第二十五話 オタクと人形ちゃんはレースゲームをする
「これが買ったゲーム」
「あぁ、マ〇カー買ったんだ」
「(こくこく)」
アリスさんが落ち着いたので、ゲームをやろうという話になり、アリスさんがベッドの下の入れ物入れからゲーム機とゲームソフトを取り出してきた。
ゲーム機は最新ゲーム機のswit〇hでゲームソフトはマ〇カー。どうやら、二人で遊べるソフトを検索した結果、これが一番上に出てきたので、これを購入したらしい。流石お金持ち、今日の日のためにこれを購入するとは…と、若干戦慄を覚える。
アリスさんの部屋は左側に大きめの本棚とそこにぎっちり詰まったラノベや漫画。その奥にデスクトップPC。突き当り一番奥にピンク色の大きなベッドがある。そして、少し大きめの壁に掛けるタイプのテレビ。あとは、クローゼットが一か所。そんな感じでいかにもという感じではないのだが、それでもお金持ちなんだなぁと分かってしまう内装をしていた。
ベッドの奥の窓のふちにゲームセンターで取ったクマのぬいぐるみが飾って合って、少し嬉しく感じた。
というか、部屋広過ぎへん?うちのリビングくらいあるんですが。
そんなことを思っているうちにゲームのセットが終わったらしく、コントローラーを僕に渡してきた。
「早くやろ…?」
「そうだね、やろうか」
そう言って、二人でテレビの前に座る。
とりあえず、ゲームで二人はプレイヤーで他はNPCのモードを選択する。
お互いカートのカスタムやキャラは何がいいかとかは全く知らないので、そのままのカートでレースをすることになった。
レースが始まると、画面が半分ずつになりお互いのキャラが中央に来る感じになって見やすくなる。
僕は赤い帽子をかぶったおっさんで、アリスさんは桃色の姫を使っている。
別ソフトだが、このシリーズを何度かプレイしたことある僕は、一回目は簡単に一位を取って、アリスさんはいろんなところに落ちまくって八位だった。
「…負けた」
「前作やってるからね僕は」
「むぅううう…」
流石に初心者には負けんよと苦笑いをすると、アリスさんは悔しそうに頬を膨らませた。
なんか、こんな感じのやり取り前にもしたことあるような気がする。
もう一回!と言って、アリスさんはゲームのプレイを始めた。
ゲームをしているときに肩に何か当たる感覚があったので横をチラッと見てみると、アリスさんが画面のカーブと同じ向きに左右に揺れていた。
さっきは少し離れていた為気が付かなかったが、今回はさっきより少し近くなったので肩に触れてしまったのだろう。
そんな、なんとも微笑ましい光景を見ていたら、僕は脱線しまくり、アリスさんは三位、僕は五位でゴールして負けてしまった。
「ふふん…」
「すごいじゃん、でも、どや顔は子供っぽい」
「むぅ…拓斗くんも寝てるとき子供っぽいもん」
「マ〇カーやってるときにカーブで体を左右に動かす方が子供っぽいと思うな」
「え!?うそ!?動いてた…?」
「うん」
どうやら、左右に揺れたることは気が付いていなかったらしく、アリスさんは驚愕の表情をして、その後に少し羞恥で頬をほんのり赤く染めた。
そのあと、三回ほどレースをした頃、神薙さんから「お昼ご飯を用意しました」と言われ、マ〇カーは終了して一階のリビングに下りて行った。ちなみに結果は僕が三回とも一位でアリスさんはアイテムがよかった最初の二回は二位と三位で、最後はアイテム運にもNPCの行動にも恵まれず時間制限でゴールすらできず最下位になっていた。流石にかわいそうになるくらいのボロボロっぷりで、若干涙目になっていた。
リビングに行くと、テーブルに三人分のご飯が用意していしてあった。
メニューは白米、赤みその味噌汁、肉じゃが、サラダといった感じでバランスの取れたメニューだった。
席について、いただきますと言って、ご飯を食べ始める。
食べ始めたんだが─。
なぜかアリスさんは自分のご飯に手を付けず、僕のことを見てくる。
特に肉じゃがを食べてるときは凝視してきてるような気がする。
どうしたんだろうと疑問に思っていると、神薙さんがため息をついた。
「アリスお嬢様。肉じゃがを自分で作ったことを教えない中という疑問と、あれだけ昨日言っていた味の感想は聞かないのですか?」
そう言って、またご飯を静かに食べ始めた。
その言葉に「うっ…」と言葉を詰まらせるアリスさん。
そっか、この肉じゃがアリスさんが作ったのか。普通においしくて神薙さんが全部作ったものだと思ってた。
何かを決心したのか、顔を真っ赤にして、視線をちらちらと僕に送りながら、
「に、肉じゃが…おいしいですか…?」
と聞いてきた。
あまりの可愛さにフリーズする僕。
フリーズして、なんも答えられなくなった僕を涙目になりながら見てくるアリスさん。
やばい、何とかしておいしいっていうことを伝えないとと思い、頑張って口を動かす。
「そ、その、凄く、おいしいよ」
そういうと、涙目が一瞬にして満面の笑みに変わった。
「初めて作ったの!ならよかった…」
そう言って、安心したように、ホッとため息をついたアリスさんはやっと自分のご飯に手を付け始めた。
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