第2話
「瑠梨ちゃんと伊賀原くんの反応を見たところ、おそらく瑠梨ちゃんのスカートの中が見えちゃったのかしら」
まるで僕たちを見透かしたように話をする松永。その様子に僕の心臓はドキドキと音を立てる。
どうかしたのだろうか、無意味に高鳴るこの鼓動に意味はあるのだろうか。
「天野…だったよね。さっきはごめんね」
ぶつかったときもきちんと謝っているのだが、相手がその謝罪に満足していないようなのでもう一度謝る。天野は不満そうな表情を僕に見せると少しして、にやりと微笑む。
この笑顔はクラスでもよく囁かれている笑顔だ。
天野のこの笑顔を見た者は恐ろしい出来事に見舞われると…。
「な、なに…」
じりじりと僕を舐めまわすように見つめる天野。僕は何か天野に恐ろしい出来事に巻き込まれるのではないか。
嫌な予感がした。
そのとき、
「辰也、なーにしてんだよ!」
タイミングがいいのか悪いのか僕の背中に飛びついてきたのは誠。僕としてはありがたいタイミングだ。
誠の姿を捉えた天野は目を細め、誠を睨みつける。その後、ムスッとした表情で、
「伊賀原は今、あたしと話してんの!邪魔しないでくれる??」
天野は僕の腕を引っ張り自分の元へ寄せようとする。意外な反応に僕は戸惑う。その様子を見た誠は負けじと僕の腕を引っ張り天野から引き離そうとする。
二人とも容赦ない力で僕を引っ張る。
「こらこら、瑠梨ちゃんに日比谷くん。伊賀原くんが困っているわ」
松永は胸の前で手を合わせて、僕を二人から救出してくれた。
「ありがとう、松永」
松永にお礼を述べると松永は華やかな笑顔で答えてくれた。
その様子に何を腹を立てたのか、天野と誠は眉間にシワを寄せ、目を細めた。
「誠、なんだよ…」
「なーんも…」
明らかに怒った風な誠。僕には彼の心情が掴めないがあまり気にすることではなさそうなので気にしないでおこうと思う。
二人から解放され、授業開始のチャイムが鳴る二分前なので僕は席に着くことにした。
機嫌よさそうにおしとやかに席に着く松永に反して、天野と誠は機嫌悪く荒々しく席に着いた。
「ねぇ、文化祭あなたなら何がしたい?」
坂口が唐突に話しかけてきた。
僕なら…
「カフェとかお化け屋敷とか楽しそうだよね!」
「そうね…」
ほのかに笑みを含めた表情を見せた坂口。それ以外の返答をくれなかった。
「坂口は当日誰かと回る予定ある?」
特に意識をして聞いたわけではなかった。
坂口は顔を僕に向けると目を少し細めて、
「あるわ」
と静かに言った。
一人じゃないのか…
もし、彼女が一人なら誘ってあげようと思っていたのだが。。
「あなたと回るのよ」
先ほどの返答に付け足すように答えた。
坂口は奇妙な笑顔を僕に向けた。僕はこれ以上何も言わなかった。
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