悲しみの所在 -京から見たその子-
その女の子を見たとき、心が張り裂けるような痛みを感じた。
凄惨な自動車事故でただ一人生き残った女の子。
その日はちょうどその子とお姉さんのお誕生日だったらしい。家族で出かけて、夕ご飯を食べて帰ろうという矢先にその事故は起こった。スピードを出しすぎた車は信号が赤なのにも関わらずスピードを緩めようともしなかった。半ば暴走状態の車の進行方向にはちょうど横断歩道を渡っていたその子の家族が居て、車から逃げるには余りにも時間はなく、咄嗟に両親がお姉さんを庇うぐらいのことしかできなかったらしいと聞いた。両親に庇われたお姉さんも救急搬送されたものの助からず、ただ唯一家族よりも少し後ろを歩いていたその子だけが助かったのだ。
私はその話を聞いてどうしようもなく、悲しかった。
その子は目の前で家族の死を見た。その気持ちを察することは私には到底できない。
この式にだってあの子はどういう気持ちで参列するのだろう。どういう気持ちで。
小さく丸まった彼女の体は酷く所在なさげで、雪のように白い肌はまるで感情を失った人形のように精気が感じられなかった。暗く沈んだ彼女の瞳はまるでこの世を映していないかのように虚で瞬きを一つする瞬間にもそこから消えてしまいそうで、まだ中学生の子があんな目をしなければならないのがどうしもなく苦しくて、だから思わず、私は駆け寄って彼女を抱きしめてしまっていた。
「──……ぇ」
抱きしめた腕の中で小さく震える彼女。どんな言葉をかければ良いのかもわからない。
──それでも私は彼女がもし孤独を感じているのならそこから救い上げてあげたかったのだ。
悲しみの所在 菖蒲 @ayame11
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