第4話
「お前ら先生抜きで楽しそうな事してんな。今度先生も入れてくれや」
「やですよ、先生」
すりすりと僕にすり寄ってくる平坂先生。それを阻止しようと必死に平坂先生と僕の間に入り込もうとする誠。
その二人の取っ組み合いは傍から見ればとても頼もしいものであった。
「僕、朝ごはんまだなんで先教室行ってますね~」
お二人とも仲良くねー。なんていいながら教室に向かう。
教室に入れば、早く来ただけあって誰も登校していなかった。僕は自分の席に腰を下ろすと、机の上に朝食となるパンを置いた。
やべ、飲み物買ってくるの忘れた。。
飲み物を買いに行こうと財布を持ち、立ち上がったとき、ちょうど先生との取っ組み合いを終えた誠が教室に入ってきた。
「おい、辰也!なんで先に行っちまうんだよ!」
「先生と楽しそうだったから」
「どこが!?」
誠とほんの少し会話を交わし、教室を出ようとすると誠に肩をつかまれる。
「飲み物買いに行くのか??」
「あぁ」
「俺が買ってきてやるよ。先に食べときな」
なんていつにも増してイケメン染みたことをしてくれる。
ありがとうと廊下を出て行った誠の背中に向かって呟く。
僕は再度、自分の席に座った。
もくもくと食事をし始める。二口ぐらいパンに口をつけたとき、誰かが教室に入室してきた。
「お、はよ~。さっきぶりだな」
「先ほどぶりです。」
平坂先生だ。平坂先生はいたずらっぽく笑うと僕の目の前の席に座った。
「なんですか?先生」
「いんや、今どきの高校生の青春話を聞こうと思ってな」
なんて馬鹿にしたように笑う平坂先生。僕にそんなこと聞いたって何も面白い話なんてできないのに。
「伊賀原は好きなやつはいるのか?」
「いないですよ。意識したこともないです」
会話の合間合間にパンを頬張る。
恋愛なんて僕には縁のないことだ。
「へぇ...伊賀原、クラスではだいぶモテてるようだけど...認知してる?」
「へぇ。僕モテてたんですね」
興味なさそうに返事を返す。
それからは数秒先生は押し黙った。しばらくの沈黙が続いて、先生は口を開く。
「伊賀原はさ、恋愛に性別とか気にするタイプ??」
沈黙の末に出た言葉がそれだった。
恋愛に性別??
僕はまだ人を好きになった事なんてないだぞ!?なんてこと聞いて来やがんだよ。
先生をちらりと見てみると、先生は慌てた様子で僕から顔を逸らした。
なんだよ...
「わかんねぇ」
それが今の僕を十分に表した言葉だった。
ガラララといきなり大きな音が響いた。
「うげッ!平坂!」
「こら、先生だろ。先生」
誠が自販機から戻ってきたようで僕の目の前に座る平坂先生を嫌そうに見つめる。
平坂先生はかわいくねーやつなんて小声で呟いて、席を立った。
「はいはい、日比谷の伊賀原ですもんねー。邪魔者先生はここから出ていきまーす」
なんて僕たちを小馬鹿にしたように言い放ってから教室を出て行った。
「大人げねーの」
誠は僕に水を渡すと平坂先生の背中に向かって言う。
確かにさっきの発言は教師らしくない。。
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