第2話
チャイムと同時に僕たちは教室に走り込んだ。
「おいこら、廊下は走るな」
「すみませーん」
ギリギリだが間に合った。バッグを机の横に引っ掛けると隣の坂本と目が合う。
坂本は僕ににこりとほほ笑む。
「おはよう」
僕が声をかけると落ち着いた表情で
「おはよう」
と返してくれた。坂本は先生が黒板の前に立つのを見ると顔をそちらに向けた。
僕も机に筆記用具のみを取り出した。
「今日のHRで来月の文化祭に向けての催し物を決定する。司会進行は委員長に任せた。」
それだけ言うと先生は出席を取り始める。
僕たちのクラスの委員長って誰だったっけ?
「
「はい」
僕の席の二つ前のツインテールの女の子が返事をした。
ツインテールといっても両側に結んでいる髪の束は耳よりも低い位置で結ばれている。雰囲気はとても清楚だ。
出欠を取り終えると教室から先生が出ていく。しかし、教室から出ようと先生が扉に手をかけたとき、こちらを振り返った。
「伊賀原、放課後職員室な」
そう先生が発すると皆が僕を注目する。心当たりのない呼び出しだ。
「伊賀原くん、何かしたの?」
隣の坂本が心配そうにこちらを覗く。全くもって心当たりがない。
「心当たりがないな」
僕はトイレに用を足しに行こうと立ち上がり、皆の注目を浴びながら教室を出た。
用を足し終えると手を洗い、教室へ戻ろうと廊下を歩いていた。
窓から太陽の光が差し込む。眩しい光に目を細めながら歩いていると女子生徒とぶつかってしまった。
相手は尻もちをついた。
「ごめん、大丈夫??」
はっと気づいたころには手を差し伸べている。
しかし、僕はここで見てはいけないものを見てしまう。
「あ…」
水色…
相手もハッとしてスカートの裾で隠した。
「あんた!どこに目をつけて歩いてんのよ!てか見たでしょ!?」
「み、見てない!!」
「嘘つけ!顔に全部書いてあるわよ!」
はっとして頬に手を当ててみると顔が熱い。
「気をつけなさいよ!」
相手はそう僕に吐き捨てて去っていく。
これは一瞬の出来事で僕が覚えていたのは相手のパンツが水色だったことのみ。
未だにどぎまぎした気持ちで教室に戻る。
「あんた、同じクラスだったのね」
顔を上げると水色のパンツの人いや、さっきぶつかった人。
低めのツインテールで猫目。
「委員長…」
「あんた、あたしのこと知ってんじゃないの!」
キーッとでもいうように威嚇してくる相手。彼女は周囲に二人ほどの女の子を取り巻いていた。
「瑠梨ちゃん、どうしたの?」
ショートヘアのおっとりした女の子、この子は僕、覚えている。
「伊賀原くん…だよね。何かあったの?」
「廊下で彼女とぶつかったんだよ」
松永はふふと上品に笑う。
その笑顔が一瞬輝いて見えたのは言うまでもない。
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