第二十六話 オタクと人形ちゃんは部屋でダラダラする

昼ご飯も食べ終わり、僕らはアリスさんの部屋に戻ってきた。

マリカーをもう一度やるか?という話になったが、食後はゆっくりしたいとなり、現在部屋でゆっくりしていた。

アリスさんは朝選んでた服を押し入れに押し込んだらしく、その服を畳んでいる。

少し時間ができた僕は本棚にどんな本があるのだろうと気になって、アリスさんの本棚を見ていた。

大半は僕が薦めた本や、同じ作者のもの、それから、似たようなジャンルや女の子らしい少女漫画などが入っていた。

上から順番に見ていくと、右下の一角に何か挟まっているのを見つけた。

それを見てみると、そこには「男女の友人関係の本」と書いてあり、そっから奥には沢山の少女漫画が置いてあった。


その一冊を手に取って、パラパラとページを捲ってみる。

確か、この作品は幼馴染の二人が恋心をどんどん自覚してく系の作品だったなと思い、そんなことを頭の片隅に置きながら中身を見る。

添い寝やら、朝家に行って起こす行為やら確かに幼馴染の友人だからできる行為だなと思うことが結構描かれていた。

だけれど、これは恋愛のはずなんだが…と思ったが、本棚には最初の二冊しかなかったため、あぁ、だから男女の友人関係の方に入っているのかと理解した。

そして、多分。この前僕の家に来た時の行動はこの本を読んで実行したのであろうというのも、なんとなく理解できた。

そんなことに対して苦笑いをしていると、後ろから声がかかった。


「ねぇ、何読んでるの?」


「あぁ、これ、見たことある作品だなって」


「ん…その中に書かれてることされるとうれしい?」


「あぁ、うれしいけどそれがどうかした…?」


「ううん、何でもない」


聞かれたので、素直に答えるとアリスさんは頬を赤くして下を向いた。

どうしたんだろうと思っていると、首を左右に振っていつもの無表情に戻して、僕の方を見た。


「それで、これからどうする?」


「なにしようか?」


ゲームはかたずけてしまい、ほんとにやることがなくなってしまった。

どうしようかと考えていると、アリスさんが「あっ」と言って、何か閃いたらしい。


「アニメを一緒に見ませんか?録画していて、まだ見れてないのがあるんです」


そう言って、テレビをつけて録画画面を映す。

そこには、様々なアニメが録画されていた。

ここ二日のアニメを見ることができていないのは、僕と同じらしく、newの文字が録画の横にはついていた。


「僕もちょうど同じところから見れていないからちょうどいいね」


「(こくこく)」


そう言って、僕らはテレビの前まで移動した。

僕が地面に座って胡坐をかくと、アリスさんは僕の足の上に乗ってきた。

…えぇ。

その行動に困惑していると、耳を真っ赤にしたアリスさんがぼそぼそとつぶやき始めた。


「さ、さっき、の、漫画のシーンにあったんです…、その、うれしいですか…?」


と聞いてきた。どうやら、自分でこの行動に対しての許可はさっき取っていたらしい。

照れるように聞かれ、僕は無理してやらなくてもいいのにと思いながら、「うれしいよ」と返すと、「えへへ…」と笑いながら僕の体に体重を預けてきた。


最近なんやかんや抱き着いたり、抱き着かれたりすることが多くなったが、それでも彼女の体にはいまだ慣れることができず、そのそのしぐさも相まってドキドキしてしまう。

そんなことを思っているうちに、アニメがスタートした。


たしか、この作品は某小説投稿サイトが原作でアニメ化した作品で去年映画化した作品だった。

内容は、死に戻りし続ける主人公が頑張って死なないルートを探す。そんな感じの話で、そこそこグロいのだが、そこまで気にしていないのか、アリスさんは集中してアニメを見ている。


そんな中僕は、彼女の体温やらいい匂いやらが理性を削ってきて、色々大変だった。

何回も抱き着いたり抱き着かれたりしているが、やはり早々なれるような物でもなく、しっかりと彼女のことを意識してしまう自分がいた。

そんなこんなで、全くアニメに集中することができないまま時間は過ぎて行った。


六つほどアニメを一話ずつ見て、気が付けば三時間ほどたっていた。

四つ見たあたりからアニメに集中できるようになり、僕は最後の二作品はしっかりと内容を把握することができた。

その前の四作品は家に帰ってから見直すことにして。


「ねぇ、拓斗くん。後ろからギュッっと抱きしめてもらってもいいですか?」


アニメの録画も一通り見終わったので、次はどうしようかと考えていると、アリスさんからご要望があった。

別に拒否するような内容でもないので、彼女を覆うようにして後ろから抱きしめる。

すると、「えへへ」とうれしそうな声を漏らした。

そうして僕らは三十分くらいその態勢でのんびりとしたのだった。


「腰が痛くなってきたから、いったん終わろうか」


「ん、そうだね」


お互いその態勢がきつくなり、少し体を伸ばそうかとなった。

アニメの視聴時間を含め三半時間も同じ姿勢でいた為、僕らは少し疲れたようにして立ち上がり体を伸ばす。


「んーっ、面白かったね」


「そうだね、最近のアニメって良作多いからほんとにいいよね」


そう言って、時計を見ると夕方の四時半を指していた。

そろそろ帰って夕飯を作らないとなと思い始めた頃。


「夕飯、食べてく…?」


と、アリスさんに聞かれた。

どうしようかと迷っていると、アリスさんがスマホの画面を僕に見せてきた。

そこには、神薙さんが僕の夕飯も作っているという内容のラインが写っていた為、僕は夕飯をアリスさんの家でご馳走になることが決まった。


あとは、トラブルや何かがあるわけでもなく、時間は過ぎていき僕は夕飯をご馳走になって帰路についたのだった。

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