買ってもらったゲームを一緒にやりたいんだろうな。
彼のゲームにつきあいしばらくすると夕食の準備が出来たそうなのでゲームを途中で止めて妹の手料理を頂くことにする。
「LINEみたけど何、異世界? 父さんと母さんが
転生? 何それ?」
「あぁっ!やっぱり信じられないよね」
「当たり前よ。2人が亡くなって何年経ってると思っているの」
『そう思うておるのなら実際に見てみるかや』
突然、白孤が目の前に現れた。しかも当然のように目の前にあるオレのお茶をすすり出した。
「あ…あんた一体どうやって?」
「ママ、いきなり女の人が……」
妹達が突然現れた白孤を見て驚きまくっている!
「由香、カッちゃん、突然現れた彼女に色々と驚いていると思うけど彼女が異世界への案内人の…」
『白孤と申す。ところでその旨そうな物は何じゃ
ワシの分はないのかや?』
「それじゃオレのを半分食ってもいいぞ」
『うむ、やはりお前さんは人が出来ておるの』
オレはチラリと視線を妹に向ける。
「その前に、『実際に見てみるかや』っていうのは
どういう意味なの?」
『ふむ、よかろうワシの手を取るがよい」
妹はそっと白孤の手を取ると2人の姿が消えた。
「え、おじさんママがいなくなっちゃったよ?」
「大丈夫、すぐに戻ってくるから」
数分後2人が姿を見せた。
「どうだった?」
『あっちの世界の町を見て回ったんじゃよ』
「へーああいう感じなのね。なんだかヨーロッパへプチ海外旅行して来た気分になったわ。
それでアニキはどれくらいの期間向こうに滞在するつもりなの?」
えっ? 滞在期間? 考えてなかった〜っ!
「えっと…」
「父さんと母さんがどこにいるのかは分かっているの?」
『それに関しては問題ないぞい。彼にはすでに両親を探索できる
「いいね。何かホームステイみたいじゃん!
アタシも海外行ってみたいな〜」
「ママ、オレもママとパパと旅行いきたい」
とりあえず異世界には3ヶ月ほど滞在する事になった。
アパートに帰り風呂に入っている間、妹からメッセージ動画やカッちゃんや旦那さんの画像が送られてきた。
父さん、母さんに会ったら見せてくれと……
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