第二十四話 オタクは人形ちゃんの家に行く
「ここ…か?」
アリスさんにLINEで教えてもらった住所を某マップに入れて案内してもらってきた。
アリスさんの家は僕の家から歩いて三十分程の場所にある、少し大きな家だった。
どうやら、ここで家政婦さんと二人暮らしをしているらしい。
ここでほんとにあっているのかと何回かスマホで確認してから、チャイムを押す。
すると、ピンポーンという音が鳴り、少し後に「はーい」という、聞きなれない声が聞こえてきた。
少しすると、玄関がガチャリと開き、そこから、先程の声の主であろう人物が出てきた。
容姿は二十代後半くらいで、髪の毛を頭の後ろで団子にしているおっとりとした感じの女性だった。
「あなたが西宮拓斗くんですね?」
「は、はい」
と、名前を見づ知らずの人に聞かれたので少し緊張しながら答える。
その様子を見た女性はふふふと微笑んだ。
「アリスお嬢様からお聞きしております。私はアリスお嬢様の家政婦をしている神薙みのりと申します、本日は楽しんでいってくださいね」
「は、はい!ありがとうございます」
そういって、ペコリと頭を軽く下げると、ニコニコした笑顔になって、「さ、外は暑いですし中に入りましょう。アリスお嬢様が部屋でお待ちしております」そう言って家の中に入っていった。僕も玄関で「おじゃまします」と言って、アリスさんの家に入っていった。
***
「ここがアリスお嬢様の部屋です」
「はぁ…」
二階の部屋の一室の扉の前。そこがアリスさんの部屋らしい。
部屋の前には可愛らしく「ひいらぎありす」と書かれたピンク色の板にドライフラワーをくっつけたネームプレートが掛かっていた。
神薙さんがコンコンと部屋をノックすると、「はい」という、中から聞きなれた声が聞こえた来た。
神薙さんは「飲み物をお持ちいたしますので、どうぞ中でおくつろぎを」といって、僕の前から去って、階段を下りて行った。
とりあえず、部屋の前に居ても仕方ないと思い、「アリスさん入るよー」と言って、扉を開ける。
するとそこには、ピンク色の可愛らしい下着を身に着け、服を選んでいるアリスさんが居た。
「え…」
「あ…」
固まる僕ら。
アリスさんはクッソ白い肌で、陶磁器のような─という表現が似合うほど美しいシミ一つない体をしていて。美しいと思ってしまった。
そして、そんな美しい肌を赤く染めていく。
僕の顔もどんどん熱を帯びていく。
「い、い、いやあああああああああ!!!!」
「す、すみませんでしたぁああぁぁぁぁぁああぁ!!」
急いで扉を閉める。
僕は、扉の前で胸に手を当てて落ち着くように深呼吸をする。
そして、数分後、羞恥を抑えるように震えた声で「は、入ってきて…」と、言われたので、ゆっくりとドアを開けて部屋の中に入る。
部屋の中には顔を真っ赤に染めたアリスさんが小さな机の前に座っていた。
当然だが先程の下着姿などではなく、この前着てきた白いワンピースを着ていた。
「そこに座って」
「あ、はい」
そう言われ、机を挟んでアリスさんの前に座る。
お互い先程の出来事を意識してしまって、話を切り出すことなく数分が過ぎていく。
すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえて、扉がガチャと開いた。そして、神薙さんが入ってきた。
「飲み物をお持ちしました」
そういって、ニコニコとした笑顔で僕らの前に紅茶を置いていく。
その姿から、この人絶対知っててやったなというのが分かってしまう。
アリスさんはそんな神薙さんをキッとした目で睨んでいた。
「…みのりさん。服決まるまで拓斗くんを部屋に入れないでねって言いましたよね?」
「そうですね~」
と、雇い主からの叱咤があったにもかかわらず、のんびりとした口調で神薙さん。
だけれど、その目は笑っておらず、少し寒気を感じた。
「ですが、下着姿で何時間も服を選んでいるアリスお嬢様の方にも問題があると思います。だから、昨日のうちに決めておいた方がいいとあれ程言ったにもかかわらず…」
「うっ…申し訳ないです…」
「大体アリスお嬢様は─」
そう言って、日常生活への愚痴が始まった。生活スタイルがどうのだの、なんだのと日常生活がどんどん僕にバレていく。
例えば「お風呂上りに下着姿で出歩かないでください」とか、「朝弱いのは分かりますが自分で起きてください」とか、「土日に二度寝するのはいいですが平日にするのはやめてください」とか、「最近ご友人ができたのは分かりますが、ご飯中にラインのやり取り画面を眺めてニマニマするのはやめてください」とか、どんどん説教に近い愚痴が出てくる。うん、苦労してるんだなっていうのは分かった。
そんななか、アリスさんはその発言に対して何も言い返せないのか、黙っていたが、僕と目が合った瞬間、そういえば拓斗くんに日常バレてると思ったのかどうかは知らないが、目を回して顔を真っ赤にしていった。
…これ絶対僕が聞いちゃいけない内容だろというのが出始めた頃、神薙さんが「お客様もいますし今日はここまでにしましょう」そう言って立ち上がった。
そのあと、僕の方を見て「ゆっくりしていってくださいね」と言ってニコっと笑って、部屋を出て行った。
いろいろ言われたアリスさんは日常の色々がバレたこととか、説教されたこととかで頭がパンクしたらしく、顔を真っ赤にして目を回しながら机に突っ伏したのだった。
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