第二十七話 オタクと人形ちゃんはゲームセンターで遊ぶ
ガチャガチャと騒がしいゲームセンター前。
開店直後のゲームセンターには人影も少なく、僕はゲームセンター前にあるソファーに座って、集合時間より三十分早くついてしまった僕は、そういえばここで初めてアリスさんと喋ったんだよなぁ…と、初めて喋った時の事を思い返していた。
あの時は苦手に思っていたのに、今ではすっかり虜になっている自分がいて、少し苦笑いを浮かべる。
そういえば、あの時なんで一人でアリスさんはゲームセンターに来ていたんだろうと、ふと、疑問に思ってしまう。
確かに、アリスさんは調べものもろくにしないでそう言った行動をとることがある。でも、それは僕がいるときだけで、それ以外。一人の時は大体調べてから行動するのだ。
だから、僕は疑問に思った、なんで何も調べもせずにこんなところに来ていたのか。
思い浮かぶ理由としては、たまたま通りかかって、ここが気になり来たというパターン。好奇心が若干高いアリスさんなら一番あり得る話だ。次にここに来ないといけない用事があったか。例えば、仲いい子との罰ゲームとか、もしくは、神薙さんに「学生らしいことをしなさい」と放り込まれたか。そんな感じの理由だろうかと、ボケっと眺めながら考えていると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「…拓斗くん早いね。待った?」
と、声の方に振り向くとTシャツにジーパンというラフな格好をしたアリスさんが居た。
僕と同じで歩いて来たらしく、髪の毛が汗で少し艶やかとしていた。
「いや、そこまで待ってないよ」
そう言って、僕は椅子から立ち上がる。
「さ、何して遊ぼうか」
「前遊んだ順番に回ろ?私はあんまり来たことないし、気になるのあったらその都度見る…で、どうかな?」
「それがいいかもね」
そういって、僕らは並んでゲームセンターに入っていく。
前とは違う関係。それも、大きく変わった関係でもう一度二人でゲームセンターに来るとは思っておらず、すこし、この人生は面白いなと思った。
***
「あ…景品が変わっている」
「あー、もう二か月近くってるし、そんなもんだと思うよ?」
最初、僕がクマのぬいぐるみを取った場所に行くと景品が変わっていて、卵の中身がぐだーっとしているぬいぐるみが入っていた。俗にいうぐ〇たま。
「…お揃いが欲しかったのに」
と、むすっとなるアリスさん。
そんなことを思っていたのかと若干うれしくなって頬が緩むが、そんな顔は見せられないと、すぐに気持ちを切り替える。
「一回個ずつのところで二回取るのはマナー悪いし、複数個取れるやつか、同じのが二個並んでいるやつ探す?」
「…うん、そうしよ」
そう提案すると、アリスさんは、少し考えるそぶりをして了承した。
そして、僕らはUFOキャッチャーコーナーを歩きまわった。
最終的に二人取ると決まった景品は、マグカップだった。
「これがいい」
「あぁ、意外と日常で使うもんね」
「(こくこく)」
ケースの中に四つのマグカップ入りの箱が景品として入っていて、それぞれ、ピンク色のうさぎ、茶色のクマ、緑のカエル、黒い犬が箱に描かれていた。どうやら、その絵がマグカップに描いてあるらしい。
ちなみに、アリスさんはピンク色のうさぎ、僕は茶色のクマのマグカップを狙っている。
「どっちからやる?」
「私からやってもいい…?」
「うん、いいよ」
と、取る順番が決まった為、僕は後ろでアリスさんが取る姿を眺めることにする。
今回のやつはアームがそこそこ強く、ある程度取り方が分かっていたら、初心者でも一発で取れるくらいの優しい難易度なので、僕は安心して後ろで眺めていることができる。
というか、前回いきなり箱フィギュアとかいう高難易度に一発目から凸るほうがおかしいと思うのだが、まぁ、そこは置いておく。
「よし…!」
と、気合を入れて、硬貨を入れてUFOキャッチャーをスタートさせる。
前回来たときのアドバイスをしっかりと生かして、アリスさんは巧にアームを移動させて、景品の真上にアームを持っていく。
アームはきれいに箱の開け口の部分に引っ掛かり上にあがっていき、アームはその景品を離すことなく落とし口に持っていく。そして、アームが開きガタンという音を立てて景品が落とし口から出てきた。まさかの一発である。
その成長に「おー」と感嘆の声を上げると、アリスさんはその景品を手に取り、僕の方に近寄ってきて「えへへ」とうれしそうに笑った。
その姿が可愛すぎて、頭に手を伸ばしポンポンとすると、アリスさんは僕に密着してきて、頭を体に押し付けスリスリとした。
「時々、ここにきて練習したの、上手になってた…?」
「あぁ、前回と見違えるほど上手になってたよ」
実際結構うまくなってたので褒めると、アリスさんは嬉しそうに目を細めた。
そのあと、僕も二回で無事景品を回収して、僕らはUFOキャッチャーコーナーを後にして、音ゲーコーナーに向かったのだった。
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